初心者向け「旧軍の水陸両用戦車」の紹介
- Nyarlathotep_44
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1941(昭和16)年の米国との開戦が濃厚となった年、太平洋の島々での攻防を予想した海軍は上陸戦を有利にすすめるための水陸両用戦車を陸軍技術本部に依頼します。1933年から研究を進めていた技術本部は九五式軽戦車を元に設計を開始、諸々を経て1942年に海軍で制式採用されました。
2011-09-03 22:26:48というわけで42(昭和17)年に制式採用された日本の水陸両用戦車、その名も「特二式内火艇(秘匿名称:カミ)」です。兵装は主砲に3.7cm九八式戦車砲×1、7.7mm九七式車載機銃×1となかなか豪華な作りです。 http://t.co/qBnEQbg
2011-09-03 22:34:01@Nyarlathotep_44 同軸機銃が付いてるのを、米軍側では従来の日本戦車より進歩してると評価してたようですね。
2011-09-03 23:12:35カミは海軍の装備なので、単位も「輌」では無く「隻」として扱われるのが特徴ですね。一応一般的には水陸両用戦車として扱われるので、陸軍の装備と勘違いされてる人が多いのではないでしょうか? http://t.co/6QF2Snq
2011-09-03 22:39:43あとカミは当初、潜水艦による輸送が計画されており、耐圧性が考慮されているのも特徴の一つです。ただ、車体は完全密閉できないので、エンジンや電気系統などは予め外して艦内に収納して輸送、浮上後に排水して組み立てて使います。しかしこの機能はめんどくさく、実際使われる事は無かったようです。
2011-09-03 22:42:31実際は各国の水陸両用戦車と同じく、二等輸送艦で輸送されて使用されています。前後に装備されたフロートや、エンジンを水から守るためのシュノーケルは取り外しが可能で、上陸後は取り外して運用する想定だったらしいのですが……実際にそれが守られてたかは不明ですね。
2011-09-03 22:48:37エンジンは九五式軽戦車と同じ「三菱A六一二〇VDe空冷直列6気筒」ディーゼルエンジン(110hp)で、機関室との隔壁がなかったので、乗員は熱や騒音に悩まされたそうです。ただ、その反面乗車しながら応急修理が出来たので、その点が好評なのも変わっていますね。
2011-09-03 22:51:20カミは正式開始から終戦までの間に184輌が生産され、43年の広島の情島にQ基地を開設、極秘にカミ車の訓練と部隊編成を行い、ラバウル、トラック、サイパンの防衛戦に参加させ、実際44年9月のレイテ島オルモック湾にこれを使って逆上陸を敢行しています。
2011-09-03 22:56:29さてカミを含めた日本の内火艇の実際の運用法なんですが、後継の特三式、特四式、特五式内火艇は操縦者含め5~7名が乗車でき、どちらかというと旧来と同じ戦車というよりは米軍の「LVT」シリーズと近い運用をされているようです。
2011-09-03 23:01:05しかし日本の場合は脱着式のフロートにシュノーケル、キューポラ、更に特三式・特五式は4.7cm一式戦車砲を装備させて対戦車能力を向上させるなど、上陸後もそのまま機甲戦力として最後まで参戦するように設計されていたのが特徴的でしょうか。
2011-09-03 23:05:23@Nyarlathotep_44 強襲揚陸用ではなくて、隠密上陸、展開済みの陸戦隊のところへ増援として送るというのが開発コンセプトだったようです。だから、潜水艦輸送可能という変な仕様だし、あくまで戦車なので陸戦能力重視と。
2011-09-03 23:29:13@baron_yamaneko なるほど、そうだったのですか。それは勘違いしてた……しかしそれにしてはかなり乗組員も多いですねw
2011-09-03 23:47:47@Nyarlathotep_44 乗員配置がよくわからないですよね。なお、特四式だけは、補給物資輸送用の水陸両用大発が開発コンセプトだったそうです。ソロモン戦でせっかく揚陸した補給物資を海岸に積んだまま焼かれちゃうことが多かったので、夜明け前に一気に内陸へと隠蔽するため開発と。
2011-09-03 23:53:02@baron_yamaneko アレだけは言うならば母船と湾を往復させて、物資や兵員を輸送するための「武装大発」に近いコンセプトですからねー、他とは武装から装甲から何から全て違う思想で作られたのは一見して分かりますね。
2011-09-03 23:56:30まあ紹介してない兵器の話を置いておきながら全体の運用の話をするのもアレなので、このままちゃっちゃと全内火艇の解説も軽くしてしまいますか。
2011-09-03 23:08:41特三式内火艇「カチ」:特二式内火艇の成功を受けて更に改良し、完全密閉構造を採用したうえ、装甲を50mmに増強、主砲を4.7cm砲にするなど対戦車能力を一式中戦車レベルまで飛躍的に強化したもの。エンジンも240hpに強化した一〇〇式空冷ディーゼルエンジンを使用しています。
2011-09-03 23:14:13乗員はカミ車と同じく6名、武装も4.7cm戦車砲×1、7.7mm車載機銃×2と大幅強化。19輌が生産されたものの、物資不足によりこれ以上の生産が困難となり、結局こちらは実戦に参加することはありませんでした。 http://t.co/bDtg16E
2011-09-03 23:18:36特四式内火艇「カツ」:特二式・特三式とは違い、こちらは完全に兵員強襲、物資輸送用のみに目的を特化させた車輌。車体と浮舟を一体化させて軽量化を施し、特三式と同じく完全密閉構造により、エンジンや電装部品を外すこと無く潜水艦で輸送も可能。どっちかと言えばLTV-1と同じ形式の車輌。
2011-09-03 23:27:59人員は5名、海上速度8km/h、武装は13mm九三式艦船用機銃×2、装甲も車体正面の10mm厚装甲板のみと、他と比べれば貧弱な方。海軍はこれに魚雷を載せてマーシャル諸島に停泊する米艦隊を強襲する「竜巻作戦」を提案したが後に失敗している。生産量は試作型含めて48輌とも言われている。
2011-09-03 23:33:24しかし海上速度8km/hで敵艦隊停泊地に殴りこみをかけようとは、たとえ成功しても自殺行為だったのではないだろうか?
2011-09-03 23:34:26あ、写真をのっけ忘れてた……特四式内火艇はこんな感じの車輌です。 http://t.co/EJoYvGp
2011-09-03 23:35:29特五式内火艇「トク」:特三式内火艇が生産の悪化によって生産できなくなったので、これを元にして製造過程を簡素化した計画車輌。車体や浮舟に直線が多くなり、平銅板を使用することで電気溶接を容易にしている。 http://t.co/UKEKk1V
2011-09-03 23:42:39乗員は7名、武装も砲塔に2.5cm艦船用機関砲×1に、車体正面に4.7cm戦車砲×1を装備しているなど、かなり強化されている。しかし20輌生産するだけの材料を確保したものの、結局1輌も完成しないうちに終戦を迎えてしまった。また、浮舟を取り外す構図なども以前より何も変わっていない。
2011-09-03 23:45:55まあこういう感じに、種類だけは数多くの水陸両用車輌が開発されているのですが、実際生産が間に合ったのは特二式内火艇のみで、更にカミ車自体もほとんどが防衛戦に回され、実際にこれで戦況を変えるどころか、日本側に優位な上陸戦をかける事ですら戦況上ほとんど起こりえませんでした。
2011-09-03 23:51:38