「ボカロ道」
度重なるコメ荒らし・タグ荒らしの犯人が同期のスズキ(仮名)だったことを突き止めたふたり。「だって、悔しかったんだ!金も職もある、かわいい彼女もいるこの僕が、ボカロに関しては底辺だなんて!」号泣するスズキ(仮名)。なあ、こいつ刺してもいいか?目で問う坊家。頷く才野。 #ボカロ道
2011-09-20 00:37:57「どう聴いてもこれ○○○っぽいだろう」「コメント書き込んじまおうぜ」ヤケ酒の勢いでキーボードに手をかけた才野。その瞬間、才野が椅子ごともんどり打って倒れた。坊家が顔を上げたその先に、鬼の形相の先輩Pがいた。「…伸びないからって…俺と同じ穴に…落ちるんじゃねえっ…!!」 #ボカロ道
2011-09-20 00:41:33DTMソフト売り場にやってきた二人。俺たちは別のボカロなら爆伸びするはずというのが、昨日の結論だった。陳列棚のソフトを手に取っては戻すこと数十回、ついに次のボカロが決まった。「じゃあこれ頼む」「えっ」「オレ金ないから」「俺も」「えっ」店員の声だけが響きわたるフロア。 #ボカロ道
2011-09-20 00:57:29「知ってるか?◯◯Pって女らしいぞ!?」「学生らしいな。ショートカットが可愛い子だ」部屋に飛び込んできた坊家にDAWから振り向きもせずに答える才野。「なんで知ってる」「こないだ遊んだ」そろそろ音楽性の違いってヤツの登場か・・・と真剣に考え始める坊家。 #ボカロ道
2011-09-20 01:03:00歌詞が決まらず頭を抱えて床を転げ回る二人。それを見ていた先輩Pがポツリと言った。「…物語を綴るか恋が終わるか人が死ぬか世界が終わりゃあいいんじゃねえの」二人がハッとして彼を見ると、先輩Pは寂しげな表情でそっと視線を逸らし、火を点けたばかりのタバコをもみ消した。 #ボカロ道
2011-09-20 01:16:14「敵情視察だからな」「無論だ」ボーマスにやってきた二人。「一通り試聴したら、ここで落ち合おう」「ああ」小一時間後。「お前、その荷物の量は何だ」「貴様こそ」二人の手提げ袋には、薄い本がみっちりと詰められていた。 #ボカロ道
2011-09-20 01:24:47「坊家くん!またキミか!」店長の叱責に首をすくめる坊家。ヤツらは知っちゃいないのさ、普段はさえないこのオレがホントはボカロPだってことを。坊家はうつむいたままそっと笑うが、彼のP名は界隈でもほとんど知る者はない。 #ボカロ道
2011-09-20 01:35:22「今さらP名なんて要らねえよな、このパッチワークPとか何様だよ超だせえ」坊家がそう言うと、才野は「…ああ」と気のない返事を返した。坊家は知らない、才野が毎晩「ぼくのかんがえたさいきょうのP名」をノートに記していることを。 #ボカロ道
2011-09-20 02:07:00「パーちゃん久しぶりー痩せたねー」某音楽教室以来の幼なじみのイケダ(仮名)が無邪気に笑う。彼女にはボカロP活動は秘密だ。「知ってる?ボカロとニコニコ動画って。私、自分の曲をアップしたら10万再生超えちゃったの!びっくり!」才野のコーヒーカップを持つ手がピクリと震えた。 #ボカロ道
2011-09-20 20:22:43「やったー有名Pにリミックスされたぞこれは曲が認められたも同然」二人は手を叩いて喜んだけれどその動画に寄せられたコメントは「リミックスのほうがいいね」 #ボカロ道
2011-09-20 19:59:49「あの人が引退したぞ!」ドアを乱暴に開けた坊家に、才野は「…知ってるよ」と呟いて充血した目を向けた。「ちくしょう、何で」「本人の決断だ、仕方ない」絞り出すような声と嗚咽が入り混じる。涙も枯れた頃、二人は新たな誓いをたてるのだった。「俺らの曲をあの人に聴いてもらうんだ」 #ボカロ道
2011-09-20 19:27:07真っ黒な炭と化したドキワ荘を前に住人は立ち尽くす。僕ら初の殿堂入りを祝した闇鍋パーティーが原因だ。「なに暗い顔してんスか!僕らには歌がある、仲間がいるでしょ!」才野が大声を出す。「オレ弁護士の知人がいるんス!みんなの貯金を集めて・・・」こいつだけは生き残る、そう思う。 #ボカロ道
2011-09-20 20:46:19