お月見泥棒（馬頭と女子高生6）

燦月夜宵 @iolite_N

「御月見泥棒って、知ってるか」バズに言われて、私は別の市に住んでる友達の話を思い出してた。「えっと……玄関にお菓子沢山置いといて、子供達が勝手に持ってく……アレ？」「そう、あれ」「此処はやってないじゃん」「今まではな」「あのー、話が読めないんですけど」「今夜は此処でも泥棒するぞ」

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俺がな。そう言って、バズさんはにっと笑った。いやいや、あれって子供がするって聞いたから。て言うか、今までってどういう意味かさっぱり分からないんですけど。とにかく気になって、とりあえず親に聞いてみることにした。「ねえ、ここってお月見泥棒するの」「ああ、そういえば今年か」

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「え、何？なんかあるの？」「何年かに一度な、見えない何かがお月見泥棒してくんさ。無ければないで素通りしていくけど、あると受験で合格したりとかなんかいいことが起こるんだと」「へええ……で、誰が持ってくの」「知らん」お前なら見えるんじゃないのか？そう言われて、私は何も言えなかった。

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今年は欲しい幸福とかなかったけども、お月見泥棒がどんなのか見たかったから玄関にお菓子を置いておこうかと考えた。だけど、それは甘いとすぐに母さんに指摘された。「なんで！？」「お月見泥棒のお菓子をきらすと変なことが起きるのよ、すっごい困るとかじゃないんだけどね……」

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時計が全部止まったりだとか、カレンダーが全部逆さまだったりとか、雨戸が全部閉まってたりだとか。悪戯にしては少し規模が大きく、嫌がらせにしては地味過ぎる。「実家でやったことあるんだけど……お菓子が一晩足りなくってね、翌朝起きたら家の電球全部切れてたの！」

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「うわー、地味い……」「地味だけど困るのよー」「サツキ、それでもやるか？」そう言われて、私は悩んだ。翌朝学校の時にゴタゴタに巻き込まれるのは嫌だ……けど！「見たい！」「なら今年はお菓子大量にいるわねぇ」「何キロいるだろうな」「……本当にそんなにいるの？」

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「お月見泥棒のお菓子？　そんなにいらないぞ」これは、その後に聞いたバズさんのお言葉。いらないの？いるの？どっちなの！？「あった方が喜ばれるって話さ、無いから腹いせにされんだな。」「つまり……袋入りのキャンディをばらまいとけばいいってこと？」「そう、量より数。うまい具合にさ」

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十五夜当日。買い込んできた飴を盆に並べて玄関に置いておく、一晩中開けっ放し。明日はお休み、私も出来るだけ一緒に側にいる。「って……なんでバズさんが来るの！」「俺も一緒にお月見泥棒やろうかと」「えー……」「お前も逆に会いに行けばいいやろ」「はい？」「よし、行くか」

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そして私は巾着に飴を詰めこまされ、何やら白いパーカー付きのマントを渡される。「なにこれ」「お月見泥棒の服」「衣装あるの！？」「可愛いやろ？」「バズさんが着ても可愛くない……」