「三角縁神獣鏡」について ―なぜ理系解析は受け入れられないのか―
(00)締め切りから絶賛逃避中の連続ツイート。今回は前回の「邪馬台国」(http://t.co/qnn3gNH)を承けていわゆる「三角縁神獣鏡」の巻。
2011-09-03 05:40:37(01)いきなりですが「三角縁神獣鏡」が魏鏡か国産鏡かという点については国産鏡でほぼ確定です。詳しくは新井宏氏の『理系の視点からみた「考古学」の論争点』を一読して頂ければこと足りますが、それではあんまりなので私見も交えながらゆるゆるとツイートしていきます。
2011-09-03 05:41:53(02)前回でも少々触れたことですが、古代史の探究を妨げているものは、まず旗幟を鮮明にしてから立論することにあります。それは本来研究を進めることによって至るべきであって、研究手続きの順番を誤っています。
2011-09-03 05:44:10(03)「三角縁神獣鏡」の研究の行き詰まりの原因は、卑弥呼が魏から下賜された大量の鏡こそ「三角縁神獣鏡」であるという前提自体を検討していない点にあります。これは残念ながら科学的なものの考え方を大きく逸脱していると言わざるを得ません。
2011-09-03 05:46:09(04)潜在的な心因として、日本という国の成り立ち自体の「あいまい」さがあります。「われわれは何者か」というアイデンティティーが確立されていないのです。私の誇大(古代?)妄想の最終目的はその解析への微々たる貢献といったところです。
2011-09-03 05:47:12(05)「あいまい」であることは、ひいては自信のなさやその裏返しとしての過剰な尊大、現象としての集中豪雨的流行り廃りや一体感の強要(異分子排除)といった国民的宿痾と陸続きになっているだろうし、また一方でそれらを決して良しとはしない心理も強烈に存在します。
2011-09-03 05:51:26(06)ややこしいのは原動力が「善意」に基づく「信念」であることが少なくないことです。旗幟を鮮明にして研究すると至るべき結論が必然的に固定されます。結論が異なれば相容れないのは当たり前なので、行き着く先は当然アラ捜しや足の引っ張り合いになります。
2011-09-03 06:01:26(07)古代史の研究には「三角縁神獣鏡」に限らず「暗黙の了解=常識」が多すぎます。まず常識の見直しが必要でしょう。意見の異なる人の研究成果を検討しないのは論外でありますし、客観的な視点・視座は研究に限らず必ず何らかのヒントになります。
2011-09-03 06:02:55(08)前置きが長いですが問題の「三角縁神獣鏡」です。(01)に挙げた新井氏著作への奥野正男氏の書評(http://t.co/DafDgC6)を一部だけ紹介すると、
2011-09-03 06:03:15(09)『魏鏡論者は中国から一面も出ないことを「特鋳鏡だから出ない」と言い続けてきた(卑弥呼に下賜するため特別に鋳造したから中国で出土しない)。多数派の考古学者は「中国で一枚も出ないのが特鋳の証拠なのだ」という、屁(へ)理屈のような「循環論」である。(続
2011-09-03 06:03:47(10)承前)卑弥呼の遣使に対して、新様式の神獣鏡が贈呈用として500枚以上も大量に「特鋳」された、という主張だ。その仮説は考古学の研究課題そのものであり、倭国の古墳から出る鏡がいつ、どこで、どんな原料やどんな鋳型を使って製作されたかが、科学的に研究されるべきだ。』
2011-09-03 06:04:11(11)奥野氏の書評(09)(10)からも読み取れるように、結論の先行がひずみを生んでいることは明らかです。新聞社のフライング的な報道ともあいまって「三角縁神獣鏡」の出土密度の高い地域=「邪馬台国」という論調が前提の検討もないまま一人歩きしているのが現状です。
2011-09-03 06:04:49(12)「三角縁神獣鏡」に限りませんがコチコチな「循環論」に陥っている常識の固い結び目をほどくというイノベーションが必要です。代表的なのは「雄略天皇=倭王武」「煬帝への国書起草者=聖徳太子」などなど。
2011-09-03 06:05:22(13)ちなみに新井氏は鉛同位体による鏡の材質の解析・検証で、異なった年号の鏡が同一材料で、同じ時に同じ場所で作られ、A、Bの2つのグループに分別されることを科学的に提示されております(西博孝氏書評参照)。理系人にありがちな表現下手で、読者に分かりづらいのが難点ですが…。
2011-09-03 06:05:58(14)私が文系の表現でざっくり意訳すると、ずばり異国文字を取り入れたデザインのレプリカです。欧米の方が着てる意味不明な漢字Tシャツとか、逆に日本人が着てる思いっ切りスペル間違えた英語Tシャツとかをイメージして頂ければそう遠くないと思います。
2011-09-03 06:06:29(15)以上のツイートに纒向遺跡の出土成果等を否定する意図は全くありません。壮大な規模の国が存在したことは事実でしょう。ただ、出土物解析は科学的に行われるべきであり、仮説を立てるにしても硬直化せず反論も受け付けて柔軟に検証を続けていくべきです。
2011-09-03 06:07:01(16)ウィキペディアからポアンカレ予想について少々引用すると『ほとんどの数学者がトポロジーを使ってポアンカレ予想を解こうとしたのに対し、ペレルマンは微分幾何学と物理学の手法を使って解いてみせた。(続
2011-09-03 06:07:29(17)承前)そのため、解の説明を求められてアメリカの壇上に立ったペレルマンの解説を聞いた数学者たちは、「まず、ポアンカレ予想を解かれたことに落胆し、それがトポロジーではなく微分幾何学を使って解かれたことに落胆し、そして、その解の解説がまったく理解できないことに落胆した。』
2011-09-03 06:08:03(18)恐らく現状の「三角縁神獣鏡」についての新井氏の鉛同位体解析に対する状況は(16)(17)のような状態にあるのではないでしょうか?
2011-09-03 06:08:24