デストラクティヴ・コード ＃9

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ！」ヴァインの写身は鎌めいた異様な武器を生み出し、サツバツナイトを斬りつけた。サツバツナイトは瞬間的なカラテ解放で鎌を弾き返し、写身の顔面を殴りつけた。「グワーッ！」写身が分解し、黒山羊がわかれる。サツバツナイトはそれらを蹴り壊し、踏み潰した。　23

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「イヤーッ！」「イヤーッ！」メイヘムとニンジャスレイヤーは互いの打撃を打ち合わせ、タタミ三枚の距離に離れた。メイヘムは首筋に指を当てた。「首を洗って待て、獣よ」そして指を横に引いた。「貴様を狩り、次にアヴァリスだ」黒山羊が蠢き、新たな写身が生ずる中、彼女はビルから飛び降りた。　24

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「イヤーッ！」「グワーッ！」「イヤーッ！」「グワーッ！」ヴァインの写身を、ニンジャスレイヤーとサツバツナイトはカラテで破壊した。破壊されるたび、影は徐々に不完全なものとなっていった。「「……イヤーッ！」」「グワーッ！」最後の写身を破砕した時、周囲のネオサイタマは緑だった。 25

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「ニンジャスレイヤー＝サン」サツバツナイトは懐に手を入れ、フロシキに包まれた品を取り出した。そうする間も、第三の目は凶悪に存在し、彼を支配しようと力を発揮し続けていた。ニンジャスレイヤーはサツバツナイトに向かい合った。サツバツナイトはフロシキ包みを差し出した。「これを……！」26

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「……！」ニンジャスレイヤーはフロシキ包みを受け取った。サツバツナイトは震え、後ずさった。「すまぬ、ニンジャスレイヤー＝サン。オヌシを煩わす事なく、このままカリュドーンの全てを阻止できれば一番良かった。だが……！」スウーッ。ハアーッ。サツバツナイトは深く呼吸し、呪いに耐えた。　27

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「アヴァリス……アヴァリスはマガタマを手中に収めた。サツガイ……そしてカツ・ワンソーに通じる力の道を。奴を滅ぼさねばならぬ」「……ああ」二者は互いを見た。「私はオヌシを信じる。仮に私が狩人となってオヌシと戦う事になったとしても……オヌシとナラクならば……状況を打開できる筈だ」　28

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サツバツナイトは後退りした。彼は呼吸を深め、黒橙の眼光を明滅させた。やがて彼は身を翻し、屋上から飛び降りて、消えた。……ゴーン。ゴーン。鐘の音が鳴り続ける。ニンジャスレイヤーの頭上にはキンカク・テンプルが照り輝き、01ノイズの風が吹く。周囲には緑。命を埋め尽くす死んだ緑だった。　29

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「……！」ニンジャスレイヤーは包を抱え、握りしめた拳を震わせた。だが数呼吸後、その目に訝しさの色が差した。この屋上に緑がない理由を彼は直感する。ブラックティアーズの爆発四散痕に、新たなオリガミが生じている。次に彼はビルの縁に走り、ユメリンゴ交差点の方向を見下ろす。「 ……！」　30

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次に彼はポンポン・ビルディングを見通す。あるいは廃遊園地方向。「……！」ニンジャスレイヤーは頭を押さえ、膝をついた。混乱した彼のニューロンに、オリガミが空気を揺らし、荒れ狂う緑を抑え込むビジョンが混線してきた。そしてそれぞれのオリガミが、周辺の人々の自我の存在を伝えてきた。　31

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ニンジャスレイヤーは呻いた。目鼻から赤黒い血が流れ、燃えた。このままでは狂ってしまう。「スウーッ……フウーッ……」彼は必死で呼吸し、内なるナラクの黒炎を全身に流し込んだ。そして開け放たれた感受性を塞いだ。「……オイ！平気かよ……アンタ！？」横を見ると、ザナドゥが居た。　32

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「急に居なくなっちまうもんだから……つうか、それどころじゃねえよ。街が！」「ああ」「どうする」「……ここを離れる……」「た、立てるか」ザナドゥはニンジャスレイヤーに肩を貸した。そして息を呑んだ。ニンジャスレイヤーは視線を追った。そこには現実離れした美形の男……シナリィが居た。　33

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「なんと嘆かわしいことか」シナリイは地上のネオサイタマを眺め、嘆息した。「儀式は恙無く進行し、その過程で、ダークカラテエンパイアは始祖の影を顕現せしむ。だがこれとて、マッポーカリプスの時代を俯瞰すれば、その始まりに過ぎないでしょう」「何をしに来た」「労いと確認です、戦士よ」　34

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ニンジャスレイヤーに肩を貸すザナドゥの鼓動が早まる。古代リアルニンジャのアトモスフィアに気圧されているのだ。シナリイは冷たい一瞥を投げた後、言った。「おわかりでしょうが、この緑はこの世ならぬ緑。生命を害する力です。無秩序の極みの行き着く果ては無意味と停滞。秩序も混沌も大差なし」35

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彼は屋上に出現した新たなオリガミを見た。「しかるに、時は満ちつつある。現世とオヒガンが重なり合う時です。貴殿はイクサの過程でオリガミを生み出し続けている。しかるにSoH（セプクオブハラキリ）を用いる時が近づいているという事です」シナリイは目を細めた。「今もお持ちだ。安心しました」36

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言葉を挟もうとするニンジャスレイヤーに被せるように、シナリイは語気を強めた。「セプクの時は近い。見よ。空より我らを見下ろす忌まわしき光を。必ずや黄金の刃を以て、ダークカラテエンパイアに滅びをもたらすべし」「貴様の指示など……」「裏腹に貴殿はSoHを捨てていない。正しき判断だ」　37

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シナリイは緑の覆うビル群を見渡した。「どのみちこの貪婪の都の営みも、こうなれば死んだも同然。ならば贄とするに支障もあるまい。都市を犠牲にこの世を救いなさい。ニンジャスレイヤー＝サン」「オイ」新たな声にシナリイは眉根を寄せた。彼の視線の先、フクロウが降り立ち、長髪の男に変わった。38

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「これは……"フィルギア"＝サン」シナリイは扇子で口元を隠し、フィルギアを見た。「今さら何用か？もはやこの状況はとうにそなたの手を離れておろうに……」「黙れよ」フィルギアがシナリイを見る目には敵意がこもっていた。シナリイはそれを感じ取り、呆れたように、やや悲しげに笑った。39

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「こいつはお前の都合のいい道具じゃないンだよ」「アナヤ。ぶしつけな」シナリイは嘆息した。「決断できぬ者は無力。それはニンジャスレイヤー＝サンもわかっている事。犠牲なくばダークカラテエンパイアを滅ぼす事は……」「イヤーッ！」ニンジャスレイヤーはシナリイにチョップを振り下ろした！　40

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ニンジャスレイヤーのえぐるようなチョップは足元のコンクリートをすら砕いていた。（ゆめゆめ忘るべからず……ニンジャスレイヤー＝サン）血の痕と寂しげな笑みを残し、シナリイは蜃気楼じみて姿を消した。一瞬にして間合いを詰めたニンジャスレイヤーの後ろで、ザナドゥは尻餅をついていた。　41

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「クソ野郎」フィルギアは呟いた。ニンジャスレイヤーはフィルギアを見た。そして言った。「おれの生み出したオリガミが、このクソッタレ緑の、何かを抑えている。それがわかる」「……オリガミか」「どうしてこんな事になっているかはわからんが、潰す相手はわかる」　42

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ニンジャスレイヤーはフロシキ包みを振った。「サツバツナイト＝サンが残した。どうやってか、奴はカリュドーンの狩人として入り込み、探りを入れていたようだ」「みたいだな」フィルギアは知らぬわけではないようだった。「まあ、お前の言った通りさ。やる事は決まってる……戦うしかねえ」「ああ」43

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「それで、こいつは？」フィルギアは腰を抜かしたままのザナドゥを示した。「ニンジャみたいだけど」「関係ない」ニンジャスレイヤーは首を振った。「いいヤツだ」「アー……」ザナドゥは頭を掻いた。ニンジャスレイヤーはこめかみに触れ、タキに呼びかけた。「居るか。面倒があった。今から行く」　44

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タキの喚き声がニューロンに返ってくる。ニンジャスレイヤーはその場で数度跳ね、身体感覚を確かめた。それから彼は屋上に静止する赤黒のオリガミに近づいた。己が新たに生み出したものに。彼は無言で、それに触れた。異色の空に浮かぶキンカク・テンプルは太陽のように眩しく、緑の都市を照らす。　45

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シーズン４第５話【デストラクティヴ・コード】終 第６話に続く