レジデント・イヴィル #1

サイコロステーキ先輩の先輩 2:https://togetter.com/li/1657275
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劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2021-01-23 21:02:00
劉度 @arther456

【レジデント・イヴィル】

2021-01-23 21:03:00
劉度 @arther456

《好機です。仕留めます》体勢を崩した戦艦棲姫を見て、不知火は機関出力を上げた。艤装が唸りを上げ、彼女の体を前進させる。接近する不知火に気付いた戦艦棲姫は副砲を乱射するが、不知火は砲弾の合間を縫って肉薄する。1

2021-01-23 21:04:03
劉度 @arther456

《沈め》不知火が放った魚雷は、戦艦棲姫の足元で大爆発を起こした。装甲もろとも、戦艦棲姫の体がバラバラに吹き飛ぶ。《敵艦の撃沈を確認》モニターで戦場を見ていた提督は頷いた。「こんな所に姫級の深海棲艦がいるとはねえ……」《同感です》2

2021-01-23 21:06:01
劉度 @arther456

彼女たちがいるのは、ロシア北方のバレンツ海に面した、小さな港町の沖合である。どういう訳か、深海棲艦がこの何もない町を占拠していた。ロシア政府の頼みで、提督たちは鎮守府出向中のガングートと共に占領地の解放作戦を行うことになった。3

2021-01-23 21:09:00
劉度 @arther456

「重要拠点じゃないんだから、放っておけばいいのに」「一個艦隊が近所に住んでて安心できるか?」ガングートの言葉に、提督は反論できなかった。「……で、この後はそっちの仕事だと思うんだけど」「ああ、そうだな。エルヴィナ、準備はいいか?」ガングートは後ろの少女に声をかけた。4

2021-01-23 21:12:01
劉度 @arther456

「もちろんさ、ガングート。みんな、出撃だよ」少女は指令室を出る。防護服を着た兵士たちが後に続く。彼女たちはロシアの特別調査隊だ。今回の作戦においてロシア本国から派遣され、『蔵王』に同乗していた。「うーん」「どうした?」5

2021-01-23 21:15:01
劉度 @arther456

「女の子が隊長だなんてねえ。進んでるというか、切羽詰まってるというか」「艦娘の提督が言えるセリフか?」「うぐ……」「……まあ、言いたいことはわかるがな。何故こんな作戦を立てたのか。保安庁の考えはわからん」「待って、ガングートも詳しく知らないの?」6

2021-01-23 21:18:00
劉度 @arther456

提督は、この作戦はガングートたちが立てたものだと思っていた。しかしガングートは首を横に振った。「説明は受けている。ただ、あいつらと私は所属が違うんだ。私はGRU、軍属で、あいつらはFSB、大統領直属だ」「……部署が違うの?詳しくは知らないけど、ヤバくない?」7

2021-01-23 21:21:01
劉度 @arther456

「ああ。一応、上にも……いや、個人的に調べてみたんだがな。1つ、気になる点があった」「気になる点?」「町外れに研究所がある。以前は相当な数の非人道的実験が行われていたそうだ」「ははあ。つまりロシアが隠れてやってた悪事の証拠を隠滅しようと?」だが、ガングートは首を横に振った。8

2021-01-23 21:24:00
劉度 @arther456

「国じゃない。民間の研究所だ」「民間?」「アンブレラ社。聞いたことはあるだろう?」「うわぁ……」アンブレラ社。かつて存在した製薬会社である。世界の医薬品・医療機器のシェアの大半を占める大企業だったが、その正体は条約違反の化学兵器・生物兵器を取り扱う軍事企業だった。9

2021-01-23 21:27:00
劉度 @arther456

アンブレラの正体が世界に露見したのは13年前。研究していたゾンビウイルスや生物兵器が流出する事故、ラクーンシティの惨劇が起きた。アンブレラは当初、無関係を装っていたものの、杜撰な管理体制により、世界各地のアンブレラ支社で同様の事故が多発すると言い逃れができなくなった。10

2021-01-23 21:30:02
劉度 @arther456

事態を重く見た当時の合衆国大統領、ジョージ・シアーズはアンブレラに操業停止を命令。これに対しアンブレラは、ホワイトハウスに最新の生物兵器を3体投入した。この暴挙が致命傷となり株価がフリーフォール、倒産した。なお、生物兵器は特に戦果を挙げられないままホワイトハウスに鎮圧された。11

2021-01-23 21:33:01
劉度 @arther456

「ゾンビ会社アンブレラの研究所があの港町にあって、ロシアの特殊部隊がそこを探そうとしてるかもしれないってこと?」「そうだな」「絶対ロクな事にならないと思うんだけど」「……そうだな」提督は天を仰いだ。「ワクチン……あったかなあ。医務室に連絡しとこう」12

2021-01-23 21:36:01
劉度 @arther456

「我々ロシア軍は予定通り、上陸して橋頭堡を築く。提督は艦に残ってくれ。最悪、艦砲射撃を頼むことになるかもしれない」「わかった。ウチの陸戦部隊も同行させるよ。艦娘は深海棲艦を警戒しなくちゃならないから出せないけど……」こうして、不安を抱えたまま、上陸作戦が始まった。13

2021-01-23 21:39:01
劉度 @arther456

『蔵王』から一機のヘリが発進した。乗っているのは、ロシア連邦保安庁の特別調査隊。隊長のエルヴィナは、眼下の洋上を眺めていた。海の上に艦娘がいる。薄紫色の髪に、青い目をした少女だ。「何かありましたか?」後ろの隊員が聞いてくる。「……うん、そうだね」15

2021-01-23 21:42:00
劉度 @arther456

ヘリは海を越え、港町の大きな建物へと向かう。目的地のアンブレラ社バレンツ研究所だ。上空から見た限り、動くものは見当たらない。「脅威はなさそうだ。予定通り、正面玄関前へ」「了解」ヘリが地上に降りる。エルヴィナたちは防護マスクを付け、ヘリを降りた。16

2021-01-23 21:45:00
劉度 @arther456

研究所はすっかり寂れ果てていた。15年間雨ざらしにされた建物は黒ずんでおり、壁が崩れている箇所もある。エルヴィナたちは警戒しつつ正面玄関をくぐる。セキュリティは死んでいる。何しろ、施設の電源が入っていない。隊員たちはライトを点け、室内を照らす。17

2021-01-23 21:48:00
劉度 @arther456

調査隊はロビーを抜け、医薬品研究エリアに入った。小さな研究室がいくつも並んでいるが、ゾンビはもとより、ネズミ1匹見当たらない。床には埃がカーペットのように積もっている。「普通の研究所ですね……?」「奥の方が本命だよ。先に進もう」18

2021-01-23 21:51:01
劉度 @arther456

最奥の扉を開けると、雰囲気が変わった。建物の造りは変わっていないが、研究器具が様変わりしている。電極が剥き出しの測定器具に、拘束ベルトのついたベッド、巨大なノコギリまである。そして床や天井には、こびりついて取れなかったであろう血の跡が、所々に残っている。19

2021-01-23 21:54:00
劉度 @arther456

「なるほど。都合の悪いものは奥に隠してた訳か」隊員の1人が、皮肉げに呟く。その横でエルヴィナは床の埃を指でなぞっていた。「どうしました?」「埃が薄い」今し方踏みしめてきた床と比べると、このエリアの床は随分ときれいなものだった。「7,8年前までは使ってた、って感じかな」20

2021-01-23 21:57:00
劉度 @arther456

アンブレラ社は15年前に倒産したが、全ての研究員が大人しく次の職を探したわけではなかった。閉鎖された研究所を不法占拠し、研究の続きに取り組む者もいた。この研究所はそうした連中の拠点になっていたようだ。「ここからは予定通り、3チームに分かれよう」21

2021-01-23 22:00:03
劉度 @arther456

「私のА班は中心部のサーバールームへ行って、データを捜索。Б班は各所に爆薬を設置して、建物の破壊準備を。Е班は資材エリアを探索して」「了解です」「了解」「時計合わせ。現在時刻、10:28。1時間後にこの場所に集合。10分おきに定時連絡。いいね?」「了解」22

2021-01-23 22:03:01