2021/03/08 J-WAVE RADIO SAKAMOTO

RADIO SAKAMOTO @radiosakamoto

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大友「J-WAVE、レディオ・オオトモ。今夜の放送は、病気療養中の坂本龍一さんに代わって、わたくし大友良英がお届けしてまいります。えー、ここからはゲストをお迎えします。黒沢清さんご無沙汰しております。」 黒沢「大変ご無沙汰しております。」 #jwave

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黒沢「たまたま何度かお会いしてるかもしれない。まぁでも本当に、二本やっていただいたんですよね。最初はNHKの…」 大友「そうですね。小泉さんが朗読した、はい。」 黒沢「それは小さいもんでしたけど、その後は『岸辺の旅』という映画で本当に全面的にお世話になりました。」 #jwave

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大友「いえいえ、その節は。黒沢さんのアイデアがすごい面白くて、最初は映像とか本見たときには、僕オーケストラっていうアイディアは全くなかったんですけど、通常の日本映画だと、あんまりああいうのオーケストラにならずに、ピアノとか小さい編成で普通やってくんですよね。」 #jwave

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黒沢「そうですよね。」 大友「それを、オーケストラって最初言われたときに、合うかなと思ったんですけど、頭の中でシミュレーションしてみると全然映画の見え方が変わるなって思って。あのときはびっくりしました、はい。」 #jwave

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黒沢「逆に僕も、まぁそんなに規模の大きな映画ではなかったんですけれども、生音でやりたいと思っていたので、ついオーケストラと……口走ったんですが、」 #jwave

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黒沢「あのときはオーケストラといっても、いくつかの生楽器と、メインはシンセサイザーというか打ち込みというか、そういうことなんだよ、結局な……と思っていたらほんっとにオーケストラでしたよね、びっくりしました。あ、ほんとなんだって。逆にこちらがびっくりでした。」 #jwave

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大友「今は本当に、打ち込みでも全然遜色ないくらいできるんですけども、ただ僕、技術的に打ち込みの技術が自分にはないので、そうすると人に依頼することになっちゃうんで、それは嫌かなっていうのと、せっかくオーケストラ使えるならオーケストラでやりたいなっていう。」 #jwave

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黒沢「ありがとうございます。僕も多分、これまでいろんな映画でオーケストラっぽい曲を作ってきたんですけど、本当にすべてが生楽器で、すべて本当のオーケストレーションの構成で作ったのは、あれが初めてでした」 大友「そうですか。」 #jwave

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大友「通常、映画作るときってだいたい音楽の方が後からつくわけですけど、音楽で世界というか見え方が変わるという経験は何度かしててるんですけども、あんなに変わったことないっていうくらい、僕にとっては変わりましたね。」 #jwave

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大友「黒沢監督はどこまでそれを想定してたのかなって、今日まずそこからお話聞こうかなって思ってるんですけど。」 黒沢「やっぱ音楽で観ちゃいますね。音楽ってやっぱり観ちゃうんだよなぁっていう力が、あるなあと思います。」 大友「あの、恐ろしいですよね。音楽ってそういう意味では。」 #jwave

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大友「理屈とか超えて人を惹きつけちゃう力って、別に自分の音楽ってことじゃないですけど、あらゆる音楽にあって、だから悪用しようと思ったらいくらでも悪用できるなっていつも思うんですけども。」 黒沢「えぇ、僕もそう思いました。」 #jwave

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黒沢「ですから、僕もはっきりと音楽のイメージを持って、大友さんにお願いしたわけではないんですけど、でも……何か、音楽が何かをしてくれるだろう……予想もしないすごい効果を多分、作り出してくれるだろうというのは、いつも思いながらお願いしています。」 #jwave

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黒沢「で、『岸辺の旅』ではそれが……強烈に音楽でこんなになっちゃうんだというのが、一番強烈に表現できたので、まぁすごく嬉しかったですね。ああなるとは僕も全然思ってないんですよ。」 大友「あ、そうですか。」 #jwave

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大友「あ、そうですか。」 黒沢「思ってないんですけど、なんかなるだろうと。思いもよらぬことに、何かなるだろうというのは、もう楽しみです、いつも映画を作るときの。」 #jwave

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大友「それは音楽だけじゃなくて、黒沢監督の撮り方にもそういうのを感じるんですけども。100%コントロールしてるってわけじゃなくて、そこで起こってしまったことを逃さないみたいな……感じってあるんじゃないですか。」 #jwave

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黒沢「まぁ、そうですね。そんなにいつもメチャクチャなことをしていないんですけども、脚本通りやってはいるんですけど、俳優が思わぬ表情をしたり、カメラマンも思わぬ方向から撮っていたりするようなことは、いつも、とっても、楽しいですね……」 #jwave

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黒沢「あ、これが映画なんだなっていう。しめしめみたいな感じで現場をやり過ごしています。」 大友「だからちょっと、ちょっと距離を置いてみると悪い人だなって思いながら見てるんですけど(笑)。」 黒沢「いやいや。全然悪さはない。まぁ、映画監督ってこういう仕事なんだと思います。」 #jwave

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黒沢「文字通り監督……ですね。自分が何かある才能があってそれを発揮しているんじゃなくて、いろんな人の才能をちょこちょこいただいて、まとめさせていただいているっていう。ただ、監督がいないと、多分まとまらないんですよ、そこの部分をつなぎ合わせるのが僕の仕事ですかね。」 #jwave

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大友「あの、今ずっと話してるのは『岸辺の旅』という黒沢監督と一緒にやった映画についてですけど、あの映画に関して言うと、自分でも全く予期しなかったなぁ、あの音楽がつくことで、映画の外側に世界がすごいあるっていう感じが僕してきたんですよね。」 #jwave

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大友「もともと、現実の世界とそうじゃない世界があるように見える映画なのが、そもそもリアルじゃないストーリーなのに、よりそういう感じがしたっていう。最初、音楽付いてない状態で見た時と、付いてからとで変わったところ……でしたかね。」 #jwave

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大友「最初から黒澤監督の音楽のつけ方って、すごく独特な感じがしてたんですけど、なんとなくテレビにしろ映画にしろ、無難というか普通の線っていうのがあったとすると、黒澤監督のはいつもそれとは全然違う付け方をしてくる……あ、ここで付くんだ、とか。ここ付いてないんだっていう。」 #jwave

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大友「それはあの、音を全部含めてなんですけどね。」 黒沢「いやぁー、まぁそうですね。あんまり自分で意識していないんですけど、本当にひとえに……音楽はすごいなあということは分かるんですけど、まったく音楽に関して素人だという、素人の強みなのかもしれませんね。」 #jwave

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大友「黒沢監督てよく、自分は音楽は素人だって仰っいますけど、全然そんなことないと思っているんですけど(笑)。」 黒沢「もう素人です、全然わかんないですよ。でも僕も当然のように大友さんに音楽をお願いしちゃってますけど……」 #jwave

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黒沢「もう一昨年か、一昨年やっていた、いや『いだてん』の曲、めちゃくちゃいいですよね。」 大友「ありがとうございます(笑)。」 黒沢「僕ね、あの大河ドラマとか割と、全てではないんですけど結構見てるんですけど。」 大友「あ、そうなんですか、意外ですね。」 #jwave