すいこばなし【北方謙三水滸伝・楊令伝小噺集】2022/7/1-12/31

すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

柴進「梁山泊の面々でアクションゲームを開発するぞ」 蔣敬「いいですな」 盧俊義「梁山泊入山のPRもできるしな」 柴「林冲や公孫勝らの武術の動きを反映させて、戦場を一騎当千するのだ」 盧「売れない要素がないぞ、柴進」 蔣「一つ聞いていいですか？」 柴「なんだ？」 蔣「私は動かせますか？」

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柴「どういう意味だ、蔣敬？」 蔣「…恥を忍んで申し上げますが」 盧「おう」 蔣「現実では腕も立たず兵站をしていますが」 柴「…」 蔣「せめて、ゲームの中の私は、戦場で一騎当千したいのです！」 盧「言わんとすることはよく分かった、蔣敬」 柴「確かに我らの戦は戦場だけに止まらないからな」

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柴「蔣敬の要望を踏まえ戦に出ない面々も動かせるようにした」 蔣「やった！」 盧「兵站モードだ」 蔣「？」 柴「これもリアルだぞ、蔣敬」 蔣「…」 柴「林冲騎馬隊に兵站を届ける任務は難易度が高い」 盧「李立の実体験をゲーム化した」 蔣「我らはゲームで仕事の追体験をしたいのではありません！」

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柴進…ならばこのモードを林冲にやらせるのはどうだ？ 蔣敬…ぜひやらせましょう！ 盧俊義…遼軍相手の戦場で一騎当千する夢をみた。

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趙安「…」 公順「何を読まれているのですか、趙安殿？」 趙「北水十巻だ」 公「はあ」 趙「すごいことが書いてある」 何信「何が書いてあるのですか？」 趙「呼延灼は晁蓋が好きになったという」 何「それで？」 趙「好きになったから、首を取りたいそうだ」 公「それは」 趙「真意は分かりかねるが」

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趙「お前たちは好きになった敵将の首を取りたいと思うか？」 公「…それはないでしょう」 何「好きになった者の首を取ってどうするのです？」 趙「飾るのではないか？」 公「そんな馬鹿な」 何「趙安殿はどうなのです？」 趙「…悪くない」 公「それは」 趙「呼延灼のリビングに飾られるのならばな…」

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公(なんと言ったらよいのだ) 何「しかし、リビングに飾られていてもそのうち頭骨になってしまうのでは？」 趙「フレッシュマンの首は白骨化せぬ」 公「それはそれで嫌ですね」 趙「逆に私が呼延灼の首を取ればよいのだ」 何「たしかに」 趙「フレッシュマンの供養をして祀ろうと思う」 公「それは？」

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趙安…童貫にも聞いたがそれは無いとキッパリ言われてしまった。 公順…李明にも聞いたがそれはおかしいと真顔で諭されてしまった。 何信…首を取られたら体臭と同じ匂いがするのではないかと、部下に陰口をたまかれている。

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朱富「何を悩んでおられるのですか、兄上」 朱貴「今月の特別魚肉饅頭の味が決まらんのだ」 富「先月の生姜味は売れませんでしたからな」 貴「李俊にいつもの味と大差ないと言われてしまった」 富「こってり味にするのは…」 貴「それだけは死んでもやらん」 富「兄上…」 貴「私の誇りの問題だ、富」

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富「今まで一番売れたあっさり味の饅頭はどれですか？」 貴「いつものやつだ」 富「いつもの魚肉饅頭の餡が究極形なので、もはや手の入れようがないのでは？」 貴「ならばどうすればいいのだ」 富「顧大嫂殿に相談してみましょう」 貴「あのこってり女か」 富「捻り殺されますよ、兄上」

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顧大嫂「こってり味にすればいいじゃないか」 貴「できんと言ったはずだ」 富「魚肉饅頭のことになると頑固ですね、兄上」 顧「料理の幅を広げるのも料理人の仕事だ」 貴「たしかに」 富「こってり味とはどんな味付けですか？」 顧「とりあえず山ほどの大蒜と脂を混ぜればいけるよ！」 貴「安直な…」

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朱貴…顧大嫂の目論見通り、若手の将校や兵に大人気なのが腹立つ。 朱富…調理場が大蒜臭いのに辟易。 顧大嫂…私のあっさり味？冗談はおよしよ。

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史進「…」 朱武「なにを読んでいる史進？」 陳達「流行の春画本か？」 史「遥か西方の国の神に関する書だ」 朱「それは」 史「興味深い一説があってな」 陳「どんな？」 史「塩に塩気がなくなれば、もはやそれは何によって塩味がつけられよう」 朱「ふむ」 史「どうやって塩から塩気をなくすのだ？」

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史「色々試してみるぞ」 朱「塩から塩気を抜くのか？」 陳「しかしどうやって」 楊春「…兄者」 朱「案が浮かんだのか、楊春」 楊「塩から塩気は抜けぬかもしれぬが」 陳「…」 楊「史進から塩気は抜けるのではないか？」 史「それは」 朱「妙案だ、楊春」 陳「早速史進の食事から塩分を抜くとしよう」

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史「」 陳「すっかり干からびたな史進」 朱「これが塩から塩気が抜けた塩か」 史「塩ではない。史進だ」 楊「まだまだ抜けるのではないか」 史「なぜお前らそんな塩対応なのだ」 朱「対応からも塩気を抜かんといかんか」 史「しまった」 陳「甘やかすのも違うな」 楊「無視しようか、兄者」 史「待て」

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史進…少華山破廉恥の禁を破りに破ってこの有様。 朱武…そろそろ許してやるか？ 陳達…辛口の対応をするのはどうだ？ 楊春…少華山の風紀委員長。下ネタと破廉恥は許さない。

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呂牛「聞煥章」 聞煥章「ちょうどよかった。仕事を頼む」 呂「…」 聞「地方軍から屯田兵の選抜に、銀山採掘計画のまとめ」 呂「…」 聞「開封府の致死軍、飛竜軍の捕捉と闇塩の道の解明に…」 呂「全てお前の部下の仕事ではないのか？」 聞「お前も私の部下だろう？」 呂「もう一度言ってみろ聞煥章」

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呂「俺は面白いと思った間者の仕事しかしない」 聞「そしたら全て私がやることになってしまうではないか」 呂「だから部下がいるのだろう？」 聞「屯田や鉱山発掘を任せた部下は半年前に病で辞めた」 呂「…」 聞「致死軍や飛竜軍に討たれた部下もいるな」 呂「…」 聞「つまり間抜けしかいないのだ」

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呂「早急に認識を改めろ、聞煥章」 聞「なんの？」 呂「離職率100%ではないか」 聞「！」 呂「おまけに半分が殉職しているのだぞ」 聞「お前が部下なら離職率85%に下がる」 呂「間者の仁義を破って梁山泊に垂れ込むぞ」 聞「待て。部下の査定があったのを忘れていた」 呂「もう誰もいないではないか」

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聞煥章…そんな馬鹿なと部下名簿を確認してみたら、本当に全員辞めるか死んでいるか消息不明だった。 呂牛…聞煥章と手を切る算段を立てておこうと思った。

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史進「儲かる商売を思いついた」 班光「はあ」 史「この国で大人気のキャラクターを作るのだ」 班「ええ」 史「あまりの人気ぶりにありとあらゆる商品のマスコットとして使われるようになる」 班「…」 史「そしてマスコットとして活用したい者は、俺に莫大な使用料を支払って利用するのだ」 班「…」

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史「いけると思わないか？」 班「肝心のキャラクターはできているのですか？」 史「見て驚け！」 班「…」 史「シシシンマウスだ」 班「…なぜ鼠なのですか？」 史「なぜでもだ」 班「シシシンドラゴンではダメですか？」 史「竜は架空の生き物だ」 班「…」 史「鼠ならその辺のを売れば大儲けできる」

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班「どの様に展開するのですか？」 史「まずは近隣の民の認知度を上げるぞ」 班「どうやって？」 史「これを着ろ、班光」 班「嫌です」 史「お前の身体に合わせて採寸したのだから拒否権はない」 班「いつの間に！」 史「シシシンマウスの広大なテーマパークができる未来が見えた」 班「見えません！」

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史進…遊撃隊総出で、調練場の野鼠を捕獲する命令を出した。 班光…シシシンマウスの着ぐるみがフィットしすぎて腹立つ。

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史進「班光。俺は今とてつもないカードを握っている」 班光「はあ」 史「見てくれ」 班「…これは、一体何を印刷されているのですか？」 史「乳首だ」 班「はい？」 史「梁山泊の男たちの乳首をトレーディングカードにしたのだ」 班「…」 史「さまざまな遊びを考案した。遊ぶぞ、班光」 班「嫌です」