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ただのボロ屋敷だと思っていたが、こうして全部雨戸が閉まっていると、けっこう立派に見える。もちろん開けると中の障子や格子窓はボロボロでお化け屋敷みたいだ。 pic.twitter.com/7PEzIObQos
2016-02-05 15:26:52なんかおしゃれなスペースもあったわ。もちろん腰掛けたやつはここ数十年の間に一人もいないだろう。 pic.twitter.com/RPHgMBerYO
2016-02-05 15:29:42蔵も二つある。セコムのシールでセキュリティ対策はバッチリだ。もちろんシールが貼ってあるだけで、実際は開けると「うちは医業の家ですから中には結核菌が蔓延しています」という曾祖父さんの落書きがある。 pic.twitter.com/B0T7Yy6WIc
2016-02-05 15:38:17中庭の状態はけっこうエグい。こいつをどうにかするのは俺じゃ不可能だ。 pic.twitter.com/nm0gEFdMCw
2016-02-05 15:43:12問題はこいつだ。敷地の一番隅にあって、何年かに一度親族で作った講で集まって何か儀式みたいのをする風習らしいが、完全に崩壊している。今年はその年のはずだが、もう八十一になる惣領はその存在自体を忘れている。 pic.twitter.com/cMQs0K1kBj
2016-02-05 15:52:08これで最後だ。塀の向こうのお向かいさんは昔えらい侍だったから、庭木の手入れも完璧で、瓦はピカピカ、蔵まで改装してでかでかと家紋まで打ち直している。うちは明治の成り上がりで、家屋敷に特に思い入れもないから、全部がボロボロだ。 pic.twitter.com/JGiPN8ITIe
2016-02-05 15:59:20とりあえず今回理解できたのは、古い医薬品の処分の仕方がわからないってことだ。道具はただの粗大ゴミだろうが、薬品や注射器みたいなのは何のゴミの日に出せばいいんだ? 納戸にまるまる二つ分、トラック一杯くらいある。
2016-02-05 16:14:42こうしてオンボロ屋敷に出入りしていると、やっぱり農家や商家ってのはよく出来てると思うわ。機能的だし、人間の暮らし方ってのはあんまり変わらないものだからな。ちょこちょこいじっておけば長く使える。うちみたいな道楽屋敷は全然ダメだ。大抵の部分に使い道がなくなって放置される。
2016-02-05 16:21:53ちなみにこいつは、元藩主の男爵家に次いで、少なくとも城下じゃ五指には入る名士の家だった。それが今じゃこのザマだ。諸行無常。俺みたいな野良犬が婿入りしている時点で終わってる。
2016-02-05 16:32:20俺みたいなクソ野郎が、明らかに毛色の違う名家出身の妻やその一族と今もそれなりにやれているの(少なくとも人間関係的なものに関して)は、義父、義母どっちの家ももうずっと昔に没落してるからかも知れんと最近気付いた。気位は高いが、実際にはべつにもう金持ちでも何でもないという。
2016-02-08 23:53:25俺は人間の精神の大半を占める歪さや醜さ、ようは肥溜めの中身の99%である糞の部分にはもうウンザリだし、今さらどうでもよくて、たまにほんのちょっとだけマシな部分が見つかればそれでいい、という感じなのだが、連中はそのただ一点のマシな部分というのが、俺の好みに合ってるんだな。
2016-02-08 23:58:49義父方の篠山の話をたまにするが、実は義母方の甲州本家の方がもっとヤバいからな。前に用事で行ったら、墓が300坪くらいの公園だった。甲州じゃ知らんもんはいないどころか誰に聞いても一等の成金で、従六位の貴族院議員だ。だが戦前にはもう没落してた。
2016-02-09 00:08:03みんな気位ばかり高くて、己の精神の純潔を叫び、その実、中身は何にもありゃしない。そういうただ「カッコつける」だけに偏った精神が、なんとなく俺好みというか、俺そのものというか、金持ちと貧乏人、名士と野良犬って違いはあれど、まあ似てるっちゃ似てるんだ。
2016-02-09 00:12:42女衆が三つ紋の色留袖で座敷にずらりと並んだところに、俺がいつものヨレヨレの上着に髭も剃らずに登場するわけさ。お迎えに推参ってなもんでな。女たちはその姿と立ち振舞いで自分の魂を磨き、守ろうとする。俺が昔、酒で魂を磨いたのと同じだ。そこにあるのが詩だよ。人生ってやつだ。
2016-02-09 00:25:35自分の精神の有り様の他に、たいして価値のあるものなんてありゃしないことを知っている。そういうのは、性格ってのか感性ってのか知らないけど、あるんだよな。人間の生活やその一生の大半の瞬間が、幻想の中にあることを知っているんだな。
2016-02-09 00:34:35ようするに、墓場の処世術や煉獄でのマナー、閻魔様への受け答えマニュアルみたいなやつが、くだらない、ただのゴミだってことを彼女たちは直感してる。何を憎み何を愛し何に悲しむのか。人間の中身はそれだけだ。他のことは全部ただの虚、夢、幻想。俺はそいつを糞と呼びゲロと呼ぶ。意味は一緒だ。
2016-02-09 00:41:57世界はデカい肥溜めで、生きるとは息を止めてそいつに潜り泳ぐ作業のことだ。このロクでもない作業に必要なものは何だ? 結局はそういうことだ。埃っぽい納戸から手近にあった掛け軸を一枚開けてみる。紙が冷たい。「一月の川一月の谷の中」飯田龍太、達筆だし、いい句だ。奴はなかなかの詩人だな。
2016-02-09 00:54:54仕事を辞めちまったのはいいが、相変わらず俺の書く小説は短編も長編も全然売れないし、さっそく金がなくなって、憂鬱になってきた。保険も税金も年金も、社会ってやつは容赦なく俺から金を奪っていく。心が折れそうになるが、それじゃ今までと同じだ。気合いを入れろ。
2016-02-13 02:37:38幸いなことがある。家中に古いガラクタが散乱している。この一週間、俺は相続の目録にないような、得体の知れないガラクタを集めて売ることに奔走していた。俺は天才だ。もの凄く面倒くさかったが、100万くらいの金になった。これでまたしばらくは金の心配をせずに小説が書ける。
2016-02-13 02:40:59どうやら今どきは本や書画は人気がないみたいだな。絶対にこいつは五万以上の価値があると思われるような本が五千円にもならない。なのに大昔に中国人が作った印鑑なんかが二十万で売れる。へんな世の中だ。
2016-02-13 02:45:13