「口裂け女」異聞[四]〜口裂け女の対処法が【ポマード】と【ベッコウアメ】になったのは、なぜか?

口裂け女の話に出てくるポマードとベッコウアメの謎について、考えてみました。
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青山葵@カシマさん研究 @aowasabi1972

「口裂け女」異聞[四] 【口裂け女の対処法は、なぜポマードとベッコウ飴なのか?】有名な口裂け女の対処法といえば、【ポマードと3回唱える】と【ベッコウ飴を投げる】でしょうか。唐突に出てくるポマードとベッコウ飴。これらが口裂け女の対処法となる事には、意外に壮大で深淵な理由がありました。

2022-01-14 17:14:41
青山葵@カシマさん研究 @aowasabi1972

口裂け女伝承が民話や昔話と類似性がある事は、流行当時から指摘されてきました。3回唱えるとか100m3秒とか三姉妹、三軒茶屋など「3」という数字が頻出する点や牛方山姥や三枚のお札など呪的逃走譚との共通性は野村純一先生先生のご指摘だったでしょうか。逃避譚の系譜は古く記紀神話にまで遡れるます

2022-01-14 17:14:42
青山葵@カシマさん研究 @aowasabi1972

古事記の「イザナギの黄泉国下り」は、女性の美から醜への変貌を目撃した事による追跡・逃走譚でモチーフ的に口裂け女と類似性が高いことで知られていますが、ここでさらに注目したいのは、逃走時に用いられる呪具、すなわち黒御鬘・湯津津間櫛についてです。

2022-01-14 17:14:42
青山葵@カシマさん研究 @aowasabi1972

「黒御鬘(クロミカヅラ)」は、つる草を髪飾りにしたもので、これを投げると山ブドウが生え、追手がそれを食べている間に逃げのびます。次に「湯津津間櫛(ユツツマグシ)」という髪に挿したクシを投げると、クシの歯がタケノコになり、追手がバリバリ食べている間に、さらに逃げのびる展開になります。

2022-01-14 17:14:43
青山葵@カシマさん研究 @aowasabi1972

この2点の呪具、髪カザリとクシは、共に「頭髪を整える道具」です。口裂け女の苦手なポマードとベッコウ(のクシ)との共通性は明確です。ベッコウが、クシからアメになってしまうのは、バリバリ食べるモノへの変化を先取りしてしまった結果だと考えられます。(子どもたちにはクシよりアメが馴染み深い)

2022-01-14 17:14:43
青山葵@カシマさん研究 @aowasabi1972

なぜ髪を整える道具が呪具になるのか?たとえば人体の中で意志に関係なく生え伸びる毛髪を、荒ぶる自然性の象徴と見て、それを整え制する道具たちを冷静な文化文明性の象徴と見て、対称させたのかも知れません。いずれにしろ、口裂け女の話を語る人の想像力は、太古の神話にまで届いているのです。

2022-01-14 17:14:44
青山葵@カシマさん研究 @aowasabi1972

なぜこんな事が起こるのでしょうか。口裂け女の話を語っていた当時の子ども達の皆が皆、記紀神話のそんな細かい所まで知っていたとは思えません。あるいは共同的無意識とか文化的遺伝子ミームとかいうものが働いているのでしょうか。理由は不明ですが、口裂け女の伝承の魅力は、この「深さ」にあります

2022-01-14 17:14:44
青山葵@カシマさん研究 @aowasabi1972

【補記】黒御蔓=カズラの一種に「ビナン(美男)カズラ」があります。茎などから得られる粘液は、古くは整髪料などに用いられました。「ポマード」を思わせます。 「口裂け女」異聞[四]〜口裂け女の対処法が【ポマード】と【ベッコウアメ】になったのは、なぜか? togetter.com/li/1830626

2022-01-15 16:34:37
吉田悠軌 @yoshidakaityou

@aowasabi1972 ポマード+ベッコウ=櫛は面白いですね。 時代スケールを小さくすると、二十世紀前半(明治末〜1960年代辺り?)の日本には「ツゲの櫛を逆さにくわえた女を、口の裂けた女の化け物と見間違える」話のパターンがあり、後の口裂け女と繋がるかなあ、と私は想像してましたが。そことも関連しそうですね。

2022-01-14 17:26:49
青山葵@カシマさん研究 @aowasabi1972

@yoshidakaityou 口裂け女の持ち物で「柘植の櫛」を報告する記事があったようなのですが、当時の私は出典をメモしていませんで困ります。ご存知ありませんか?

2022-01-14 18:23:55
吉田悠軌 @yoshidakaityou

@aowasabi1972 えー興味深いですね。ただ私も、なんかそんな事例を読んだような記憶があるような、ないような……

2022-01-14 18:34:05
青山葵@カシマさん研究 @aowasabi1972

「ツゲのクシを持つ口裂け女」の事例を探して、奥の書棚を漁るが見当たらない。残るは消去法で「現代民話考」あたりだと思うけど、書籍自体が見当たらない。 pic.twitter.com/mojbirhobp

2022-01-16 12:52:23
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吉田悠軌 @yoshidakaityou

@aowasabi1972 今手元にないので不確かですが、『現代民話考 第2期Ⅱ 学校』にて、1977、78年の岡山市で櫛を持ってる口裂け女の噂があった、というのがそれに当たるかと思います。

2022-01-16 14:43:00
青山葵@カシマさん研究 @aowasabi1972

@yoshidakaityou ありがとうございます。スッキリしました。やはりあの当時、口裂け女を語っていた人々の想像力は、なぜか「クシ」も気になっていたという事でしょうか。吉田会長の「クシを逆さまに咥えた女を化け物と見間違える話」にも関連するかもしれませんね。

2022-01-16 16:38:38
青山葵@カシマさん研究 @aowasabi1972

【補記】「イザナギの黄泉国下り」の呪具に「モモの実を三つ」があります。「3つ」と数量指定があるところがポマードを「3回」とかベッコウアメを「3個」など数量回数指定のある対処法に影響しているのかもしれません。甘い食べ物という点ではクシからアメの変化に影響も。togetter.com/li/1830626

2022-01-17 17:31:24
青山葵@カシマさん研究 @aowasabi1972

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2021-12-31 03:48:14
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