2022年4月13日

ゆとり教育はゆとり教育が実施される前に実施されていたという仮説について

少々長いですが面白さは保証します。面白くなかったら埋めてもらっても構いません。
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権田権太郎 @HaJK334

1.「ゆとり教育の失敗はあらゆる調査によって証明されている」こうした一般の認識とは裏腹に、実際にはゆとり教育の影響を測定できる経年比較調査はそれほど多くありません。管見の限り、ゆとり教育の前後に実施され、またその結果が比較可能となっている大規模調査は次の四つです。

2022-04-13 19:55:49
権田権太郎 @HaJK334

2. ①ベネッセによる『学習基本調査』『学習指導基本調査』 ②苅谷剛彦・志水宏吉による大阪を対象とした学力調査(2001・2013) ③OECD・IEAによる国際学力調査(PISA・TIMSS) ④文科省による『教育課程実施状況調査』

2022-04-13 19:56:33
権田権太郎 @HaJK334

3.同時期に、同一の対象に実施されたわけですから、これら四つの調査の結果はそれなりに一貫しています。すなわち①、②、④の調査では、いずれもゆとり教育実施後に学習時間の増加や学力の向上傾向が確認されており、また、PISA調査ではゆとり教育を受けた年数が増加するにつれ得点も増加しています。

2022-04-13 19:57:03
権田権太郎 @HaJK334

4.(PISA調査については以下のまとめを参照してください)これは私が無理な読解をした結果ではなく、いずれの調査においても調査者自らがその改善傾向を認めています。中でも①、②の調査はその結果と解釈が驚く程似通っており、この二つの調査をここでは重点的に説明します。togetter.com/li/1859886

2022-04-13 19:57:25
権田権太郎 @HaJK334

5.まずは①のベネッセ調査です。結果をいきなり示すと、『学習基本調査』ではゆとり教育後に学習時間の増加や学習習慣の改善が確認されており、『学習指導基本調査』ではゆとり教育後に教員の教育観が個性尊重から画一性重視へ、自主性尊重から強制重視へ移行したことが明らかになりました。

2022-04-13 19:57:49
権田権太郎 @HaJK334

6.(特に後者の「教員の教育観」の変化は誰が見ても明らかなほど明らかなので、ここに報告書のリンクを張っておきます。)berd.benesse.jp/berd/center/op…

2022-04-13 19:58:08
権田権太郎 @HaJK334

7.いずれの結果も、一般に信じられている「ゆとり教育」に反した結果のように見えます。調査報告書も「結果は、エキサイティングである」と表現しており、調査者達もこの結果を予測していなかったようです。それでは、彼らはこの結果をどのように解釈したのでしょうか。

2022-04-13 20:01:17
権田権太郎 @HaJK334

8.「ゆとり」から「脱ゆとり」への変化と解釈しました。言っている意味が分からないかもしれませんが、学習基本調査、学習指導基本調査、いずれの報告書においても「2001年がゆとり路線の最盛期であり、2002年度からは確かな学力向上路線にシフトした」という認識が通底しています。

2022-04-13 20:03:10
権田権太郎 @HaJK334

9.もちろん、これは一般の認識とはまるで正反対です。そのため、学習基本調査の記者会見では「これはゆとり教育の成果ではないか」と記者から質問されているのですが、調査代表者である耳塚寛明は特に説明もなく「これは脱ゆとりの結果だ」と返しています。 berd.benesse.jp/berd/center/op…

2022-04-13 20:03:40
権田権太郎 @HaJK334

10.①の説明を終えたので、次は②の大阪学力調査を説明します。この調査は2001年に苅谷剛彦を代表として実施された「苅谷調査」と、苅谷調査のメンバーであった志水宏吉を代表として2013年に実施された「志水調査」の二つに分けられます。

2022-04-13 20:04:25
権田権太郎 @HaJK334

11.まずは前者、刈谷調査はゆとり教育による学力低下、学力格差を実証した調査として死ぬほど引用されてきたのですが、調査年度を見れば分かる通り、これはゆとり教育が実施される前に実施された調査です。

2022-04-13 20:04:49
権田権太郎 @HaJK334

12.それでは何故この調査がゆとり教育と関連付けられるのでしょうか。その答えは報告書の中で苅谷自身が説明しています。少々長いですが引用してみましょう

2022-04-13 20:05:06
権田権太郎 @HaJK334

13.八九年という時点は、子どもの興味・関心、意欲などを重視し、教師は指導者ではなく子どもの支援者であることを強調した「新しい学力観」導入以前の時期にあたる。

2022-04-13 20:05:37
権田権太郎 @HaJK334

14.一方、二〇〇一年は、八九年改訂の指導要領が本格実施された年である九二年以後、十年にわたり新しい学力観に沿った教育が行われ、さらには今回の「総合的な学習の時間」の施行等を含む、現行指導要領の移行期の最終年にあたる。

2022-04-13 20:05:53
権田権太郎 @HaJK334

15.したがって、この二時点間を比べることで、二〇〇二年四月から始まった新指導要領のもとでの教育の問題点を予測することができると考えるのである」(苅谷他, 2002, pp.8-9)。

2022-04-13 20:06:08
権田権太郎 @HaJK334

16.だそうです。要約すると、90年代のゆとり教育を調べることで、それを引き継いだ00年代のゆとり教育の問題点を予測できるというわけです。この考え自体はもっともであり、特に批判する必要もないように思えます。

2022-04-13 20:06:38
権田権太郎 @HaJK334

17.ですがベネッセ調査の結果を思い出してください。あの調査では「ゆとり教育」とはまるで正反対の結果が出ていました。本当に90年代の結果をそのまま00年代に適用して良いのでしょうか。

2022-04-13 20:06:57
権田権太郎 @HaJK334

18.この疑問に答えたのが2013年に実施された「志水調査」です。詳細はすっ飛ばして結果だけ説明すると、志水調査では学力の向上と学力格差の縮小が明らかになりました。それではこの結果を志水達はどのように解釈したのでしょうか。

2022-04-13 20:07:21
権田権太郎 @HaJK334

19.話の流れから明らかだと思いますが、そうです、志水達はこれを「00年代の脱ゆとり教育=確かな学力向上路線」の成果だと解釈しました。調査報告書の該当箇所を引用してみましょう。

2022-04-13 20:07:41
権田権太郎 @HaJK334

20.「本書の最大の特徴は、三時点での学力調査の結果を比較したことにある。その三時点は、「ゆとり以前」(一九八九年)→「ゆとり時代」(二〇〇一年)→「ポストゆとり」(二〇十三年)のそれぞれの時期に小・中学校生活を送った子どもたちを対象にしていると、大まかに見積もることができる。

2022-04-13 20:08:22
権田権太郎 @HaJK334

21.つまり、第一回調査はゆとり教育の前の状況を、第二回調査はゆとり教育の影響を、そして今回(第三回)の調査はゆとり教育以降の「確かな学力向上路線」の影響をそれぞれ反映していると見ることができる」(志水他, 2014, p.64)。

2022-04-13 20:08:43
権田権太郎 @HaJK334

22.だそうです。つまり志水もベネッセ調査の調査者達と全く同じ解釈、「90年代のゆとり教育から00年代の脱ゆとり教育(確かな学力向上路線)への転換」という解釈を採用したわけです。

2022-04-13 20:09:14
権田権太郎 @HaJK334

23.ここでようやくタイトル回収です。すなわち「2000年前後に実施された種々の調査は、(一般にゆとり教育だと信じられている00年代の)ゆとり教育が実施される前(の90年代)に(一般にゆとり教育として想像されるような)ゆとり教育が実施されていたことを示唆している」というわけです。

2022-04-13 20:09:39
権田権太郎 @HaJK334

24.他にも社会生活基本調査では96・01年調査が学業時間の底になっていたりと、この仮説を補強する材料は色々あるのですが、ここで一旦終わりにしたいと思います。出典含めさらに詳細を知りたいという方はこの記事を参照してください。hajk334.hatenablog.jp/entry/2019/12/…

2022-04-13 20:10:07

コメント

makoto suzuki @mako0307 2022年4月14日
実際のゆとり教育は狭間世代から始まってる
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