シン・ウルトラマンは特撮のマッチョイズムとセクハラ問題が詰まっている?

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シネマンドレイク @cinemandrake

【感想記事 書きました】難しいことを考えずに、なんか大予算で「ウルトラマン」の新作映画が作られる…くらいに思っていれば良いです。感想では、国際政治劇や科学の描き方、特撮におけるマッチョイズムなどの不満点をダラダラと語ってます。 『シン・ウルトラマン』感想 ↓ cinemandrake.com/shin-ultraman

2022-05-14 07:01:00
リンク シネマンドレイク:映画感想&レビュー 『シン・ウルトラマン』感想(ネタバレ)…私の好きな言葉です 私の好きな言葉です…映画『シン・ウルトラマン』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。原題:シン・ウルトラマン製作国:日本(2022年)日本公開日:2022年5月13日監督:樋口真嗣性暴力描写(セク 1
シネマンドレイク @cinemandrake

映画の感想において「俺だけがこの作品を批判していい。他の奴らがこの作品を批判しているのはムカつく」という感情は、まさしく支配欲によるマッチョイズムなので、それって映画愛でも何でもなくて、ただただヤバイ有害な思考ってことです。

2022-05-17 21:00:03

まあ、あまり難しいことを考えずに、なんか大予算かつ豪華俳優陣で「ウルトラマン」の新作映画が作られる…くらいに思っていれば良いと思います。オタクたちはあれこれ考察に話を咲かせてざわざわしているでしょうけど気にしないで。前知識とか何も要りませんから。スペシウム光線をぶちかます迫力の映像を見るだけでもいいです。

当然、本作は「ウルトラマン」に対する熱量がどれくらいあるかで感想も全然変わってくると思います。ちなみに私は『ウルトラQ』と『ウルトラマン(初代)』が一番好きな人間で、こういう特撮で育ったタイプです。最近の「ウルトラマン」としては2020年の『ウルトラマンZ』なら観てます(セブンガーのあれね)。「初代ウルトラマン」の怪獣なら「ガヴァドン」が好きです!(別に聞いていない)

よくわからん概念も連発して、ほぼ『エヴァンゲリオン』でした。「セカンドインパクト」でも引き起こすのかと思った…。

結果、オタクのための『シン・ウルトラマン』という立ち位置であり、あまり「ウルトラマン」になじみのない人がここから入るにはやや難度の高い世界観に一本の映画内で振り切ってしまった感じもあるかな。

ウルトラマンは幼稚?

ここからは『シン・ウルトラマン』の個人的な不満点を挙げていきます(見たくなかったら引き返してください)。

最大の「どうなんだ?」ポイントは政治社会風刺を入れている点です。『シン・ゴジラ』ならわかるのです。なぜなら「ゴジラ」は初期作はその要素が非常に濃く、その政治社会風刺をメインに据えること自体が原点回帰を意味するので。ゴジラと国が対比する意義も理解できる。ただ「ウルトラマン」でそれをやるのはどうなんだ?と。

「ウルトラマン」って多少の社会風刺要素があったエピソードは初期もありましたけど、全体としては「怪獣プロレス」に固定化したエンタメであり、とりあえず取っ組み合う作品です。取っ組み合いする以上、幼稚さは避けられないし、その幼稚さを楽しむ作品ですから。あまり社会風刺に向いている作品ではないと思います。

しかし、『シン・ウルトラマン』は序盤から政治劇、しかも今回は国際社会から視線を浴びる日本政府の立ち振る舞いを描き出します。正直、このグローバルな描き方は“庵野秀明”はすごい苦手というか単に不得意なんじゃないかと思ったり。ただでさえ『シン・ゴジラ』のときだってあの“石原さとみ”演じる米国大統領特使のキャラは海外からは「なんだこれ」と冷笑されていたのに、私も『シン・ゴジラ』内だけでひとりのキャラなら許容はできましたけど、今回の『シン・ウルトラマン』は「なんだこれ」な国際政治劇が多すぎたかな…。核兵器の件とかも無理にねじこまなくてもいいだろうし、あと日本が米国に軍事上で関心を持たれているのはあくまでロシアや中国に近いからであるのであって、禍威獣が現れる程度なら「大変ですね、ま、頑張れ」くらいにしか思われないと思う…。

権力を美化?

また、ことさら気になるのは『名探偵コナン』とかでもこの傾向があるのですけど「公安」がやたらとかっこよく描かれがちということ。作り手の無頓着な権力美化がエンタメに混入するのはなんだか…。

今作はシミュレーション的な面白さがあったのは序盤だけで、後は作り手の妄想が前に出まくっていて考証がおざなりだったのではないか…。

禍特対の、とくに研究者側の描写も雑だったなと思います。『シン・ゴジラ』はその場しのぎの招集だったのでまだわかるのですが、今回は腰を据えて設立されたはずの組織なのにあの薄っぺらい研究者編成は何なのか。いまどき鹿の研究だって5人以上の研究分野バラバラの者が結集して取り組んだりするのに…禍威獣相手に研究者2人なのか…。チーム映画の醍醐味もこれじゃああったものじゃない。

終盤の滝明久の活躍のくだりも私はリアリティのなさに冷めていた部分が大きかったです。まさかのマルチバース設定が飛び出す中で、未知の技術の解明なんて国際的な叡智を集めてもどれだけかかるか…。ここはコロナ禍の風刺ととるかもしれないですけど、ワクチン開発なんて数十年規模で懸命に取り組み続けた結果、皆がワクチン打てるようになっているんですよ。ちょっと研究者を集めて議論したらワクチンができたわけではないです(『アンソニー・ファウチ パンデミックとの闘い』を参照)。空想科学なのに、科学の描写が安易すぎる…。

リンク シネマンドレイク:映画感想&レビュー 『アンソニー・ファウチ パンデミックとの闘い』感想(ネタバレ)…ドキュメンタリーで知る あの人の実績を知っていますか?…ドキュメンタリー映画『アンソニー・ファウチ パンデミックとの闘い』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。原題:Fauci製作国:アメリカ(2021年)日本では劇場未公開: 1 user

特撮におけるマッチョイズム

“長澤まさみ”演じる浅見というキャラにいたってはそもそもこの作品に要る意味あったのかという疑問さえ感じる…。分析官のくせにあんな雑な報告書を書く奴は、大学でも企業でも論外だし、ましてやお役所仕事の政府なんて話にならないでしょうに。後述する“消費”のためにしか配置されていないんじゃないか…。

『シン・ウルトラマン』のもうひとつの残念な点は、特撮におけるマッチョイズムという構造への自己批判がなかったことです。

日本の特撮映画はだいたいがマッチョイズムな構造を抱えています。「ウルトラマン」でも「ゴジラ」でも「戦隊モノ」でも同じ。取っ組み合いをするので、どうしたってそうです。

今作のウルトラマンは神永新二の命を殺めたことに自責の念を感じて「そんなに人間を好きになったのか」と言われるほどに地球や人間に愛着を見せます。かといって非暴力でもない。このへんの行動心理にそんな辻褄はないです(もともと「ウルトラマン」ってそれくらいに緩い作品だと思います)。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』でも思いましたけど、“庵野秀明”シナリオはマッチョイズムに苦しむ主人公はだすけどそこから脱却はしきれないままユルっと“良い話”風に幕を閉じる傾向にある気がする…。

それだけならまだマシなのですが、今作はこのマッチョイズムをこともあろうか露悪的に増幅させた余計な行為があって…。それが本作の、とくに“長澤まさみ”演じる浅見絡みで隋所に「male gaze」ならぬ「”ossan” gaze」な消費の側面が目立っているという部分。ケツを叩くことで気合いを入れるなんて、今は日本のオッサン文化の中だけですよ(女性が女性や男性に対してそれをやってもセクハラです)。そういう描写を一切入れるなと言いたいわけではなく、その描写を作品内でどう扱うのかという問題です(例えば悪人がハラスメントをするのは描写として筋が通るけど、禍特対がそれをやったらその程度のお粗末な組織ってことにしかならないでしょう)。

ちなみに念のために言っておきますけど、初期の「ウルトラマン」にこんな側面は基本はないですから、古い作品の体質がそのままでたわけではなく、明らかに今作の作り手が加えた調味料の問題ですよ。「ウルトラマン」の原点を汚したと言われても文句言えないです。

gg @ggsalam

シン・ウルトラマンのセクハラ描写、「昭和の価値観をアップデートできていない」というニュアンスの批判を見かけたけど、まず初代ウルトラマンにあんな感じのセクハラ描写はないので、アップデートできていないというか令和になって退化しています。

2022-05-15 20:58:51
gg @ggsalam

シン・ウルトラマンのセクハラ描写とセクハラアングルは、脚本・監督のどちらの指示によるものかは不明だけど、いずれにしろ最終的にあの形で世に出したのなら両者同罪だし、初代ウルトラマンに対する冒涜だと感じる。 くれぐれも「やっぱり昭和は〜」みたいな初代下げにはならないでほしい。

2022-05-15 23:50:14
gg @ggsalam

ちなみにシン・ウルトラマンのセクハラ関係以外のところはもうめちゃくちゃ大好きだったし、特に中盤の戦闘シーンは音楽も相まって、心の中でずっと叫んでいた。 それほど初代ウルトラマンに対する愛も強く感じた作品だったから、一方で愛のない演出やアングルに対しては激しい憤りと悔しさを覚えた。

2022-05-16 00:03:35