ライオット・オブ・シンティレイション #4

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なッ?」ザナドゥは一瞬のうちに展開した事態に目くるめき、その者を下から見上げた。……ボロボロの上衣を着たニンジャは、静かな目でザナドゥを見た。そして頷き、手を差し伸べた。「ザナドゥ=サン。一時、離脱だ。今ここはまずい」「エッ……アンタは一体」「君を守る者だ。アサシンが来るぞ」20

2020-12-04 22:23:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アサシン!?」「わかるだろう。君がこうしてここへ来たのは何故だね。自己の証明の為だろう。確かにサペウチ・モリドーコムのアサシンは、稚拙な落書きが君の手によるものと結論づけていた。許せん事にな」「!」ザナドゥはゾッとした。全てが繋がった。自分を追っていた影……あれはカイシャの!21

2020-12-04 22:27:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「だ……だけどアンタは」「私の名はアマルガムだ。ザナドゥ=サン」ニンジャは頷き、略式のアイサツを行った。「ストリートの守護者と呼ぶ者もいる。だが、さしあたっては……君のグラフィティのファンだよ」「マジか」ザナドゥは呻いた。アマルガムの目が険しくなった。「急ぐぞ。奴が来る」 22

2020-12-04 22:29:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「マジか」ザナドゥは繰り返した。雨の中、彼は高速思考した。そして……首を振った。「待ってくれ。とにかく俺は、これをやりきらなきゃならねえよ。……誰の為でもなく……当然この誰だか知らねえカイシャの奴の為でもねえ……俺の為に、ボムを終わらせねえと」「……すぐに、敵が来る!」 23

2020-12-04 22:34:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「来たら来たで、仕方ねえ。これ以上ここの警備が厳重になったら、二度と出来なくなる。とにかく、俺は、やらなきゃいけねえよ」ザナドゥは腹を据えていた。「アンタ、俺のファンなら、迎撃を手伝ってくれてもいいぜ」「……」アマルガムは目を閉じ、首を振った。「仕方のない奴だ」 24

2020-12-04 22:36:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アマルガムは身を下へ乗り出して手をのばし、ザナドゥの肩を掴んだ。ザナドゥは苦笑した。「なあ、だから少し待って……」「イヤーッ!」「グワーッ!?」アマルガムの腕のサイバネティクスから、高圧電流がザナドゥに流れ込んだ。ザナドゥの視界が、ニューロンが、真っ白になった。彼は転落した。 25

2020-12-04 22:38:31
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アマルガムはザナドゥを追って看板から飛び降りた。落下しながらザナドゥを抱きかかえた。着地の衝撃で、ザナドゥは気を失った。 26

2020-12-04 22:39:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アート……シン……アゴニィ……プ……ププ……プププレジャー……」嗚咽まじりの感極まったチャントの末尾は、叫びにかわった。「プレジャアアア!」「アバーッ!」ザナドゥは跳ね起きた!跳ね起きた感覚が彼の身体から飛び出したが、引き戻された。何故なら彼は鉄の椅子に拘束されていたのだ! 28

2020-12-04 22:44:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ザナドゥのニンジャアドレナリンが全身を駆け巡る。何だ!?何が起こっている!?「オイッ!アマルガム=サンか!?俺は……!」「大丈夫だ!」逆さ向きのアマルガムの顔が視界いっぱいに現れた。アマルガムは椅子の後ろに立ち、思い切り身を屈めてきたのである。「今から、君はアートになる!」 29

2020-12-04 22:48:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「待ッ、な……」ザナドゥはガタガタと椅子を揺らした。腕っぷしに自身のあるザナドゥであったが、鋼鉄の椅子はしっかり固定されており、破壊して逃れる事は難しそうだ。いや、それどころではない。目の前の床には意味不明の魔法陣がペイントされており、向かい合う二つの椅子に……「お前ら!?」 30

2020-12-04 22:51:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナムサン。向かい合うトライアングル上に配置された三つの椅子。ひとつはザナドゥ。そしてもう二つには、トイコとヨウナシが拘束され、座らされていた。二人は意識がなく、俯いていたが、息はあるようだった。「大丈夫だと言っただろう!」アマルガムが横向きに顔を出した。「傷一つつけていない」 31

2020-12-04 22:52:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「テメェ何を……これは……!」「アートの保険だ!」アマルガムは叫んだ。「傷つけていないのは、つまり、それをやったら君が非協力的になるからだ。それでは意味がない!」彼はサイバネ腕から鋭利な爪を飛び出させ、トイコの首に押し当てた。「血の一滴も流していない。君に同意してもらう為にだ」32

2020-12-04 22:56:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヤメロ!」ザナドゥはもがいた。「ソイツらは俺と何の関係もないガキどもだ!お前の狙いがなんだか知らねえが……」「違う!」アマルガムは否定した。「ネオサイタマにおける君の大事な構成要素じゃないか!全てを調べているぞ、君の出自、アートの要を!」彼は自身を抱きしめた。「重要なんだ」 33

2020-12-04 22:58:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「さっきからワケのわからねえ事を」「わかる!すぐにわかる」アマルガムは指を突きつけ、ザナドゥを黙らせた。その指を動かし、指し示した先、部屋の隅には、黒い液体シリンダーが幾つも並べられていた。液体はエメツのように黒く光を通さないが、中に入っているものを知りたいとは思わなかった。 34

2020-12-04 23:03:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「腕だよ!」アマルガムが即座に明かした。「これで私が何故サイバネアームなのか、わかってもらえただろう」「……」アマルガムは少し歩き、振り返った。「わかるだろ!取り外せるんだよ!」おもむろに彼は左腕のジョイントを操作し、容易く付け根から外してしまった。右手で振り回し、「外せる!」35

2020-12-04 23:05:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

棍棒めいて振り回す腕が、ヨウナシの頭に当たりそうになる!「ヤメロ!」ザナドゥは叫んだ。「わかったから!」「わかッ……わかってくれたか。よかった。やはり、アーティストなんだな、ザナドゥ=サン」「……」「つまり……腕を切って、つけ替えるという事だ」結局、彼は説明を付け加えた。 36

2020-12-04 23:09:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「私は何度も試してきた。知っているか?平安時代にはアカラ・ニンジャというニンジャのクランがあってな、肉体や義肢を自らのものに繋ぎ寄せる力を有していたらしい」言葉のないザナドゥに、アマルガムは顔を近づけ、囁いた。(君も、やってるんだろ?多分?その才能)「そんなワケ、あるか……!」37

2020-12-04 23:13:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「君も、じきに口を割るだろう。隠す必要ないのに。ま、それはいいんだ」アマルガムは不服げに言った。「とにかく、私はアカラの者達の力を継いでいると思うんだよ。それなのに、馴染まないんだ。腕を神経接合して、アートの力を身に着けても、すぐにヘタッてしまう。非ニンジャのクズの腕だからだ」38

2020-12-04 23:17:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ここまでのサイコパスはマナウスの荒んだ暮らしの中でも遭遇したことがなかった。ザナドゥは抵抗をやめたそぶりで、この監禁広間の様子を確かめようとした。魔法陣。四つに区切られ、A、S、A、Pと書かれている。椅子にはトイコ。ヨウナシ。生きていてよかった。目も覚まさないでほしい。今のうちは。39

2020-12-04 23:20:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「どこまで話したかな?君の困惑も少しわかる。だが、私ほど君のアートを理解している理解者はいない。わかってほしい。君はニンジャだ。頑丈だ。だから君の腕は……君のアートは、私の処置に必ず耐えられるよ。この女子高生二人は保険だ。君が手術に同意してくれれば傷つけない。同意が大事だよ」 40

2020-12-04 23:25:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「つまり……」ザナドゥは拘束具の抵抗を確かめながら会話を進める。奥に夜景の明かりが見える。ベランダ。ここは廃ビルか。「俺の腕を取って、アンタに付け替え、それでアンタはアートが出来るようになるって?」「コラボレーションとでも言っておこうか。ワクワクする。ニンジャの腕は初めてだ」 41

2020-12-04 23:30:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ちなみに処置はどうやるんだ」「協力的でありがたい」アマルガムは涙を拭い、サイバネ左腕をつけ直すと、壁に立てかけられた大鉈を掴んで、持ってきた。「これで、やる」「……!」アマルガムはザナドゥの腕の付け根に引っかき傷を作った。「命はなくならない。多分な……!君はニンジャだ!」 42

2020-12-04 23:33:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ザナドゥは奥歯を噛み締め、己の内なるニンジャソウルに呼びかけた。こんなところでこんなクソ野郎に奪われてたまるか。事態を打開するには、一番の好機を、絶対の好機を探し出せ。研ぎ澄ませた一撃を、どうにか……繰り出すしかない……!その時、ブザーが鳴った。ブガー。アマルガムは手を止めた。43

2020-12-04 23:37:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」KRAAASH!アマルガムは足元の床に大鉈をいきなり叩きつけた。轟音と振動でトイコが覚醒し、悲鳴をあげた!「アイエエエエエエ!」「うるさいぞ!」KRAAASH!再び大鉈を床に叩きつける!「非ニンジャのクズめが!うる……」アマルガムは言葉を切り、スタスタとインタフォンに向かう。 44

2020-12-04 23:40:30