【完結】曇天 -extra round- 【フォア・ザ・ブルースカイ】(再放送)#7

そして、雲は晴れる。 6:https://togetter.com/li/1794369
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劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2021-10-29 21:01:00
劉度 @arther456

曇天 -extra round- 【フォア・ザ・ブルースカイ】(再放送)#7

2021-10-29 21:02:00
劉度 @arther456

コリウスは一般船室に閉じ込められていた。部屋の前に見張りはいるが、拘束などはされていない。ダルスと違い、さほど戦闘力は無いので鍵をかけておけば大丈夫だと判断されたらしい。食事も十分出されているので苦労はしていないが、不安だ。ダルスはどうしているだろうか。1

2021-10-29 21:03:00
劉度 @arther456

部屋のドアがノックされた。「どうぞ」コリウスが声をかけると、青い髪の女性が入ってきた。瞳は青く、肌は白い。日本人ではない。「誰かしら?」「北欧スウェーデンから参りました。航空巡洋艦ゴトランドです。どうぞよろしくお願いいたします」「……艦娘?」「ええ、艦娘ですよ?」「そう」2

2021-10-29 21:06:00
劉度 @arther456

ゴトランドと名乗った艦娘は、パイプ椅子に腰掛けた。「何の用?」「優月が……コホン。提督が貴方に話を伺いたいと言うので、代わりに参りました」「そう」興味なさげに返事をしながらも、コリウスは内心、来るべき時が来たと感じていた。尋問。ここでコリウスと、それ以上にダルスの今後が決まる。3

2021-10-29 21:09:00
劉度 @arther456

「何を聞きたいのかしら」「そうですね。まずはお2人のお名前から」「……それなら何度も話しているでしょう?私はコリウス・エンゼルシー。彼はダルス・エンゼルシーよ」「ふむふむ。それじゃあコリウスさん。ダルスさんはどうして提督を殺そうとしたのですか?」「頼まれたからよ」4

2021-10-29 21:12:00
劉度 @arther456

「へえ。誰に暗殺を頼まれたんですか?」「ヴァジュダラ・ニオー・ヤクザクランの組長、コンゴウよ」「なるほど。じゃあこの事件の黒幕はコンゴウという事ですね」「……どうかしら」「え?」コリウスはゴトランドに向けて僅かに笑みを浮かべる。「貴方、コンゴウがどんな人間か聞いたことはある?」5

2021-10-29 21:15:00
劉度 @arther456

「えっと……悪い人って事ぐらいしか」「そうね、それは合ってる。けど一番有名で、一番大事な事がある」それは、コンゴウが組長の座に上り詰めた原因でもある。「あの人、気に入らない人間がいたら自分の手で倒しに行くのよ」「何ですかそれ?」「そのままの意味よ」6

2021-10-29 21:18:00
劉度 @arther456

「昔、別の組織がコンゴウへの上納金を断った事があったの。そしたらコンゴウ、朝一でその組の事務所に単身乗り込んで、20人くらい投げ飛ばして帰っていったそうよ」「ええ……なんですかそれ」「で、ここからが問題。そういう性格の人が、他人に暗殺を頼むと思う?」7

2021-10-29 21:21:00
劉度 @arther456

ゴトランドの目が鋭くなる。「つまり、コンゴウの名を語る他人が、ダルスさんを騙して依頼したって事ですか?」「あくまでも可能性だけどね」「……確かめる方法は?」コリウスは少し間を置いてから言った。「コンゴウの方からダルスへ連絡させる」「できるんですか、そんな事が?」8

2021-10-29 21:24:00
劉度 @arther456

「できるわよ。ダルスとコンゴウ、仲が良いもの」嘘ではない。何度かコンゴウの依頼を受けて、護衛などを行っている。「すぐには無理だけど、待っていればそのうち向こうから連絡してくると思うわ」「ちなみに、その連絡手段は?」「秘密」そうすれば、ダルスたちを生かさざるをえない。9

2021-10-29 21:27:00
劉度 @arther456

「……ぐぬ。わかりました。それじゃあ次です。ドロフェイ・ファミリーとはどういう関係ですか?」「敵」「簡潔ですね?」「だってコンゴウ側だもの」「それもそうですね。じゃあ次は……」「あら、それでおしまい?」「え?」「敵だからこそ知っていることも、あると思うのだけれど」10

2021-10-29 21:30:00
劉度 @arther456

「……何を知っているんですか?」「色々ね。何もかも知ってるわけじゃないけれど、少なくとも貴方たちよりは詳しいわ。身の安全を保証してくれるなら、話してあげなくもないけれど」「……考えておきましょう」ダルスのためならいくらでも勿体ぶってみせる。コリウスはそう考えていた。11

2021-10-29 21:33:00
劉度 @arther456

「それじゃあ、最後の質問」だが、ゴトランドのその一言で空気が変わった。「彼は本当に貴方のことを愛していると思いますか?」「え?」コリウスは思わず相手を見やる。海のように青い髪に、空のように蒼い瞳。見た目は何も変わっていないはずなのに、まるで別人だった。12

2021-10-29 21:36:00
劉度 @arther456

「コンゴウ、リュミエラ、エルヴィナ、オリンピア……彼の周りには素敵な女性がたくさん。そんな彼が、貴方ひとりを愛していると思いますか?」質問に対して、コリウスは事も無げに返す。「平気よ。10年も一緒に居たのだもの」「愛と時間は関係あるのでしょうか?」青い髪の少女は意地悪げに笑う。13

2021-10-29 21:39:00
劉度 @arther456

「祖国を離れて傷を舐めあうだけの10年よりも、鮮烈に焼き付いた一瞬の方が心に残るのでは?」「愚問ね。愛の量で勝てないから、質で戦うつもりかしら?」少女の表情が僅かに強張った。「……都合がいいから一緒にいただけでしょう。貴方にも明かしていない秘密が、いっぱいあるはずですよ」14

2021-10-29 21:42:00
劉度 @arther456

するとコリウスは笑顔を浮かべた。「ええ、彼、たくさん秘密があるわよ?」「……何ですって?」「昔のことは中々話してくれないの。初めて好きになった人の事とか。辛いことだから、話すのにも覚悟がいるのよね」「それで、平気なんですか?貴方の知らない部分が彼にあるというのに」15

2021-10-29 21:45:00
劉度 @arther456

「ええ、信じてるもの」澱みなく、躊躇うことなく、コリウスは言い切った。相対する彼女はとっさに言葉を返せなかった。「それとね」コリウスは更に追撃する。「リュミエラもエルヴィナも子供だったし、コンゴウは自分の子供がいるのよ?彼、そこまで節操が無い人じゃないでしょう?」「んぐ」16

2021-10-29 21:48:00
劉度 @arther456

「若いから仕方ないかも知れないけど、ちょっと接点があるくらいで愛してるって疑うのは良くないと思うわ」「……ッ!」少女は拳を震わせていたが、やがて深々と溜息をついた。「あーもう、思った通り。普段ならともかく、この物語でこの人に太刀打ちできるわけないじゃない」「ゴトランドさん?」17

2021-10-29 21:51:00
劉度 @arther456

「ああ、いえ。こっちの話です」ゴトランドは軽く笑うと立ち上がった。「それじゃあこれで質問は終了です。お疲れさまでした」「力になれたなら幸いね。次の返事は、提督さんから直に聞きたいけれど」「……検討しておきます」そう言うと、ゴトランドは部屋を出ていった。18

2021-10-29 21:54:00
劉度 @arther456

「うーん……」医務室のベッドの上でゴトランドの報告を聞いた提督は、天井を見上げて唸っていた。「何を悩んでおりますの?」熊野がひょっこりと顔を覗き込んでくる。「いや、何かゴトランドがここにいることに違和感が……」「艦隊を編成したのは提督でしょう?」「そうなんだけどねえ」20

2021-10-29 21:57:00
劉度 @arther456

「それより提督。あのダルスという男を匿うおつもりなのですか?」熊野からの問いに、提督は少し悩んでから答えた。「うん。今回の作戦は空振ったからね。手がかりがあるなら、少しでも残しておきたい」「ネオアヘンの出処はわからずじまいでしたからねえ」21

2021-10-29 22:00:02
劉度 @arther456

海軍に流れ込むネオアヘンの出処を探る作戦は完全に失敗した。ドロフェイ・ファミリーに計画が筒抜けだった上、主だった幹部が全滅してしまったため、取引ルートを知る人間がいなくなってしまった。一応、金をバラ撒いて情報収集しているが、良い結果は得られないだろう。22

2021-10-29 22:03:00