渡邊先生のつぶやき ビッグファイブと「性格」

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渡邊芳之 @ynabe39

村上さんと俺たちが戦っているということはないわなあ。ビッグファイブが「測定としてロバスト」であることは明らかで,それは確かになにかをかなり正確に測ってるんだ。俺たちはむしろ「それはなにを測ってんのか」「それが我々が日常的に知ってる『性格』なのか」を問題にしてるわけだ。

2011-08-05 13:07:39
渡邊芳之 @ynabe39

測定屋としての村上さんは我々はすごく信頼してるし,心理テストの多くが「そもそも測定としてあてにならない」という村上さんの主張は重要なことだ。いっぽう我々は「きちんと測定できてるとしてそこでは何が測られているのか」に興味がある。

2011-08-05 13:09:19
渡邊芳之 @ynabe39

もう少し言えば,性格測定の目的が「たくさんの人の性格をなにかの基準で分類したり序列化して示す」ことである限りはビッグファイブで精度を高めていこうという村上さんのアプローチは正しい。ただ「人の性格の理解」イコール「多数の分類と序列化」なのか,ということだ。

2011-08-05 13:14:58
渡邊芳之 @ynabe39

もともと「性格テストを作る」ということと「人の性格を理解する」ということは関係はあるが別々のことだと思う。「よいテスト」が作られる過程で捨象されていくもの,とくに個人の文脈と個人の時間が気になる人もいてよいと思う。

2011-08-05 13:16:55
渡邊芳之 @ynabe39

ビッグファイブが「性格認知の次元」だということは我々が言うまでもなく多くの人が指摘している。「我々が自分や他者の性格を認知するのに用いる概念が5因子の意味構造を形成している」ということだ。もちろん事実とまるで違う認知は適応的でないから,それがなにかの事実を反映しているのは確かだ。

2011-08-05 13:22:42
渡邊芳之 @ynabe39

そもそも「人間の性格がビッグファイブで測定できる」ことと「人間の性格が状況の影響を大きく受ける」ことはなんら矛盾しない。私はむしろ「人間の性格の個人間変異や個人内変異が5次元の構造で把握できる」ということだと考えている。

2011-08-05 13:27:41
渡邊芳之 @ynabe39

ビッグファイブを導き出した因子分析は相関係数に基づいており,相関係数は「変数間の共変動」を示すものだ。もともと人と人の間で性格の「変動」があるから相関係数が算出できる。ビッグファイブは「性格の個人間変動の次元」であり,同時に「性格の個人内変動の次元」でもありうる。

2011-08-05 13:31:03
渡邊芳之 @ynabe39

状況や文脈に応じた性格の個人内変動をビッグファイブ次元上に位置づけるというような研究は間違いなく成り立つ。ビッグファイブと状況論はなにも矛盾しない。このことはこれまでいくつかの本に書いた。

2011-08-05 13:33:49
渡邊芳之 @ynabe39

ビッグファイブとは「人間の性格は5次元の構造の中で人によって違ったり変化したりする」という事実だけを指しているのであって「ビッグファイブの性格は状況の影響を受けずに一貫している」というのはまったく別の理論的主張。

2011-08-05 13:41:33
渡邊芳之 @ynabe39

ただ村上さんは他の日本のビッグファイブ学者たちのようにそのふたつを混同してはいないと思う。

2011-08-05 13:42:54
渡邊芳之 @ynabe39

そりゃたくさんいるよ。 RT @daihiko: ビッグファイブについて渡邊先生の言っていることにはいちいち納得なのだが、わざわざ言うっていうことはそういうことを誤解しているひとがいるってことか。

2011-08-05 13:47:49
渡邊芳之 @ynabe39

さて風呂に入る前に考えていた問題。昨日の「ビッグファイブ」でも「これは言語の構造であって性格の実体を表しているわけではない」という批判がある。私はこの批判はあまり意味がないと思う。

2011-08-06 10:36:00
渡邊芳之 @ynabe39

そもそも言語のもつ構造がそれによって記述される「リアリティ」とまったく違う構造を持ちうるかという問題。もちろん論理的にはそれは可能だけれども,そのような言語の構造が時代や地域,国語を超えて共有されているということがありうるか。ビッグファイブの構造は多数の言語で確認されている。

2011-08-06 10:40:56
渡邊芳之 @ynabe39

もうひとつは,その言語の構造自体がわれわれの知る「リアリティ」を作り出しているということ。自分の使う言葉が人の性格についてある構造を持っているときに,それと独立に人の性格のリアリティを感じることがどこまでできるか。

2011-08-06 10:42:21
渡邊芳之 @ynabe39

私がビッグファイブの構造研究自体には共感的なのは卒論がそのテーマだったから。ただし私は社会学部社会心理専攻だったので「性格認知の構造」としてそれを研究していた。

2011-08-06 10:44:02
渡邊芳之 @ynabe39

私の卒論に引用されている1960年代のノーマンやチュープス&クリスタルの研究は社会心理学の分野で行われたものだが,いまでは「ビッグファイブ研究の先駆」と位置づけられている。

2011-08-06 10:45:58
渡邊芳之 @ynabe39

卒論をやっていた時期の私が「ビッグファイブ」という言葉を知っていたかどうかは今では定かではない。柏木繁男先生とは学部時代にも面識があったのだから知っていたはずとも言えるが,知らなかった可能性もまた大きいと思う。

2011-08-06 10:47:42
渡邊芳之 @ynabe39

ビッグファイブの因子の中には遺伝指標との関係が見いだされているものもある。私はビッグファイブが「進化の過程で人が獲得した行動パターンの変化による環境適応システムの構造を反映している」というバスの考え方に基本的に賛成。

2011-08-06 10:59:09
渡邊芳之 @ynabe39

ビッグファイブは「人の性格が個人間で,あるいは個人内で変動しうる空間の拡がりを示すもの」だと思う。そのなかである座標点に一貫して留まる人もいれば,状況や文脈に応じてその空間の中を動き回る人もいる。

2011-08-06 11:01:31