国際法における侵略行為の法的性質 酒井啓亘京大教授(国際法)

自分用のまとめです。勉強になったのでまとめておきます。
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酒井啓亘(Hironobu Sakai) @UtBeneVivas

侵略行為の法的性質とその法的帰結についての備忘録。国際法上の義務の一種に「一般国際法上の強行規範に基づいて発生する義務の重大な違反」(国家責任条文40条1項)がある。義務の性質と違反の程度に特徴あり。

2022-04-01 21:56:13
酒井啓亘(Hironobu Sakai) @UtBeneVivas

強行規範として禁止される行為として、侵略行為、奴隷取引、人種差別、アパルトヘイト、ジェノサイド。これらはウィーン条約法条約53条との関連で。拷問禁止、国際人道法の基本原則、自決権も強行規範とされることも。網羅的ではないことに注意。

2022-04-01 21:56:44
酒井啓亘(Hironobu Sakai) @UtBeneVivas

これら規範の重要な法的帰結は、「いかなる国も、(この)重大な違反によりもたらされた状態を合法的なものとして承認してはなら」ないこと。その状態を維持するために支援・援助もしてはならない(国家責任条文40条2項)。国際社会全体による集団的な不承認が求められているということ。

2022-04-01 21:57:11
酒井啓亘(Hironobu Sakai) @UtBeneVivas

イラクによるクウェート侵攻とその後の併合に対して安保理決議662(1990年)は法的拘束力をもって「法上無効」に。南ローデシアの人種差別、南アのバンツースタン計画も、総会や安保理で集団的不承認の対象に。国際法規則はこうした経緯を経て徐々に発展してきたことに留意すべき。

2022-04-01 21:57:39
酒井啓亘(Hironobu Sakai) @UtBeneVivas

ロシアのウクライナ侵略によって生じるいかなる効果も国際法上無効のはず。ウクライナ領内のロシアの占領地域がウクライナ領でなくなることは、国際法の観点からはあってはならないこと。しかもロシアの侵略という違法行為は、ウクライナに対してだけでなく、国際社会全体に対して向けられたもの。

2022-04-01 21:58:46
酒井啓亘(Hironobu Sakai) @UtBeneVivas

しかしロシアとウクライナが両国間の「平和」のためにロシアの占領地がロシア領になったり、2つの「人民共和国」が独立することが認められた場合、国際社会はいかに対応するのか。侵略国が利益を得ても座視することに。ここには国家間の合意が強行規範の義務さえも実質的に効力を失わせる契機がある。

2022-04-01 21:59:49