インターミッションA

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……やれ!」声の方向にはガーランドが居た。やはり同様に屋上にエントリーしたと見える。ニンジャスレイヤーは構わず、手の中のスリケンに力を込め、肉腫をめがけて投擲した。「……イヤーッ!」ツヨイ・スリケン!螺旋回転するスリケンがドゥルジのアンテナを貫き、爆発四散させた!  1

2021-04-29 21:41:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BOOOM!KA-BOOOOM!赤い空に網目状にカトンの炎が走った。蝿達はもはや統制を失い、乱れ飛び、燃えながら落下し、やがてその密度は腐乱した沼程度にまで減じていった。「アアアアアア! アアアアアアアアーッ!」インシネレイトは叫び続け、燃え続け、そのまま仰向けに倒れ、動かなくなった。 2

2021-04-29 21:43:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ザンシンするニンジャスレイヤー。その不均衡な双眸の光が明滅し、背中に揺らぐ赤黒い陽炎が徐々に収まってゆく。ガーランドはインシネレイトを見る。生きている。そして空のアブストラクト・オリガミに目をやる。ニンジャスレイヤーの鼓動とオリガミの内なる輝きは呼応しているようだった。 3

2021-04-29 21:45:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ポンポン・ビルディングを支配していた異常なニンジャ存在は確かに滅び、消え失せたと見える。だが、オリガミは空中に留まり続けた。(……何らかのジツか。こいつの?)ガーランドはニンジャスレイヤーを見た。「ベルゼブブと貴様の間に何があった」「……」「ビルでは妙なものが見えたぞ」「……」 4

2021-04-29 21:49:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーはガーランドを睨み、カラテを構え、一歩間合いを取った。肩で息をしている。だが同時にガーランドは、自身もまた限界に来ている事を知る。当然だ。ブザマなイクサの結果だ。「……貴様の知ったことではない」ニンジャスレイヤーは言った。ガーランドは舌打ちした。 5

2021-04-29 21:51:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そこにある妙なものは」「知るか」ニンジャスレイヤーの語気が強まった。ガーランドは彼の態度を観察した。単に無知・無関係では片付けられぬ心の動きを見て取った。だが実際知らぬようだ……。「まあいい。必要とあればいつでも聞き出す」「おれが死んだらまた来い」ニンジャスレイヤーは言った。 6

2021-04-29 21:54:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

会話を打ち切り、ニンジャスレイヤーは踵を返した。長いマフラー布が翻り、赤黒の火を爆ぜさせて、目をくらませた。なによりガーランドはソウカイヤとして、今ここでインシネレイトをはじめとする物事を放置して追う選択肢はない。「クソが」ガーランドは呟いた。インシネレイトが身動きした。 7

2021-04-29 21:57:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーAOM シーズン4【インターミッションA】

2021-04-29 21:59:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

現世に重なり合う黄金立方体のコトダマ・イメージがささくれ、消失した。超自然の風が吹き抜け、第一の狩りが狩人の失敗によって終わった事を告げていた。四つのシャチホコ・ガーゴイルに囲まれしマルノウチ・スゴイタカイビル屋上、狩人たちは競争相手の滅びの余韻を味わった。 8

2021-04-29 22:03:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サロウは微笑した。「死んじゃったんだ。ベルゼブブ=サン」彼は指を耳に突っ込み、いじりながら緩く笑った。「あんなに調子に乗ってても、死んだら終わりだなあ……謙虚にいこうっと」「多腕のカラテは面白い。楽しませてもらった」メイヘムが言った。「だがタイクーンも多腕、獣は慣れていたな」 9

2021-04-29 22:06:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「もともとベルゼブブ=サンはジツ重視のニンジャといったところでしたからね」と、マークスリー。メイヘムは鼻を鳴らす。「ジツ頼り。当然の結果よ」「力押しではネザーキョウの戦王に並ぶ事は至難」マークスリーは言った。「とはいえ僕ならばああは攻めませんね。何にせよ、甘いイクサでした」10

2021-04-29 22:12:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「横で見ていれば何とでも言えるさ、小僧」せせら笑ってみせたのはアヴァリスだ。「あのジツは魅力的だった。ハエの群れに融合し、攻守に用いたな。盗んでやりたかったが……残念だな」彼は顎を擦り、他の狩人を見渡した。「疼いてしまうよなあ……次は俺が出たいものだ。抑えが効かなくなる前に」11

2021-04-29 22:16:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アヴァリスの視線には明確な欲望と殺気があけすけに込められており、不穏であった。サロウは上着からリンゴを取り出し、かじった。「これで二人やられちゃったわけだ。コンヴァージ=サンはノーカウントなんだっけ?なんにせよ、もう五人だ……」「狩人は七人だ」ブラックティアーズが言った。 12

2021-04-29 22:21:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ムカデ・ニンジャ=サンの狩人は、あらためて迎え入れる」「コンヴァージ=サンもかわいそうだね。ナシにされちゃうのは、犬死にみたいでさ……」サロウの薄笑いは、侮蔑のニュアンスか、会話を取り繕う消極的な笑みなのか、判然としなかった。やがてブラックティアーズの水晶が唸った。 13

2021-04-29 22:25:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……偉大なる裁定者、セト=サンの言葉を伝える」ブラックティアーズは狩人達を見た。「終局に些細な違反があったようにも思われるが……」「やっぱりアレ、親の肩入れだったんだ!」サロウが手を叩いて笑い、他の者の睨みを集めた。「アレはないよ、アレはないと思ったんだよな。ズルいもん」 14

2021-04-29 22:28:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……明確な証拠はなく、許容範囲と結論付けられた」ブラックティアーズが結んだ。「クハッ!」アヴァリスが噴き出した。そして空を見上げた。「偉い連中も今頃、喧々諤々か?バカバカしい限りだ。せいぜい楽しませてもらうが」「愚かなれど神聖な儀式」マークスリーが言った。「イクサに等しい」 15

2021-04-29 22:31:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

他の者はこの美しきニンジャの続く言葉を待った。やがてマークスリーは言った。「シャン・ロアはともかく、ケイムショはこれを以て敗北が確定した。このあと僕が勝つことにより、ロンドンの所有権はカタナ・オブ・リバプールのものとなる。儀式の規定に従えば、そういう話になります」 16

2021-04-29 22:35:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マークスリーはブラックティアーズの水晶を見据え、流麗なる英国式オジギを行った。「明け渡す準備を、今から宜しくお願いしますね。ケイムショ=サン」 17

2021-04-29 22:37:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

キンカク・テンプルの冷たい輝きの下、ダークカラテエンパイアのニンジャ達は、実際、マークスリーの挑発的仕草を目の当たりにしたのである。荒野を揺るがすほどの怒気が駆け抜けた。その源はケイムショを示す眼球状の影である。「クキキキ……これはウチの狩人が失礼をば」ギャラルホルンの笑い。 18

2021-04-29 22:41:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「貴公の悲しみの程、実際お察し申し上げる。狩人爆発四散を経てなお自ら獣に襲いかからんとした貴公の突発的行動は我をして震撼せしめたものの、親の情としては自然であろうと合点もゆく」「知らぬ。くだらぬ言いがかりで愛しきベルゼブブの死を貶める事は許さん」「然り、然りよ。クキキ」 19

2021-04-29 22:45:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ギャラルホルンはリアルニンジャ達に邪悪な笑みを向けた。「皆様方もどうか、この程度の規定違反は寛大に見てやっておくれでないか。ケイムショ=サンはこれにて参加権を失ったのであるからして、以後はオブザーバーとして、不正排除の目を光らせていただこうではないか」「……む」「異議はなし」20

2021-04-29 22:49:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ともかく我がメイヘムと戦っていれば獣は3分ともたなかったであろう」アイアンコブラが強調した。ギャラルホルンは咳払いした。「そのう……参加権という話では、首の皮一枚つながった御仁がおられたな。シャン・ロア=サンの新たなニンジャは、ネオサイタマ入りを果たしたのだろうか?」 21

2021-04-29 22:51:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ムカデの影がギチギチと音を立てた。「……既にネオサイタマへの侵入を果たした」「チョージョーだ」セトが頷いた。「アンタはラッキーだよねェ!」オモイ・ニンジャが三つの瞳をグルグルと回転させた。シャン・ロアは「儀式に則った正式な権利を行使したまで」と動じない。 22

2021-04-29 22:56:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「次の狩人を決めるがよい」シャン・ロアが促した。実際、彼の補充狩人が選ばれるのは次次回以降となる。セトは杖をかかげた。「第二の狩人」超自然の大理石長筒が虚空より現れ、グルグルと回転を始めた。筒の底の超自然の穴から、一本の陶片が落ちてきた。そこに書かれた狩人の名は……! 23

2021-04-29 23:02:58