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テンペスト・オブ・メイヘム #2

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

邪悪なるリアルニンジャ達のやり取りに、セトはかすかに注意を向ける。そして当然、カリュドーン儀式の行く末にも。彼の狩人たるブラックティアーズは不測の事態で爆発四散し、新たな狩人の準備は整っていない。セトの並列処理力は神話的なタイピング速度に裏打ちされている。そして、その後方。 17

2022-08-19 22:20:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

オモイ・ニンジャの漠然とした影が、今、小さな、ごく小さな写身の姿を荒野に作り出していた。不可視化のコードを身に纏った小さなナンシー・リンは、セトの後ろ姿を警戒とともに見上げながら、そろそろと動き、大地に楔を打った。研ぎ澄まされたPING行為が、そよ風めいて荒野を揺らした。 18

2022-08-19 22:24:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ソナーじみた彼女のPINGが、セトのすぐ横に「隠されていた」姿の輪郭を、その息遣いを返したとき、彼女は驚愕に思わずうめき声をあげかけた。ここはセトのコトダマ空間だ。だから、いかなる奇怪な存在があったとしても不思議ではない。だが……。「ミイイ」それは……その呪物は、生きていた。 19

2022-08-19 22:27:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

それは緑青がびっしりと生えた、青銅の獣の茶器だった。茶釜じみた物体からは象じみた太い脚が四本生え、荒野を踏みしめている。そして……おお……歪んだ目が始終動き続け、いびつな牙がこすれるたび、電子涎が滴り落ちるのだ。ナンシーは目を見張った。 20

2022-08-19 22:31:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ミーイイー」さながら茶器のデーモンである。セトの足元でそれが足踏みするたび、蓋部分が跳ね、しばしば内部の眩しい光が漏れ出た。ナンシーは驚愕とともにデーモンコアの逸話を想起した。最強のハッカーと言うべきセトの手で、用心深く隠されてきた存在!内部に何らかの力が満たされつつある? 21

2022-08-19 22:34:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『……』その時、セトは腕組みしたまま、突如その首を180度回転させ、背後に注意を向けた!ナンシーは咄嗟にうつ伏せに身を縮め、息を殺す!(見えていない。見えていない。私は見えていない)ナンシーは偽装をリアルタイムで上塗りし続けた。祈るように。セトは片手をかざす。そして……! 22

2022-08-19 22:37:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『ところでセト=サン!つかぬことだが!』ギャラルホルンがセトを呼んだ。セトは首を戻し、ギャラルホルンの石碑を見た。「何だ?」『いや、メイヘム=サンが敗れれば、次はアヴァリス=サンという事になるだろう』「然り」『彼は参戦可能なのかね?重要な問題だ。ヴァイン=サンも今、不明瞭だ』 23

2022-08-19 22:42:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『我がメイヘムは必ず勝つ。そのような想定自体がシツレイであるぞ』『それはあんまりだ!儀式が続く限り、我らは第二第三と狩人をエントリーさせる事ができるのが決まりの筈。勝てる絶対の保証は等しく無く、つまり、敗退済の我らにもチャンスが……』『保証は我だ。我がメイヘムゆえに絶対勝つ』 24

2022-08-19 22:46:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『それはどうか?なにしろ……』『それ以上アイアンコブラ=サンを挑発するな』ケイムショが指摘した。『貴様のその落ち着かぬ軽口は不愉快だ!』『敗者のよしみではないかケイムショ=サン!シャン・ロア=サンも実際ウーガダル=サンを……』「ンンッ!」セトは咳払いし、注意を儀式に集中させた。25

2022-08-19 22:51:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナンシーは偽装の上書きをさらに繰り返し、その身の震えを必死で抑えた。そうする間も、セトの足元では、茶器のデーモンが足踏みし、眼球をギョロギョロと動かしている。この茶器自体が侵入者知覚機能を備えている事は間違いなかった。幸運は二度つづくまい。彼女は脳ニューロンを発火させた。 26

2022-08-19 22:54:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

茶器のデーモンの中身は、オヒガンを通して集められた何らかの力だ。それを溜め込んでいる。恐らくはカリュドーンの進行に伴って、その中身が蓄積されてきた筈。他のリアルニンジャにも秘した目論見。その力の流れ……。(丸裸にしてやるわ)慎重に行く。同時に、大胆に! 27

2022-08-19 23:00:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そしてカスミガセキ・ジグラットを映すヴィジョン!「イヤーッ!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーとメイヘムが再びぶつかり合い、ワン・インチ距離で極速のカラテ応酬を開始すると、アイアンコブラの石碑に電子的な亀裂が生じた。アイアンコブラの実体は、実際、地底深くでカラテを漲らせていた!28

2022-08-19 23:04:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」(よいぞ)「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」(よいぞ我がメイヘム!)獣を狩り、イクサに勝利する!ダークカラテエンパイアの頂点に立ち、ネオサイタマを贄にする!主と狩人の意志は今、強くシンクロしている! 29

2022-08-19 23:07:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アイアンコブラが儀式に直接干渉する事は決してない。愚直。愚直に勝つ。ゆえに勝利すればその結果に異論を挟む余地なく、儀式の契約は強固となり、ダークカラテエンパイアの支配は盤石となる。搦手を差し挟む他のリアルニンジャは近道のようで遠回りをしている。所詮は余興と侮っている。愚かだ。 30

2022-08-19 23:13:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アイアンコブラは今回の「余興」の結果を盾に、実際、帝国を手中に収める腹積もりである。その為の我慢は安上がりである。他の者による横紙破りじみた行いも、疑念の残る参加順オミクジの巡り合わせも、敢えて甘受してきた。負ければ単に残念。いっぽう、完全勝利は絶対の栄光をもたらす。 31

2022-08-19 23:21:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(この労力、安いものだ)地底深くの闇の中、アイアンコブラは重々しく身じろぎし、大地を鳴動させ、その巨体に接続された幾筋ものレリックLANケーブルを光に脈打たせた。(だが、やるからには必勝せよ、我がメイヘムよ。貴様には我がコブラ・カラテの真髄を伝授した。貴様は我だ。貴様は勝つのだ)32

2022-08-19 23:25:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

イクサの中、神話的に高まったアイアンコブラ総帥と戦士メイヘムのニューロンは、ほとんど停止に等しい圧縮主観時間のなか、二者を同じ地平に至らしめた。それはカラテ衝突の瞬間にフラッシュバックする、過去の一時点の記憶である。退廃都市ネオサイタマ、ビジネスビルの地下、コブラ教団! 33

2022-08-19 23:29:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

偽装された教団秘密砦の四方の壁には、くまなく宗教的コブラ彫刻が施され、恐るべきコブラの頭部を象った何百もの穴が開いていた。果たしていかなる機構か、それら壁穴からは甘いアシッド臭を孕んだ黄色の煙が溢れ、黄色の帳が教団ドージョーを包み込んでゆく! 34

2022-08-19 23:33:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

煙!松明!「「「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」」」黒いタタミが敷き詰められ、数十人のモータルが太鼓の音に合わせてカラテトレーニングやザゼンを行っている!「アアー、イイ……」「コブラ……」見よ! 石畳の床に正座する総勢100名の門下生は、既に宗教的興奮によって恍惚状態にある! 35

2022-08-19 23:36:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

祈りの集まる場所に、高さ4メートル、石段状に積まれたザゼン台座があった。そこに今、一人のコブラニンジャの勇士が座していた。彼女が向かう壁には鋼鉄コブラのレリーフが埋め込まれ、柱とシメナワで三方が囲まれて、下賤なモータルが近づけぬよう封印されている。それがアイアンコブラの祭壇だ。36

2022-08-19 23:41:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼女、メイヘムは、毒液満たされし聖水盆で口を濯ぐと、ザゼンを解いてまっすぐに立ち、アイアンコブラのレリーフに深くオジギした。「総帥。狩りの儀式。待ったなしにございます」コブラの目が超自然UNIX明滅し、声が発せられた。『その通りだ。メイヘムよ。即ち、お前が勝利を収める時が来た』 37

2022-08-19 23:44:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アアア……」「ヤーアアー……」恍惚状態の門下生たちは超自然UNIX音声を耳にすると獣じみた呻き声をあげて痙攣した。彼らは皆、ゼゲンの手練手管によって当初わけも分からず集められた者達であり、過酷な責め苦を生き延びた上澄みの者達である。その呻きは邪悪なパイプオルガンの響きめいていた。38

2022-08-19 23:49:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ネオサイタマは一夜にて変わり果てました、総帥。ブラックティアーズ=サンが斃れ、様々なものが乱れました。……儀式は有効なのですね」『神を疑うべからず、娘よ。無論有効だ。セトやヴァインの姑息が実を結ぶ事などなし。混ざり物なきカラテこそが、イクサにおいては唯一の真実だ』 39

2022-08-19 23:52:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」メイヘムは両手首を自身のチョップでかき切り、流れ落ちる血を聖水盆に落とした。毒紫色の水面が血のマーブルを描き、沸騰した。『お前が勝者となる。それが父祖の喜びである!コブラ教団が世界を征服する日は近い!』「ハーッ!」両手を横に突き出しキアイすると、血は止まった! 40

2022-08-19 23:56:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

メイヘムは目を閉じ、溢れんばかりの内なる力に歯を食い縛った。そして力強く目を開くと、世界にはメイヘムとアイアンコブラだけが在った。闇の中で彼女は、多頭の巨大な蛇と対峙した。レリックLANケーブルを体飾りめいて身に纏った途方もなき大蛇……アイアンコブラ総帥……ドクガ・ニンジャと! 41

2022-08-20 00:00:09