稲川淳二の『つぶやき怪談』(2021.11.29)

稲川淳二 @Junji_Inagawa

せめてね、今度は、 「いってらっしゃい」 を言ってやろうか、と思って、 目を開けたら、見えない。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

（あれっ？） と、ドアを開けたら、通路にもいないんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

（あいつ、ずいぶん足、早いなあ・・・でも、あいついたよなあ？）

稲川淳二 @Junji_Inagawa

と、部屋に戻ったんですが、 自分の枕元に灰皿も無けりゃ、 誰か煙草を吸ったような気配も、匂いもないし、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

歩き回った後も、無いんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

（あれっ、あいつ、本当に来なかったのかな・・・）

稲川淳二 @Junji_Inagawa

と思って、いたんだけど、どう考えても、 「俺は、確実に、その意識はある」 って言うんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「人が歩き回ってて、物を捜してて、 座って煙草を吸ったんだよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

なんか、俺、おかしいんだよなあ」 って言うから、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「ああ、そうかい。なんかあるんじゃないの。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

だけど、あいつ臆病だから、 余計なこと言わない方がいいよ」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

って、私は言ったんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

本当に臆病ですからね、そいつは、部屋の主は。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ところが、それから、ほんの何日かしてから、 もう1人の仲間が、来たんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、「稲川、あすこ、おかしいんだよ」 って言うんですね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そいつはその後も、 何回か、あのアパートに行ったらしいんだけど、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

泊まったのが、私のとこへ来る、 何日か前だったらしいんですよね。それで、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「俺、もう、びっくりしちゃったよう」 って言うんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

こいつも、朝、やっぱ、泊まっていて、 部屋の主が、行くって言うから、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「おう」って返事して、寝ていたら、 「ドアがイーッ」って言うから、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「おいちょっと待てよ。 それと同じような話、俺、聞いてるんだよ」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

って言ったんですよ、そいつに。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「おまえ知ってるの？」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「いや、俺じゃないけど、ちょっと言ってみな」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

って、言うと、そいつは不思議そうに、 私を見ていましたが、 再び、話し始めました。