では、少々どころではない工夫があれば、どうだったでしょうか?──「鬼はよく燃えているか」論

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  • 「鬼はよく燃えているか」(作・佐藤 宮)ハルタ91号(2022年2月)掲載 - Togetter https://archive.ph/uod7B

 

2022/07/26

では、少々どころではない工夫があれば、どうだったでしょうか?

安眠練炭 @aNmiNreNtaN

鬼はよく燃えているか」(作・佐藤 宮)ハルタ91号(2022年2月)掲載 togetter.com/li/1921401 いろいろとネタ元とは異なる工夫があるのですが、トリックのインパクトが強いだけに、少々の工夫ではどうにもならないのでしょうね。では、少々どころではない工夫があれば、どうだったでしょうか?

2022-07-26 17:57:10
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

「少々どころではない工夫」というのは、(単なる思いつきで、実行できるかどうかはわかりませんが)、たとえば、作中ではトリックを明かさず、ネタ元の某有名ミステリを知っている人だけがわかるような描きそう方にする、とか。それなら、これほど非難されることはなかったでしょう。

2022-07-26 18:03:45
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

あるいは、トリックはそのままで、トリックで捻出(?)された人物が犯人ではないという捻りを加えるという手もありますね。ちょっと複雑になりすぎて規定の枚数に収まらないかもしれないし、真犯人の動機をどうするか、という問題もあるので、やっぱり実行不可能かもしれませんが。

2022-07-26 18:06:32

 

安眠練炭 @aNmiNreNtaN

ところで、「鬼は燃えているか」の工夫について。このトリックのネタ元の某有名ミステリは今から40年以上前の作品ですが、当時の日本でも既にこのトリックは成立しなくなっていたので、件のミステリではトリックが使われたのは戦前のこととされています。

2022-07-26 18:16:01
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

その後、このトリックは某マンガで使用されて問題になりました。いちおう現代でも成立するように考えられてはいるのですが、あまり工夫が凝らされているとは思えない仕方で、某有名ミステリを知っている人にとってはバレバレだったのです。

2022-07-26 18:18:36
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

鬼は燃えているか」では、暴力団関係者の間での連続殺人事件という設定にすることで、現在の日本では成立しにくいトリックを成立せしめています。これもかなり無理っぽいのですが、マンガ的リアリティのもとでは許容範囲でしょう。

2022-07-26 18:24:48
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

ただ、やはり某有名ミステリを読んでいる人が「鬼は燃えているか」を読めば、トリックに気づいてしまいます。それほど、このトリックは強烈なのです。元ネタを知っている人をも騙しきるというのは難しいものです。「少々の工夫ではどうしようもない」と書いたのは、その意味です。

2022-07-26 18:26:47

 
「謎めいて恋」(佐藤宮)

安眠練炭 @aNmiNreNtaN

ところで、同じ作者の「謎めいて恋」も、有名なトリックが用いられていますが、こちらはさほど問題視されていません。それはなぜでしょう? ひとつには、「鬼は燃えているか」で用いられたトリックほどにはインパクトが強いわけではないからだと考えられます。

2022-07-26 18:29:29
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

謎めいて恋」で用いられたトリックは、少なくとも前世紀初頭まで遡ることができます。日本では江戸川乱歩、アメリカではM.D.ポースト、フランスではモーリス・ルブランが、それぞれ(おそらく独立に)発案し、ミステリに仕立てました。いちばん最初に発表されたのはポーストの作例のようです。

2022-07-26 18:36:45
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

乱歩ポースト(とルブラン)に先を越されたのが悔しかったようで、先に思いついたのは自分だ、というようなことを書き残していますが、そもそも着想を実話から得たとのことなので、トリックの独自性に拘っても仕方ないようにも思われます。

2022-07-26 18:39:20
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

謎めいて恋」が非難されていない理由として私が思いついたものかもうひとつあります。それは先行する作例とは全くプロットが異なるのです。密室状況が出てくるのは同じですが、そこに屍体はなく、かわりに室内にあるのは焼け焦げた雑誌や将棋盤など。ジャンル分けするなら青春マンガですし。

2022-07-26 18:42:03
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

謎めいて恋」も、予めトリックを知っていれば、「あ、あのトリックが使われたんだな」と容易に気づくので、その意味では少しも弱いのですが、それが気になるというほどでもありません。真正面から謎解きを扱った「鬼は燃えているか」とは違うのです。

2022-07-26 18:44:34
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

あ、すみません。「鬼はよく燃えているか」のタイトルから「よく」が抜けていました。今から全部書き直すのは大変なので、このスレッドで「鬼は燃えているか」と書いてある箇所を読むときは、「鬼は」と「燃えているか」の間に「よく」を心眼で読み込んでください。どうもすみません。

2022-07-26 18:48:25

 
「いつでも笑って」(佐藤宮)

安眠練炭 @aNmiNreNtaN

さて、私は佐藤宮というマンガのことを今日はじめて知ったばかりで、「謎めいて恋」と「鬼はよく燃えているか」以外にどのようなマンガを描いているのかは知りません。ただ、Twitterで検索すると、同姓同名の人物の「いつでも笑って」というマンガがありました。

2022-07-26 18:53:43
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

いつでも笑って」(私はリツイートしない主義なので、興味のある方は各自で探して読んでください)の作者の佐藤宮が、いま話題の佐藤宮と別人の可能性もなくはないのですが、絵柄も似ているし、たぶん同一人物なのだろうと思います。これもトリッキーなアイディアストーリーなのです。

2022-07-26 18:57:03
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

いつでも笑って」で用いられているアイディアにも前例がありますが、誰がいつ最初にこのアイディアを用いたのか特定するのは困難です。私は小松左京のショートショート(タイトルは失念しましたが、平城京を舞台とした歴史ものでした)で初めて知ったのですが、もちろんそれより前からあるネタです。

2022-07-26 18:59:24
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

ですが、「いつでも笑って」は、“そういうアイディアがあるということ”を知っていても最後に驚かされました。「あっ、その手できたかっ!」と驚いて、もう一度最初から読み直すと、ちゃんと伏線が張ってあるのです。迂闊でした。知らずに読めば、「あっ、そんな手があるのかっ!」と驚くことでしょう。

2022-07-26 19:03:06
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

いつでも笑って」が面白かったからといって、「鬼はよく燃えているか」を擁護することにはならないのですが、そこで作者がやらかしてしまった前例のあるトリックの再使用を極悪非道の鬼の所業のように責め立てる気にもなりません。有能なマンガ家の芽を摘むのはあまりにも惜しいことです。

2022-07-26 19:07:36

 
「八つ墓村」とトリック

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