- cornelius0321
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1962年の本だが、中に購入当初の阪急百貨店のレシートがはさんであり、巻末の映画関係の本の広告に書き込みがしてあるところをみると、前の所有者は業界関係者だったのだろうか。この本をかなり大切にしていたようだ。
2011-03-03 21:02:29レシートには「どこよりも良い品をどこよりも安く」という文字が印刷している。時代を感じさせる書体。レジではなく「レジスタァ」から出てきたレシート。
2011-03-03 21:02:18この本には、三島由紀夫が序文を寄せている。三島は「日本映画の一観客として、どの監督の作品をいちばん多く見てゐるか、と訊かれたら、私は躊躇なく市川崑氏の作品と答へる。氏の仕事がいつも気になって、新作が出る毎にみてしまふのである」と書いている。
2011-03-03 21:02:07三島は「氏が理解されにくく、今も十分に理解されていないのには理由があるので、氏ほど過去の日本映画に深く浸潤してゐた感傷主義を免かれてゐる才能はなく、その感覚は生まれながらにしてセツクで、甘口なところがない」と述べる。
2011-03-03 21:01:57「セツク」はフランス語のsec、つまり「乾いた」という意味だ。日本の「べたついた」「ウェット」な所がないということだ。私が市川作品に惹かれるのは、市川さんの映画に「からっとした心地よさ」を感じているからだ。
2011-03-03 21:01:46この乾いた感覚は、「孤独」と深い関わりを持っている。市川さんは「おとうと」を映画化するに際して、次のように書いている。
2011-03-03 21:01:38「自分が孤独な存在であることを悟ることは大切なことです。孤独であることを自覚せずに一生を終える人々を、ぼくは哀れに思います・・・」
2011-03-03 21:01:24「僕たちは誰でも、みんな家庭をつくり、その中で生活しています。外から見ると、それはひとしなみに、平凡な幸福な家庭に見えます。でも、一歩その中に踏み込んでみますと、複雑、矛盾に満ちた人間関係が露呈されます」
2011-03-03 21:01:14「孤独な存在でありながら、肉親という強靭な絆に結びつけられ、一つ家に生活を共にしている小さなグループ。肉親同士だから問題なく愛し合える筈だし、愛し合うのが当然だ、とぼくは決して考えません」
2011-03-03 21:01:02「お互孤独であることを積極的に認め合うことが、親や子、夫や妻、姉や弟が、一緒に生きて愛することを、きびしい、そして、かけがえのない、そして、尊いものにするのだと思います」
2011-03-03 21:00:53市川さんは、こんな言葉をさらりと言ってのける、稀有な映像作家だ。「人間は一人じゃないよ」という巷の言葉に辟易している私にとっては、宝物のような言葉だ。
2011-03-03 21:00:40