生首シャと暮らすウィ
『リアム、案外ロマンチストなとこあるよな』「数学者や、……科学者も。ロマンチストなものじゃないかい?」『ハ、そうかもな』 微笑む金髪の麗人。そのピジョンブラッドが映したつもりの紺碧は、そこには存在しない。テーブルには黄色い薔薇が2本飾られた花瓶と、その場にそぐわぬ髑髏がひとつ――
2023-02-17 18:12:42生首シャと暮らすウィなんですけど、一緒に抱きしめて眠っているのですがシャは(当然)冷たいので温めたくてぎゅうぎゅうと抱きしめるウィと「リアム、苦しいって。んなに抱きしめなくても逃げねぇよ」と笑うシャ(幻覚)がいてほしい。「君が冷たいから」「リアムがあったけぇんだよ」
2023-04-23 20:13:00幾度目かの発狂の際、いつもは黙っているシャが「リアム」と呼ぶからびくりと肩を震わせるウィ。「もういいんじゃねぇか?」と言われて首を振り「ごめん、なんでもない、なんでもないんだ……大丈夫……」とシャの首を抱きしめる、終焉まであと少しの二人
2023-04-23 20:18:23生首シャと暮らすウィの話なんですけど、テムズに共に落ちたあとふとウィの意識が浮上して咳き込んで泥水を吐き出したあと痛みと眩暈の中ようやくはっきりしてきた視界にシャの顔が映って「ッ、シャ一……」と声をかけようとした時に気付いてしまうんですよね。彼の身体がどこにも見当たらないことに。
2024-03-24 18:32:54彼の頭部だけが、そこにごろりと転がっている。信じられない。信じたくない。絶望に霞む視界で見渡せば、もしかしたら彼の一部だったかもしれない残骸が見えた気もした。遠くから人の声と足音が聞こえる。ヤードだ、と認識してからの行動は早かった。ただ彼を抱いて走った。朧げにそれだけを覚えている
2024-03-24 18:32:55走って。走って走って走って。記憶には残っていないが、頭脳だけは冷静に機能していたのだろう。自らを阻む何もかもを潜り抜けて、気付いた時には森の中にいた。ああ、どうしてこんなところにいるのだったか。思い返しても思い出せない。ただ必死に抱えていたものを見て、ああそうだったと“思い出す”。
2024-03-24 18:32:55君と、シャーロックと、大切な友人と旅に出たのだった。良いところがあれば、そこに腰を落ち着けてもいいかもしれない。期待に胸を膨らませながら彼に問う。 「どこへ行こうか」 そう言う僕に彼はいつもの軽い口調で答える。 『折角海まで越えたんだし、田舎でゆっくりするのもいいんじゃねぇ?』
2024-03-24 18:32:56ああ、同じことを考えている。そんな小さなことに喜んで、僕は僅かに笑みをこぼす。 『やけに嬉しそうじゃん』 こちらも少し笑いながら、揶揄うように告げられるその言葉すら、“友人と会話している”実感を僕に与えてくれた。 「うん、君がいるから」 今度こそ微笑んで告げれば、彼はくく、と笑う。
2024-03-24 18:32:56『リア厶が楽しそうで何より』 「友人とこんなに遠くへ行くなんて、初めてなんだ」 『俺も初めてかもな。ダチと予定も決めずどっか行くのは』 それを聞いて僕は一層笑みを深める。彼と共に“初めて”を経験することが、こんなにも嬉しい。 「これからよろしくね、シャ一リ一」 『んだよ改まって』
2024-03-24 18:32:56そう言って彼は片眉を上げて不思議そうに紺碧を細める。 「うん、何故だろう。なんだか言いたくなったんだ」 その理由は本当に自分でもよくわからなかった。それでも気付けば口から出ていたのだ。それに彼は「そうか」と言って、 『あぁ、よろしくな』 と、楽しそうに笑った。
2024-03-24 18:32:57