【ラスト・タンデム・ボーダー・バード】

金哲義 キムチョリ 김철의 @kimsonsengnim

西田シャトナーさんがあんにも何度も「ボーダー」の話をしてくださるのに、緊張してちゃんと返せなかった事が心残り。 帰阪して落ち着いて、ずっと自分が作品に込めているテーマを話すのを忘れていた事に気付く。 ほとんどの作品で、いつもラストに 「人は一緒に生きていけるか？」 という問いを

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書いていた。 そして必ず 「今はまだ[NO]」 と書いていた。 そして 「でもこの先はわからない」 という希望を書いていた。 今作品も同じく。 今回はその「この先」をミレが空港で見送る場面に込めていた。

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それが「ボーダー」の問いの応えになっているかどうかはわからないけど そのボーダーがどうなるかは、演じる4世のリファに託したつもりだった。 その想いを答れたら良かった💦 観客の皆さんの前で話す時には、深呼吸して心を落ち着けないとダメだな💦

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多分、ぼくたちがやる[ラスト・タンデム・ボーダー・バード]だったので、ひとつの記録として… 当時演劇部希望への学校や組織からの圧力が限度を超えていて、3人が精神的に参っていた。 3人での活動を控える事になって、ソエとリファは行き場を無くした。

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そんな時に應典院のラストを飾る30分の演劇祭の話が来た。 時を近くして、アボジ(父)に朝日新聞から取材が来た。 帰国事業の思い出を持っている人を探していた。 僕はアボジから兄である伯父を新潟港から見送った話を何度も聞かされていた。 「キューポラのある街」や「血と骨」で

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電車を見送る場面は見るが、船を見送る場面はあまり見ない。 僕が描く帰国事業はいつも海だ。 朝日新聞への取材でもアボジは伯父を見送った話をしていた。 そんな時に伯父が朝鮮戦争に志願しようとして密航の船長に5000円札騙しとられた話もしていて、僕は「面白い」と思った。

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すぐに執筆を始めて、應典院への参加を決めた。 そんな時にコロナの時代が幕開けた。 二月くらいだったか マスクが無くなっていく中で酷い花粉症である上田さんが「マスクが無くなった」とツイートした。 劇団の倉庫整理用に箱でマスクを持っていたので上田さんに「二週間分ほどなら

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マスクを分けることができますよ」とLINEをして会うことになった。 上田さんとは應典院で初共演をして、上田さんにとってもそれは大切な思い出としてくれていたらしく「應典院の最後なら通行人でもいいから出してください」と言ってくれたので僕は内容を説明して乃木の役で出てもらうことになった

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福井くんと平川くんは「チャンソ」でずっと目をつけていたので、スムーズに誘って了承を得たと思う。 北野くんに出てほしくて、彼のバイト先に行って、まずは誘わずに予定を聞いてみると、なかなかにタイトに予定が重なっていた。 やっぱり無理かな…と肩を落としたけど、数日間諦めきれなかった。

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出てほしいな、でも稽古回数がな、と悩みながら未練がましくまたバイト先の前を通ると、キュウリを三本持った北野くんが目の前に現れた。 彼の事を考えてる時に彼が前に現れたので 「あ、もう運命と思って言います。出てください」 と、キュウリを手にした北野くんを誘ってOKをもらった。

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コロナがだんだん深刻になっていく中で稽古ははじまった。 この時点で間渕くん演じるテジンは脚本にはなかった。 初期の設定は、父の時代に二人乗りだったが、現代では一人で乗っているという、少し孤独も込めていた。 稽古が始まると、間渕くんが「稽古に遊びに行っていいですか？」と

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LINEをくれた。 「是非是非」と返し、彼は頻繁に遊びにきてくれて、時には代役でも協力してくれた。 福井くんも「チャンソ」の時よりもぐんぐん伸びて、隠れ持っていた引き出しもたくさん出してきて、應典院のラストを飾るのが楽しみになる反面、世の中は不安だらけになってきた。

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世の中も不安だったけど、脚本上でリファが北野くんをくるくる回ってシバき回す時点でラーニングタイム30分に到達した事も不安だった。 「どうしよう。どう縮めよう」と頭の中をフル回転させていた。 ある日福井くんから「この公演、できますかね？」と心配そうなLINEが来た。

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(Twitterで修正機能あればよいのに。間淵くんごめんなさい) 福井くんへは「やります」と希望も込めて伝えたけど、彼が言いたかったのはそういうことではなかった。 彼らの演技はどんどん良くなりながら世の中が後ろ向きになる中で、ついに中止が決まった。 延期もなく、中止だった。

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自分たちも襲った「中止」にかなりショックも受けたけど「やっぱりか」という思いもあった。 そんな中で関西演劇祭のお話が来てエントリーをした。 出場できる事が決まって、今度は45分なので安心もあった。 そして、間淵くんの出番を増やすかを頭の中であれこれ考えた。

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先代が二人乗りだったが、現代が一人になっているという設定が大きく変わる。 主人公ミョンギに親友を乗せるべきか。 けど、間淵くんのこれまでの貢献と彼自身の才能を、設定と天秤にかけた時に「初期の設定がなんぼのもんじゃ」と、書き換える事を決意した。 間淵くんの参加が決まって

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zoom会議を始めた。 みんなは関西演劇祭に、残された「タンデム・ボーダー・バード」への希望を持っていたけど、福井くんは違った。 ある日電話で話した。 彼の生活環境として外出や演劇への参加が絶望的になり、彼自身が自分のやりたい事とやるべき事を問うことすら疲れているようだった。

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色々と穏やかに話し合って「まだ稽古開始までには二ヶ月あるので、今は全てを忘れてください」と言った。 もう彼が戻れなくなっても、そこに責任を感じず、まずは自分を大事に楽にする事を伝えた。 電話を切ろうとしたら福井くんが「あ、キムさん」と言った。

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「隈多って、何歳くらいなんですか？」と聞くので、どうしたんだろ？と思って設定年齢を言った。 すると「そうですよね」と、自分のお祖父さんの話をしだした。 電話の向こうの資料を見ているらしく「祖父が実は咸鏡北道の生まれで…」と、色々隈多と重なる過去を話した。 僕は

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「おもしろい偶然ですね。福井くんはこの作品をやる運命かもですね」と伝えた。 僕の伯父も帰国して命を終えた咸鏡北道の清津も想って、僕は「福井くんは帰ってこれる」と思った。 お店がどんどん閉まっていって世の中が静止して、みんなが会えなくなる中で、やがてリファが演劇への

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諦めを感じはじめた。 進路の話を誰にも相談できずに、LINEでのやりとりも力が無くなっていくのがわかる。 そしてついに「高校卒業したら演劇は辞める」と決断した。 そんな時にゲキゲキさんが「ターニングポイントフェス」に演劇部希望の3人を誘ってくれた。 卒業公演は必ず

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演劇部希望で作品を創る事を目標に「ターニングポイントフェス」は僕が彼女たちに書く最後の作品だった。 稽古を進めていく中でリファの中で演劇への夢が復活した。 今でもこの先も古川さんとゲキゲキさんには感謝し尽くせない。 そして何かの地点で福井くんも演劇への活力が戻っていた。

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元気になった時に聞いてみると、あの時お祖父さんの話を僕にしたのは 「もうこれでキムさんともお別れかも知れないから全部を話そう」 と思っての事だったらしい。 「タンデム」への稽古も間淵くんの参加もあってどんどんと上がっていく中で、今度はコロナ禍でズレまくった修学旅行の

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問題が発生した。 せめて学生時代の思い出にと、2泊三日ほどの日本国内に決まったけど、関西演劇祭の日程と重なった。 九日間の前半と後半の間だった。 それまでの日程と照らし合わせて東京の劇団の方に予定を組み替えてもらったのに、再度日程の変更があったのだ。

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ソエは「学校クソ喰らえ、修学旅行なんか行くか」の迷いなきパンクロックちゃんになってしまっていたので公演不参加の心配はなかったけど、リファは周りからの同調に葛藤した。 前半と後半の間なので被らないかも知れないけど飛行機などの問題、昨今の情勢を考えると、公演の参加に