- mocharn3rd
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熹一と尊鷹が拳の応酬をする。 破心掌を嫌った尊鷹がバックステップをする。 そこに熹一は懐からかぎ爪付きのロープを出して操った。 尊鷹はそれを捌こうとするが、ロープが軌道を変えてタコのようにからみつく。
2022-03-01 06:36:07「ゴア博士特製のロープと、"ロープ"直伝の投げ縄術や。 聞けよ尊鷹。彼女は灘神影流が片手間にやっとる技じゃなくて、"生きるために"その投げ縄術を覚えてきたんやで」 尊鷹が唸る。
2022-03-01 06:36:16「尊鷹、ワシはお前と闘いに来たわけやないんや。聞け」 「何をだ」 「ケルシー先生」 ばばっ、と、尊鷹がバックステップをした。しかし、ロープが絡んでいてうまく距離をとれない。
2022-03-01 06:36:25熹一が息をついて言う。 「ケルシー先生から、尊鷹、お前に言付かってる」 尊鷹は構えを少し緩めた。 「何を言っているんだ?」 熹一はゆっくり深呼吸しながら、尊鷹に近づく。
2022-03-01 06:36:33「ケルシー先生はケルシー先生や。お前はもしかして忘れたのか。 "テラ"の"ケルシー先生"を」 ぐっ、と構えた尊鷹に、熹一は十字架のように腕を開く。
2022-03-01 06:36:41ぶんぶん、と尊鷹は頭を振るう。 「言え! まずそのケルシー先生の姿と言葉を!」 熹一は腕を下ろす。 「"フェリーン"の"医師"。"髪はうっすらとした白くて黄緑"」 構えていた尊鷹が、体をゆるめ、唖然とした表情をする。
2022-03-01 06:36:51「熹一、お前まさか……」 熹一は頭をかく。 「だから言うとるやろが。ケルシー先生から言葉を言付かっとると」 「テラに行って、帰って来たのか……!」
2022-03-01 06:37:01「ケルシー先生は言うとったわ。"尊鷹、君にはたくさん助けられた。 元の世界に戻れることができて、嬉しい"と……」 す、と熹一は何気ないポーズをとった。 尊鷹が見る。 それは、ケルシーがよくやる姿だった。
2022-03-01 06:37:11「熹一、私に何をさせたいんだ」 「何言うとるんや」 「熹一、テラにいたのならわかるだろう。情報提供したのなら、それは対価を求めるのだと」
2022-03-01 06:37:20「……ガルシア28号を、テラへと移送する」 「なにっ」 「お前かてわかっとるやろうが。鬼龍や米軍にガルシアを渡したところで、どうにもならんことを」
2022-03-01 06:37:31「しかし、鬼龍はっ」 「心臓かてドナーや別の技術があるやろがっ! お前が腎臓を渡したように。 それがなんでガルシアの心臓を抜き取らなあかんねん」
2022-03-01 06:37:40熹一は言う。 「お前が鬼龍と絡んどるのは承知や。あと"M"に関わっとるのもな」 「……」 熹一は上を向いて、それから言う。 「お前、鬼龍のことが心配なんやろ」 「……」 尊鷹は、深く息を払った。 「お前の考えがわからん」
2022-03-01 06:38:02熹一はここで、すっ、と態度を切り替えた。 「そうやろな。お前はずっと今まで鬼龍に甘々な態度だったからな。 ガルシアの心臓をあきらめろや」 尊鷹の顔が赤くなる。 「ならば鬼龍はどうすればいいのだ?」
2022-03-01 06:38:12「山奥で引きこもっとると全然知識も来ないのか。 ちゃんと鬼龍の心臓もどうにかできるシステムがある。見ろ」 熹一はスマートフォンを取り出して、QRコードを出した。 「なにっ」
2022-03-01 06:38:22尊鷹は懐からスマートフォンを取り出して読み取る。 読み取りが完了する。熹一はゆっくり歩いて、尊鷹の肩を撫でた。 「最新の医療なら、鬼龍の心臓もどうにかなるんや」 「まて熹一、お前……」 「ガルシアはテラへ連れていく」
2022-03-01 06:38:38尊鷹は口を開いて、それから、口を閉じた。 「なるほど、それなら、……そうか。ならばこれ以上言うまい」 尊鷹は頷く。 「ケルシー先生によろしく言ってくれないか。写真か映像を映してほしい」
2022-03-01 06:38:53熹一が笑う。 「おっええで。まずはピースサインや。おう。それから音声もくれ。 ケルシー先生とかMr.エンペラーはお前にすごい感謝しとってな……」
2022-03-01 06:39:02ケルシーは尊鷹の画像と動画を見た。 熹一は黙っていた。 「尊鷹は、ここまで長生きで元気にしていたんだな」 熹一は、ケルシーが目元を拭ったのを、見なかった。
2022-03-01 06:39:23