#29 大切な想い出

殺させ屋【公式】 @korosaseya

｢……ぎ、さん。……瀬よ…ぎ……、………、も…ダメ…な。｣

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ラキさんは何かを言うと、消えかけている私の視界から外れた。

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私、このまま死ぬの？ こんな、もみじでもよもぎでもない何かになって死にたかったのに。

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それに、私まだ、死ぬ前にやることがあったのに！

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そう叫ぼうとしても、声が出ない。

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さらに目の前が霞んでくると、突然視界がぐわんと動いた。

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誰かに体を持ち上げられている気がする。 運ばれている？

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｢…ちらの不…際で……申し………いま……。｣

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ぴーーー、ぴ。と、耳鳴りが止んだ。

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｢しかし、最後まできちんとやらせていただきます！こちらもプロですから！｣

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それが聞こえると、私の体を支えていた感触が無くなった。

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｢それでは、おやすみなさい。｣

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浮遊感。

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風のない夜だったはずなのに、何故か強い風を感じる。

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あぁ、私、落とされたんだ、屋上から。

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このまま落ちたらきっと頭が潰れて、誰だかわからないようになる。

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これは私が望んだ死に方。 なのに、なんで、私はこんなに悲しいの？

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まだ死にたくない。死にたくなかったのに、そう思ったのに。

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私、私、私……！

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罰を受けているんだろうか。 好きになっては行けない人を好きになった罰を……。

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それでも、私、もみじは。

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｢ごめんなさい、お父さん……、勇介さん。あなたを、愛していました。｣

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｢ごめんなさ──｣

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最後の気力を振り絞り声に出した告白は、彼女の小さな頭蓋骨が砕ける音に掻き消された。

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