すいこばなし【北方謙三水滸伝・楊令伝小噺集】2021/5/1-5/31
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李逵「兄貴」 武松「…」 李「俺のいつも使ってる鍋を知らねえか?」 武「…知らん」 李「あれがねえと飯が作れねえよ…」 武「…」 李「…なんだあの鉄屑は」 武「!」 李「俺の鍋!」 武「…」 李「一体何があったらこんなにひしゃげちまうんだよ…」 武「…すまん」 李「そりゃこの拳のせいだよな」
2021-05-01 18:22:23李「話によっては大兄貴に言いつけないで済むぜ」 武「…たまには俺も鍋くらい洗おうと思ってな」 李「いくら下手くそに洗ってたとしても、鍋を潰しちまうのは一体どういう事だよ?」 武「…潰す前に握りつぶしてしまってな」 李「…?」 武「強く握りすぎた」 李「指の跡までついてやがるのかよ…」
2021-05-01 18:22:24武「それをなんとかして元通りにしようと思ったら…」 李「元通りどころか、ひしゃげちまったか」 武「…その通りだ」 李「湯隆に作ってもらった最高の鍋だったんだがよ」 武「…」 李「あの鍋じゃないと飯は作れねえ」 武「なに!」 李「どうしたもんか」 武「…俺の拳でよければ」 李「よくねえ!」
2021-05-01 18:22:24武松…拳を干し肉にすれば梁山泊まで持つのではないか? 李逵…そんなこと言ってたら、いつか不味い不味い言いながら食うことになるぜ、兄貴?
2021-05-01 18:22:27関勝「こどもの日が近いな、郝瑾」 郝瑾「私は子どもではありません!」 関「いくつになった?」 郝「十三です」 関「子どもではないか」 郝「どこかの将軍よりは子どもではありません!」 関「どこの将軍のことだ?」 郝「それは…」 関「呼延灼か?」 郝「?」 関「高俅は子どもではないな。屑だ」
2021-05-02 09:57:21郝(自覚がないとは) 関「俺は三十六だから大人だな」 郝「齢を重ねることなど誰にでもできます!」 関「言うではないか、郝瑾」 郝「心の齢をきちんと重ねて、年相応な大人になってください、関勝殿」 関「俺のどこが年相応でないというのか?」 郝「それは…」 関「俺の心の齢を確かめてみろ、郝瑾」
2021-05-02 09:57:21関「郝瑾が俺を幼いとい言うのだ」 郝思文「はあ…」 郝嬌「関勝殿!」 関「おう、郝嬌様」 嬌「遊びに来たの?」 関「違う。俺の心の齢を確かめに来た」 嬌「碁はできる?」 関「遊びに来たのではない!」 嬌「私に勝てるの?」 関「言うまでもない、郝嬌様」 嬌「まあ」 瑾(すっかり嬌のペースだ)
2021-05-02 09:57:21関勝…思わぬ劣勢に碁盤をひっくり返してしまった。 郝思文…戦局眼があるな、嬌は。 郝瑾…堅実な手を打つタイプ。 郝嬌…ひらめきで打つタイプ。
2021-05-02 09:57:24鄧飛「鎖鎌を使ってみませんか、公孫勝殿?」 公孫勝「…」 鄧「分銅を振り回してみてください」 公「…」 劉唐(ワクワクしている気を感じる) 鄧「あそこの楊林をがんじがらめにしてみましょう」 楊林「」 劉(磔にされているとは…) 公「!」 鄧「惜しい!」 楊「」 劉(楊林の顔すれすれに分銅が…)
2021-05-03 12:32:45鄧「続いて鎌の使い方ですがね」 公「…」 鄧「鎖で相手を引き寄せて…」 楊「」 鄧「一気に首を、落とす!」 楊「」 劉(とんだ実験台だな楊林) 公「…」 劉(唸ってるな。公孫勝殿の鎖鎌) 公「!」 楊「」 劉(もはや抵抗を諦めている) 公「!!」 鄧「そこまで!」 劉(本当に首を落とすところだった…)
2021-05-03 12:32:45鄧「さすが筋がいいですね、公孫勝殿」 公「…」 鄧「致死軍も鎖鎌を標準装備しませんか?」 公「…考えておく」 劉(マジかよ) 鄧「試したい時にはいつでも楊林を貸し出しますので」 楊「」 劉「勘弁してやれ、鄧飛」 鄧「劉唐はやらねえのかよ?」 劉「いいのか?」 鄧「楊林」 楊「」 劉「よし…」
2021-05-03 12:32:46鄧飛…鎖鎌の調練相手に楊林はもってこいですぜ。 公孫勝…鎖鎌を使って以来、よく色々振り回すようになった。 劉唐…なんだかんだで鎖鎌の試しに夢中になった。 楊林…鄧飛の稽古相手に慣れすぎて、素人相手の鎖鎌なら意外と避けられるとか。
2021-05-03 12:32:48呉用「今日は私の日?」 晁蓋「五月の四日で呉用の日だ」 呉「私の日ということならば」 晁「なんだ」 呉「この溜まりに溜まった書類を片付けていただけますね?」 晁「いや、そうはならんだろう」 呉「私の日ですよ?」 晁「だからといってお前の言うことを聞く日にはならん!」 呉「いや、なります」
2021-05-04 15:59:59晁「…結局やる羽目になった」 呉「これからは溜めないように」 晁「早く調練に行こう」 呉「お気をつけて」 晁「今日はお前も来い、呉用」 呉「私も?」 晁「阮小五と指揮を競ってみろ」 呉「私には仕事が…」 晁「たまにはこういう事で頭を使え、呉用!」 呉「やれやれ…」 晁「軍師は身体も使え!」
2021-05-04 15:59:59呉「穆弘の軍の軍師か」 穆弘「よろしく頼む、呉用殿」 呉「李俊の軍ならば、おそらく…」 穆「分かっているな」 阮小五「呉用殿ならば…」 李俊「吠え面かかせてやろうぜ、阮小五」 穆「勝った!」 李「早すぎるだろう!」 呉「尺の都合だ、李俊」 阮「奇襲は読まれていたか」 呉「まだまだ甘いぞ」
2021-05-04 16:00:00呉用…忙しいとはいえ、まだ心にゆとりを持っていた頃。 晁蓋…軍師と内政の呉用で二人欲しいな。 穆弘…呉用殿の人を見る目は頼りになる。 李俊…水軍で俺と組め、阮小五! 阮小五…満更でもないですな!
2021-05-04 16:00:03李俊「参った…」 狄成「すまねえ、大兄貴」 童威「狄成の天秤棒が片目に直撃したのか?」 狄「そうなんだよ…」 童猛「お前の顔は原型留めてねえぞ?」 童「それで眼帯してるのか」 李「やむなしだ」 狄「今のは童威の兄貴か?」 李「どっちでもいい」 童「同じこと考えてるからな」 童「気にすんな」
2021-05-04 22:24:50李「片目が見えんのは不便だな」 童「いい眼帯じゃねえか」 童「穆弘のお下がりかよ?」 李「そんなわけねえだろう」 狄「俺が作ったんだ」 童「悪くねえぞ」 童「穆弘に自慢してこいよ」 穆弘「李俊!」 狄「噂をすれば」 穆「…!」 李「なんだ穆弘」 穆「…お前も博打で片目を」 李「一緒にするな」
2021-05-04 22:24:50穆「よく見せてみろ」 李「見るな…」 穆「お前のためにあつらえた様な眼帯だ…」 狄「俺が作ったんだぜ!没遮攔!」 穆「…」 童「外すなよ…」 童「いつ見ても慣れねえぜ」 穆「…」 童「穆弘?」 穆「交換しろ、李俊」 李「いらん」 穆「ならば俺は眼帯を賭けて、片目を賭けるぞ!」 李「正気か?」
2021-05-04 22:24:51李俊…危うく勝つところを情けで負けてあげた。 童威…本気でもう片目抉るつもりだったのか? 童猛…やりかねねえ気だったぜ。 狄成…やんちゃ坊主。顔面は大惨事に。 穆弘…マジで目を抉る五秒前まで来てた。
2021-05-04 22:24:54林冲「ちくわになってしまった」 張藍「まあ」 索超「どういうことだ、林冲殿」 林「昨日の夜食でちくわを食べすぎたせいか」 索「そんなばかな…」 張「そんなにちくわばかり食べていたら、林冲様がちくわになりますよって言ったせいかもしれません」 林「聞き捨てならんぞ、張藍!」 索「本当に?」
2021-05-05 05:53:38林「調練に行けぬではないか!」 索「もっと他に心配することが…」 張「元に戻る方法を模索しましょう」 索「前代未聞ですよ」 林「百里!」 百里風「…」 索「どこへ行く林冲殿」 林「考えるのが面倒になった」 百「…」 林「乗せろ百里!」 百「…」 林「俺だ!百里!」 索「ちくわに言われてもな」
2021-05-05 05:53:39兵「林冲殿がちくわになっちまった?」 兵「張藍様の妖術らしい」 林「いいから駆けろ!」 郁保四「…ちくわに言われてもな」 馬麟「…」 扈三娘「どうしたのですか?」 馬「俺の鉄笛もちくわに…」 郁「それは」 馬「…」 扈「本当に?」 馬「…」 郁「吹いてみてください」 馬「〜」 林「戻った!」
2021-05-05 05:53:39林冲…何事もなかったかのように調練に励んだ。 張藍…次ははんぺんにしてやろうと画策中。 百里風…ちくわは別に食べない。馬だし。 索超…林冲がちくわになったと言う度に怪訝な目で見られたのが嫌だ。 馬麟…俺の鉄笛はどこへ? 扈三娘…ちくわは好物。 郁保四…練り物は得意じゃない。
2021-05-05 05:53:42林冲「ちくわぶになってしまった」 張藍「まあ」 索超「どう違うのだ林冲殿」 林「これだから西生まれの男は」 索「なんだと」 林「ちょっと噛んでみろ」 索「おう」 林「…」 索「!」 林「かみごたえが違うだろう」 索「驚いた…」 張「林冲様?」 林「なんだ」 張「食べられてませんか?」 林「!」
2021-05-05 10:34:17