- nirvanaheim
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美食漫画だから美食の頂点が作品世界の頂点でなければならない。頂点を決めるべく、競い合い白黒をつけなければならない。今でも多くのグルメ漫画はこの世界観を有している。これへの反動は当然生じる。例えば「バトルに勝てばいいという話ならこうなるだろ」とパロを突き詰めたのが『鉄鍋のジャン』。
2019-06-27 22:47:23「作った物の味で上回ったら、それを作った者が勝者で上位者で敗者はそれを礼賛したり恭順したりすべき、なんてアホな話でしょ」という発想からどう別物を生み出すかという問題はあったわけですが……
2019-06-27 22:48:36自分の中の枠組みで言えば、この食バトル文化の中に現れた新しいアングルが、食文化ものという視点で、バトル漫画性が生み出すファンタジー性を離れて食が現実にある在り方を主題化しようとする流れ、ということになるんですが、これのパイオニアがやはり『美味しんぼ』だったと思うんですよね。
2019-06-27 22:52:35『美味しんぼ』は毎回のように山岡の料理が問題を解決する構造には見えるけれど、料理が解決の糸口になり得たのも問題の原因に料理があることが基本だったからで、敢えてやれば、「料理へのこだわりが起こす社会的な問題というものをクローズアップした」という見方を取ることもできる。
2019-06-27 22:56:26究極と至高の食というのが食文化カタログみたいになっていったことも周知の通りですが、この食文化ものジャンルを拓いたのはやはり『美味しんぼ』であると言えます。『美味しんぼ』自体が美食バトルものの文脈から生まれ、その先行ジャンル的基調を色濃く残しているとしても、です。
2019-06-27 23:02:00『ラーメン発見伝』が「一線を画していた」というのは、ネイティブな食文化もの、以前にした言い方を使えば、食カルチャー漫画としてネイティブだったからだと思います。『美味しんぼ』が提起した多くのものを引き受けて、そこから新しく全体を再構成して回答を返したのが『発見伝』だ、という認識。
2019-06-27 23:06:53この食カルチャー漫画という地平では、もはや美食は価値の枢軸ではないのだから、美食趣味に砂をかけてもいい。美食趣味で問題を起こすやつは美食の本道からの逸脱者・堕落者とかではなくて、単に問題のあるやつでいい(「逸脱者・堕落者」は「真の美食」によって正さなければならない)。
2019-06-27 23:11:14この、地平を拓いたものとそこで十全に自己確立したものの関係は上下とかでなく趣深いのだが、両者の対峙というテーマにおいても『発見伝』が『美味しんぼ』に回答を出している、という話も以前しましたね。
2019-06-27 23:18:08初期『美味しんぼ』に特に色濃かった「美食の暴君」「追従者たち」への反逆要素も、「驕り高ぶって足元を見失った自称美食家たちを、道々の者の知る素朴な美食を突き付けて打ち倒す」みたいな形で表出されなければならなかったけど……
2019-06-27 23:19:21『発見伝』は「ラーメンはそもそも大衆食だ」というジャンル規定で「美食の権威」を巡る構造をあらかじめ解体しているという点で、社会的権威という雑味を入れることなく文化の話をできる、という効果を生んでいるという話もできる。
2019-06-27 23:21:48もちろん『発見伝』に(虚飾的権威と追従者ら以外に)美食趣味がないわけではなく、美食の権威的人物がいないわけでもない。ただそれは、世間の中で足掻く求道者たちの間で陰ながら共有されるものとして表出される。美食の価値を相対化する波を自ら造りつつ、その波の中で抗う様を描く漫画とも言える。
2019-06-27 23:28:05美食道の美化を相対化する最大の要素はもちろんラーメンハゲの露悪的な姿勢なわけなんですが、この美食道的逸脱者への蔑視・絶望に最終的に奇麗に回答を返したのは見事でしたね。
2019-06-27 23:31:34さっき書いたけど、ああいうのは改心というよりは勝者への恭順(よい表現を使えば感服)と考えるべきだと思うんだよね。 #十把一絡げの匹夫はテキトーに蹴散らされればいいが
2019-06-27 23:41:20