十二話

＿＿＿の箱庭 @kami_bake

逃げも隠れもせず、かといって立ち向かうこともしない。 ただ案山子のようにそこに立っては、大きく腕を広げて見せた。

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動かぬ的をトウテツが見逃すはずもなく、一直線にこちらへ向かってくる。 ああ、恐ろしい。怖くて仕方ない。

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植え付けられた生存本能が、今すぐ逃げろと囁いてくる。 インドの最高神の名前を以てしても、怖気づくほどの強さらしい。

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知ったことか、と自分に啖呵を切る。

＿＿＿の箱庭 @kami_bake

もう面倒くさい。楽しい楽しい殺し合いも、腐りきった物語ももう終わりにしよう。 誰に望まれようと正義様なぞになってやるものか。

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殺意と憎しみに染まる夜も、後悔に苛まれる夜も、うんざりだ。

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腹部、否、全身に衝撃。

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「ぐ、……ッ」 「う、う、ゔゔゔうううう！！！！！」

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相手が本気で自分を殺そうとしているのだと自然に感じ取れた。

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「今に、ぶっ殺して、やるよ、………！」

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絶対に捉えて逃がさないように、腕で強く拘束した。 抱きしめる、なんて生ぬるいものじゃない。

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「ころす、ころすころすころす」 「好きにしろ。でも、その前に、」

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どちらともなく、地面に膝をついた。 pic.twitter.com/OByZ2P65Dj

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頭が揺れるような違和感に、思わず唸り声をあげる。

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「ぅ゛、　？な、や、めろ」

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根こそぎ奪い取られていくような感覚。 迸っていたものが、漲っていた何かが全て砂のように、ほろほろと、崩れて。

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「誰が、やめるか、バーカ」

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思考回路が明瞭になっていく。

＿＿＿の箱庭 @kami_bake

馬鹿ばかりだ。

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あの女も、チビも、目の前のこいつも、オレも。 どいつもこいつも馬鹿だ。

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強がる言葉に比例して、腕の力は強くなる。 その姿がおかしくっておかしくって。

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とっくのとうに腹にはオレの腕が突き刺さって、虫の息の癖に！ pic.twitter.com/78Dlp33IY0

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「バカ、は、アンタでしょ、離せよ、はやく」 「お前が、野垂れ死んだらな」

＿＿＿の箱庭 @kami_bake

ああ、最悪だ。 よりにもよってコイツに殺されるとか、最低最悪でしかない。