曇天 -extra round- 【フォア・ザ・ブルースカイ】(再放送)#6

弾丸が貫通しなかった理由はわかるけど、それはそうと撃たれてすぐに起き上がれるのは異常だからな 5:https://togetter.com/li/1793347 7:https://togetter.com/li/1795215
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劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2021-10-27 21:01:00
劉度 @arther456

曇天 -extra round- 【フォア・ザ・ブルースカイ】(再放送)#6

2021-10-27 21:02:00
劉度 @arther456

ダルスはすぐに目を覚ました。熱風。火が燃える音。焦げた臭い。頭を振って起き上がる。提督はどこだ。視線を動かすまでもなく、すぐそこにいた。向こうも起き上がったところだった。視線が合う。「――ッ」その場から飛び退ろうとしたが、ダルスは思い止まった。下手に動けば撃たれる。1

2021-10-27 21:03:00
劉度 @arther456

動いた瞬間、提督は銃を抜き、ダルスの体を撃ち抜くだろう。逆に提督が先に動いたなら、銃撃を避けてから反撃できる。彼我の距離は三歩分。ニ発目が撃たれる前に懐に飛び込める。そうすれば、袖口の仕込みナイフで喉を掻き切れる。向こうもそれを察したようだ。睨み合いになった。2

2021-10-27 21:06:00
劉度 @arther456

呼吸が辛い。息をする度に腹の傷が痛む。焼けた空気が肺を苛む。それは相手も同じはずだ。提督は左腕を失っていて、止血しきれていない。睨み合いを続ければ勝てる。いや、勝たなければならない。コリウスのために。彼女の面影を脳裏に浮かべ、ダルスは努めて呼吸を整える。3

2021-10-27 21:09:00
劉度 @arther456

「ダルス・エンゼルシー」提督に名前を呼ばれた。教えた覚えはない。「……何故、俺の名を?」「不知火から……リュミエラから聞きました」「成程」「どうして私の命を狙うんですか?」「依頼だ」間髪入れずに答える。「殺せと頼まれた」提督は黙り込んだ。「心当たりはあるようだな」4

2021-10-27 21:12:00
劉度 @arther456

揺さぶりをかける。隙が出来れば、そこに飛び込む。「子供を騙して戦わせるなど、恨まれて当然だからな」内心、自嘲する。彼も同じように恨まれた。「騙してませんよ」提督は僅かに眉根を寄せた。「説明できることは全て説明しています」「説明?」ダルスはせせら笑う。「子供に何がわかる?」5

2021-10-27 21:15:00
劉度 @arther456

「全てを教えたつもりでも、あいつらはまだ若い。知識も、経験も、情操も足りない。間違った結論に至るだろう。だから守ってやるんだろう、俺たちが」それに気付かなかったのが、昔のダルスだった。過ちに気付き、何とか助けた僅かな子供の1人がリュミエラだった。「それを……何が艦娘だ!」6

2021-10-27 21:18:00
劉度 @arther456

「どうしてリュミエラを艦娘にした!どうしてあいつを戦場に引きずり戻した!そこまでして子供に命のやり取りをさせたいのか、貴様たちは!?」「わかったような口を利くな!」提督が怒鳴り返す。「あなたにはわからないでしょう!深海棲艦のせいで、どれだけの人が飢え死にしたか!」7

2021-10-27 21:21:00
劉度 @arther456

「海が封鎖されて5年で、6000万人が死んだ!その殆どは餓死だ!茶碗1杯の米のために隣の家族を殺し!その死体の肉を奪って家族同士が殺し合う!そんな地獄を知っていますか!?艦娘はその地獄を終わらせたんです!例えそれが、子供を戦わせる外道の所業であったとしても!」8

2021-10-27 21:24:00
劉度 @arther456

ネオホッカイドウにいたダルスには知らなかった。知識としては知っていても、当事者の慟哭を聞いたことはなかった。「それに……」提督は歯ぎしりする。「力が無ければ不知火は今頃生きてなかったんです!今更戦うなって、今までの不知火を否定しろって言うんですか!?」9

2021-10-27 21:27:00
劉度 @arther456

「そういう世界を選ばせるなと言っている!」ダルスは吐き捨てる。「生まれる世界は選べないんですよ!」提督も叫び返す。そして、言葉が途切れた。声を張り上げすぎて傷に響いた。苦痛を堪え、ダルスは提督を睨みつける。提督も瞳に怒りを湛えて、ダルスを睨んでいる。10

2021-10-27 21:30:00
劉度 @arther456

空気が張り詰める。互いに体力は限界だ。些細な切欠で睨み合いは終わる。その切欠は、駆けつけてくる2つの足音。取り巻く炎を駆け抜けて、2人の女が姿を現す。「提督!」「ダルス!」叫び声。その瞬間、2人は同時に動いた。銃声が響く。眉間に衝撃を受け、ダルスの体が宙を舞う。11

2021-10-27 21:33:00
劉度 @arther456

久しぶりに、青空を見た。12

2021-10-27 21:34:00
劉度 @arther456

仰向けに倒れた暗殺者を確かめ、提督はその場にへたり込んだ。「提督!ご無事ですか!?」不知火が駆けつけ、銃を抜く。「無理……限界……」消耗が酷い。血が足りない。心がしんどい。だけど、まだ倒れられない。倒れた金髪の男に、女性が呼びかけている。「ダルス!しっかりして、ダルス!」14

2021-10-27 21:36:00
劉度 @arther456

エメラルドグリーンの髪の女性だ。どうやらダルスの仲間のようだ。不知火は彼女に銃を向ける。「武器を捨ててください!両手を頭の後ろへ!」不知火の鋭い声に、女性は動きを止めた。「……お願いがあるの」「いいから言う通りにしてください」15

2021-10-27 21:39:00
劉度 @arther456

「私はどうなってもいいから。この人を助けて。今ならきっと間に合う!」「間に合うって……」確かに眉間を撃ち抜いた。脳を砕かれてはどんな人間でも死ぬ。「……提督?」不知火が眉根を寄せた。「何?」「どこを撃ちましたか?」「眉間を……」言い終わる前に、ダルスが体を起こした。16

2021-10-27 21:42:00
劉度 @arther456

「は!?」「くっ!?」不知火がダルスに銃を向ける。すると女性が不知火に銃を向けた。「ダルス、大丈夫!?」一方、体を起こしたダルスは目を丸くしている。「何故」「何でぇ!?」提督も同じ気持ちだ。「眉間に当てたのに、何で無傷なの!?」「……ネオヒグマ革のお陰か」「そんなのあり!?」17

2021-10-27 21:45:00
劉度 @arther456

「ダルス、立てる!?」銃を構えながら女性が叫ぶ。「車まで戻るわ、頑張って!」「ま、待て!」提督は引き金を引いたが、撃鉄の音が虚しく響く。弾切れだ。弾を込めようとして激痛が走った。「あぐぅっ!?」左手が無いことを忘れていた。「熊野!援護を!」不知火が熊野に声をかけた。18

2021-10-27 21:48:00
劉度 @arther456

「とやああああ!?」妙な悲鳴が聞こえた。見ると、熊野が後ずさりしていた。「どうした!?」「なんですの!?なんなんですの、あの人たちは!?」見ると、道路の向こうから武装集団が歩いてきていた。大型の蛮刀やショットガンで武装した男たち。「ハンター!?」女性が驚きの声を上げた。19

2021-10-27 21:51:00
劉度 @arther456

まさかと思い、提督は反対側を見た。「こっちにもいる!」武装した40人以上のハンターたちに包囲されている。穏やかな状況とは言い難い。「おう、いたぞ!あいつらだ!」ハンターの1人がこちらを指差してきた。「柚木律にダルス・エンゼルシーだ!間違いねえ!」「よっしゃあ!ぶっ殺せ!」20

2021-10-27 21:54:00
劉度 @arther456

ハンターたちは武器を手に突っ込んできた。その前に熊野が躍り出た。「シャオッ!」「げばっ!?」「ふぼうっ!?」先頭の2人が細切れになる。「テメエらの血は何色だーっ!」熊野が暴れ始める。だが反対側からもハンターが迫る。不知火と女性が拳銃で迎撃する。更に第3の銃手が乱入する。21

2021-10-27 21:57:00
劉度 @arther456

「おまたせ、提督!」「舞風!」二丁拳銃を構えた舞風が、ハンターたちへ銃撃する。しかし、すぐに血を吐いてうずくまってしまった。「舞風!?」「おなかいたい……」「クソッ……キリシマめ……!」ダルスはハンターたちに向かって叫んだ。「お前ら!狙いは俺だろう!?他の奴らには手を出すな!」22

2021-10-27 22:00:01