マスター・オブ・パペッツ #6

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」マークスリーはニンジャスレイヤーに向かって加速し、右手の長剣トリスタン、左手の短剣イゾルデを時間差抜刀した。なんとなればこの切り結びで凡庸なニンジャであれば胸と首を貫かれ爆発四散していたであろう。だがニンジャスレイヤーは燃える蛇じみて軌道を変え、側面を取った! 21

2021-06-22 22:24:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「ヌルいぞ!」マークスリーは吐き捨て、死角から抉るような鉤爪を繰り出したニンジャスレイヤーを切り払った。カタナのプラズマが爆ぜ、赤黒い血が噴いた。ナムサン……マークスリーの連撃は当初の回避を予め想定した三段構え。振り抜いたトリスタンを逆さに持ち、更に突いたのだ。 22

2021-06-22 22:28:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは転がって間合いを取り、起き上がった。横向きの裂き傷と突きの傷が生じている。ボタボタと血が溢れる。ニンジャスレイヤーは傷に焼けた拳を押し込んで止血した。蒸気が立ち上った。「死んでいない。やはりコンヴァージ=サンとベルゼブブ=サンを破っただけの事はありますね」 23

2021-06-22 22:31:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フォンウォウォウォウォウォン。マークスリーが刃を打ち振ると、トリスタンとイゾルデは鈍い音を発し、闇に輝く軌跡を焼き付ける。ニンジャスレイヤーは前傾姿勢を取る。グググ、と音が鳴るほどに力がみなぎり、背中が震える……「イヤーッ!」突進!マークスリーは闘牛士めいて身を翻す! 24

2021-06-22 22:33:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

抉るような打撃を躱しながら、マークスリーは再びニンジャスレイヤーを切り裂いていた。ふくらはぎに裂傷!ニンジャスレイヤーは花崗岩に左手を突き刺し、強引に向き直る。既にマークスリーは追撃体勢に入り、グルグルとキリモミ回転しながら接近していた。「イヤーッ!」風車めいた連続斬撃! 25

2021-06-22 22:37:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーの目が赤黒く輝き、突き出した手には、解き放たれたヌンチャクが握られていた!「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」上下段を切り払うプラズマ連続斬撃を、ニンジャスレイヤーは激しいヌンチャク・ワークで打ち返す! 26

2021-06-22 22:39:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」プラズマが、黒炎が飛び散り、二者の動きは更に加速する。(チィ……)マークスリーは武器越しにニンジャスレイヤーを睨んだ。赤黒い眼を。(これまでのイクサにおいても……やはりこのヌンチャク、そしてカトンが厄介。短時間で仕留める)27

2021-06-22 22:43:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イイイイヤアアーッ!」マークスリーは畳み掛けた。獣は予想外の攻撃を繰り出す。手数で畳み掛け、よからぬ動きの兆しが生じるよりも早く致命傷を与えるべし。「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」剣戟がマークスリーのニューロンを発火させ、時間が鈍化する。 28

2021-06-22 22:46:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ゆっくりと流れる世界はほとんど静止するに等しく、彼の脳裏にはKOL秘密施設、あの美しき古城、アヴァロン・アカデミーでの日々がフラッシュバックする。森の闇と木漏れ日、憎悪と嫉妬に彩られた研鑽の日々が。 29

2021-06-22 22:49:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「違うぞ」バトラーは細剣を濡らす血を純白のハンケチで拭った。膝をついたマークスリーの美しい左腿に傷の筋。「太刀筋とは運命である。カタナを動かすのではない。カタナが動く運命に頭を垂れ、ただ従え。予め定められし完全性を再現した時、そなたは後ろに敵の屍を残すばかり也」「クウッ……」 30

2021-06-22 22:53:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「日々の鍛錬とは即ち、運命をより鮮明に解像し、普遍に至る為の作業である。お前が彫刻する運命は醜く、正視に耐えぬ」「もう一度……どうか!」マークスリーは青褪めた顔でバトラーを見上げ、乞うた。だが既にバトラーは背中を向けて訓練場を去るところだった。「クウッ……!」 31

2021-06-22 22:58:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マークスリーが今いる訓練所は美しき英国庭園。薔薇は紫だ。「その身体ではこれ以上教えても無駄だ。紅茶を摂取し、チャドーに努めよ。悔しく思うのならば一秒でも早く傷を治す事だな」「嗚呼……!」地面に手をついたマークスリーの耳に、悪意あるクスクス笑いが届いた。 32

2021-06-22 23:02:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

キッと振り向いたマークスリーは、薔薇アーチの陰でひそひそと笑う二人の美少年を見た。クロムウェルとバランティンだ。わかりきっていた。「プリンス・オブ・リバプール」の中でも、特にあの二人がマークスリーに対する悪意を隠さないのだから。 33

2021-06-22 23:05:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

クロムウェルは黒い巻毛と白い肌、バランティンは美しい褐色の肌と艷やかな唇の持ち主で、どちらも極めて美しい。だがどちらの目も、その長いまつ毛の下では、常に高慢と害意で満たされた瞳を輝かせていた。彼らはKOL支配域から集められ、ここで育てられる少年のニンジャソウル憑依者である。 34

2021-06-22 23:09:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アヴァロン・アカデミーは彼らのような存在が互いにマウンティングを行う魔窟であった。マークスリーはKOLから将来を嘱望されたサラブレッドであり、そしてそれゆえに憎まれるのも必然であった。(何も出来ぬ虫けらめ)マークスリーは土埃を払い、凛として立ち上がった。本当は立つのもやっとだ。 35

2021-06-22 23:14:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「健気なことだね、あのホムンクルスは」クロムウェルがバランティンに囁いた。「バトラー閣下のスパルタな教えに盲従すれば、いずれ寵愛が得られるだろうと妄想して、必死なんだ」「ほっておきなよ、あんな奴」バランティンはクロムウェルの視線を己に向けさせた。「やつは……からっぽさ」 36

2021-06-22 23:18:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マークスリーは敢えて彼らを凝視した。彼らの会話が止まった。マークスリーは口の端を歪め、侮蔑的に笑った。クロムウェルは青褪め、バランティンは憤慨して抜刀しかけた。だがクロムウェルは制した……然り。クロムウェルは身を持って知っているのだ。己がマークスリーに決してかなわぬ事を。 37

2021-06-22 23:22:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

己を強いて確固たる足取りで薔薇庭園を後にしたマークスリーに、プリンスの一人、ロイドが駆け寄った。「マ……マークスリー=サン、大丈夫?」マークスリーは栗色の髪と柔らかな眼差しの持ち主であるロイドを一顧だにせず先に進む。「アイツらの事など気にしないで……この後どうするの?」「黙れ」38

2021-06-22 23:24:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マークスリーは振り返らず、足を早める。「お前ごときが、この僕に近づけると思うのか、下郎。うわっつらの同情で取り繕えば取り入る事ができるとでも?卑しいぞ」「あ……」ロイドは震え、顔を赤らめて立ち尽す。ユウジョウしようとする連中はクロムウェル達以上にぞっとする存在だった。 39

2021-06-22 23:28:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

虫酸が走る空間は、KOLがマークスリーにそうあれかしと与えた試練であるようにも思えた。軋轢の中で感情を育て、兄の轍を踏ませぬようにと。望むところだった。カタナを使った戦闘術。空気椅子 。甲冑木人。ピアノの演奏。チャドー作法……。彼は己を磨き続けた……! 40

2021-06-22 23:33:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

苛烈な日々によって研ぎ澄ませ、解像した運命……その切っ先の最先端に、彼の進むべき道がある。リバプールのカタナの切っ先に。そして今、それを浴びせバラバラに切り裂いて殺す相手こそが……「イヤーッ!」マークスリーが繰り出したトリスタンの刃は、ニンジャスレイヤーの心臓に向かう! 41

2021-06-22 23:37:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはヌンチャクの鎖を張ってカタナを受けた。火花を上げながらトリスタンのプラズマ刃は滑ってゆき、ニンジャスレイヤーの心臓を貫いた。マークスリーは目を見開く。……心臓、否!切っ先は右上に逸れて、左腕の付け根付近を貫いていた!「イヤーッ!」 42

2021-06-22 23:42:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは鎖を絡める!「慣れた傷だ」ジゴクめいた唸り声!マークスリーのニューロンに疑問と驚愕がコンマ数秒去来する。プラズマ纏うトリスタンが、へし折られる!KOLの至宝が!「イヤーッ!」マークスリーはトリスタンを自ら手放した。カタナが宙に飛んだ。「イゾルデ!」彼は叫んだ。43

2021-06-22 23:46:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そう、自らトリスタンを捨てたマークスリーはイゾルデを逆手に構え、背中を向けながらニンジャスレイヤーに繰り出していた!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはマークスリーの手を上から掴んだ。そしてイゾルデの押し込みをギリギリで止めた!トリスタンはクルクルと回転し、離れた地点に落下! 44

2021-06-22 23:49:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「嗚呼ッ……」コトブキは突き刺さったトリスタンを、それから二人を見た。押し込むマークスリー、押し留めるニンジャスレイヤー。彼らを中心に足場が亀裂を生じる。凄まじいカラテの拮抗!「……イヤーッ!」その極点!マークスリーが動いた!力の流れを捉え、ニンジャスレイヤーを投げたのだ! 45

2021-06-22 23:53:20