僕のものにしてみたかった

うめ @imasugum

「□□ええやん俺のイチオシ」「なんで丈ちゃんが知ってるん」通ってへんやん、てか大学生ちゃうやん、と笑ったら「俺もそこ受けるから」と真っ直ぐな目でわたしを見つめる丈ちゃんと目が合った「…まあ行きたいとこ行くのがいちばんやな」それからすぐ視線をズラすから、 #僕のものにしてみたかった

うめ @imasugum

「わたし□□受ける」「…え？まだ迷ってるって、」「ううん決めた、今決めた」驚く丈ちゃんに、「丈ちゃんと一緒のとこ行きたい」そうハッキリと言えば「………付き合う？俺ら」シャーペンを持ったままのわたしの右手を丈ちゃんが左手でギュッと握ってくれた。#僕のものにしてみたかった

うめ @imasugum

この頃にはもう昼休みに丈ちゃんが友達とサッカーをすることも無かった。昼休みはたまーにやけど、放課後はほぼ毎日、保健室で勉強して、一緒に帰っていた。丈ちゃんと一緒にいることが嬉しくて、受験モードの教室は息が詰まったけどわたしは毎日幸せで #僕のものにしてみたかった

うめ @imasugum

ある日の放課後、丈ちゃんがなかなか保健室に来ないから、丈ちゃんのクラスまで行ってみたけど数人生徒が残っていただけでそこに丈ちゃんはいなくて。もう一度保健室に戻ろうとしたとき、『丈って最近どうしたん？』と、教室に残っていた男子生徒の声が聞こえた。#僕のものにしてみたかった

うめ @imasugum

おもわず足が止まってしまった。『最近彼女とよくおるよな』『やっぱそうなんや』『確かに付き合い悪くなったなあ』教室に残っていたのは丈ちゃんの友達だったんだ。別に丈ちゃんを悪く言われてるわけでも、ましてやわたしのことでもないのに、足がすくんだ #僕のものにしてみたかった

うめ @imasugum

もしかして、丈ちゃんの友達との時間を奪っているのはわたし？それで丈ちゃんが悪く言われてしまってるのなら……この時のわたしはそう思ってしまった、思い込んでしまった。「あ、どこ行ってたんお前」保健室に戻ったら丈ちゃんがいた。#僕のものにしてみたかった

うめ @imasugum

「…丈ちゃんこそ遅かったね」「担任に雑用させられてん」内心上げたるでやれってズルない？そう笑う丈ちゃんはいつもと同じ笑顔。そういえばいつか昼休みに保健室で勉強してた時、外で丈ちゃんの友達がサッカーをしてて「丈ちゃんはもうせえへんの？」と聞いたときがあった #僕のものにしてみたかった

うめ @imasugum

「勉強しなあかんでな」「え、真面目」「悪いんか」「丈ちゃんサッカー楽しそうやったからしたくならへんのかなって思ってた」「まあしたくなるけど」「けど？」「お前おるし」「…わたし？」「…あーーええからお前は俺に英語を教えろ！」「えっ意味わからへん！」#僕のものにしてみたかった

うめ @imasugum

なんて会話をふと思い出した「…丈ちゃんもうサッカーせえへんの？友達と」「えー、もうそんなんしてる場合ちゃうやろ」したいけどなあ、と丈ちゃんは言った。丈ちゃんが友達との時間よりわたしといることを選んでくれているのならすごく嬉しいけど、だけど。#僕のものにしてみたかった

うめ @imasugum

それが原因で丈ちゃんの友達との時間が減るのは辛いと思った。わたしが好きになった丈ちゃんは、友達とサッカーをして笑いあってる丈ちゃんやったから。でもわたしは丈ちゃんが好きで、好きすぎて、丈ちゃんがいないとなんにも出来なくなるのも怖くて。#僕のものにしてみたかった

うめ @imasugum

帰り、丈ちゃんはいつも家まで送ってくれる。「ほなまた明日な。」「うん」「なんか今日元気なかった？体調でも悪い？」ほら、わたしは丈ちゃんのそういう優しさが好きなんだよ。「…そんなことないで」「ならええけど。……まあなんかあったらいつでも連絡して」#僕のものにしてみたかった

うめ @imasugum

でもその優しさに甘えてしまう自分のことは好きになれなかった。そのことに気付いてしまった。その瞬間どうしようもない自己嫌悪に陥ってしまって。「…丈ちゃん」「ん？」「別れよう」「………は？え、なんで、」「…ごめんなさい、」それは、本格的な冬が始まってすぐの頃 #僕のものにしてみたかった

うめ @imasugum

泣いてしまう前にドアを閉めた。丈ちゃんの顔も見なかった。それっきり、保健室にも行かなくなった。丈ちゃんとクラスが離れててよかったと、このとき初めて思った。丈ちゃんから連絡がきても、返さなかった。今思うと、かなり身勝手なことをしたなと心苦しくなる。#僕のものにしてみたかった

うめ @imasugum

一緒に行きたいと決めていた志望大学も変えた。丈ちゃんのことは好きなまま気持ちは変わらない。でも丈ちゃんの時間を奪ってしまうのは怖かった。丈ちゃんがいなくても大丈夫なように、またいつか丈ちゃんと会えた時、もう大丈夫って言えるように、強くなりたかった #僕のものにしてみたかった

うめ @imasugum

だから、そんな自分を変えたくて入ったサークルの活動で丈ちゃんと再会するとは思ってなくて。変わらず接してくれることが嬉しくて。また、甘えてしまっていたと思う。丈ちゃんに好きな子がいることもすぐ気付いたのに、やっぱりわたしはまだ丈ちゃんのことが好きで #僕のものにしてみたかった

うめ @imasugum

もしまた、前みたいにいちばん近くにいれるならとか、そんなことは望んでなかったけど、ただ丈ちゃんとまた帰ったりできることが嬉しかった。そんなとき、「もう一緒に帰ったりできへん」とある日突然、告げられた。それは合同活動中のサークルの帰り道のこと。#僕のものにしてみたかった

うめ @imasugum

そうだよね、と思った。丈ちゃんには仲良い子がいて、きっとその子も丈ちゃんのことが好きで、丈ちゃんもその子のことが絶対好きやから「…うん、わかった、ありがとう」合同のイベントもあと少しで終わる。それが終わったら丈ちゃんと関わることもなくなるから、これが最後 #僕のものにしてみたかった

うめ @imasugum

それから、合同イベントである秋祭りまでほとんど丈ちゃんと話すことは無かった。わたしの勝手な行動で丈ちゃんを振り回したんだから、もう丈ちゃんに迷惑はかけられないと思った。お祭り当日も何も考えないで、自分の持ち場でひたすら仕事をしていた。#僕のものにしてみたかった

うめ @imasugum

午後の部もそろそろ終わる時、椅子を片そうとした瞬間に突然目眩がした。この日はなんだか朝から体調が良くなかった。ああそれが原因かな、と思った時にはもう意識を失っていたようで。目を覚ましたら、わたしは自分の部屋のベッドにいた。#僕のものにしてみたかった

うめ @imasugum

「あれ、なんで…」起き上がって、頭の整理をしていたらガチャ、とドアが開いて「…丈ちゃん、！？」「あ、起きた？調子どう？ごめんトイレ借りた」久しぶりの丈ちゃんの会話のテンポは相変わらず早い、じゃなくて、「……えっと、」「お前貧血で倒れてさ、俺が運んできた」#僕のものにしてみたかった

うめ @imasugum

「起きたときに説明する人おらんかったら焦るやろ」水飲む？と、丈ちゃんはペットボトルを渡してくれた。「…お祭りは？」「終わったで」「…そうなんや」「めっちゃ働いてたみたいやな、○○」「…なんもしてへんよ」「なんでやねん、頑張ってたって龍太くん言うてたで」#僕のものにしてみたかった

うめ @imasugum

久しぶりの丈ちゃんの声に心がギュッとなった。絶対泣いてしまうから顔も見れない。「…え、てか丈ちゃんもお祭り途中で抜けてきたの！？」「まあ、そうなるな」「……うそ、ごめん、ほんまにごめんなさい」迷惑だけは掛けたくなかったのに、最後の最後まで、もう。#僕のものにしてみたかった

うめ @imasugum

「んな謝らんでええわ。俺も疲れててサボりたくなってたとこやったから」ちょうどよかったわ、なんて笑うから、「…丈ちゃん、わたし、丈ちゃんに迷惑かけたくなくて、やからあのとき別れてって言った」涙と一緒にポロポロと出てきた言葉は、きっとずっと言いたかったこと #僕のものにしてみたかった

うめ @imasugum

「丈ちゃんおらんくても大丈夫やって、強くなりたくて、けど丈ちゃんのことはずっと好きやから、また会えて嬉しくて、」頭の中がぐちゃぐちゃで言いたいことがまとまらない。「……あの時、丈ちゃんがわたしとずっと一緒におってくれて幸せやった」#僕のものにしてみたかった

うめ @imasugum

「……けど、あの時も今も、迷惑かけて、やっぱり全然あかんかった、ごめん、丈ちゃ、わ、！？」わたしの言葉を塞ぐかのように、丈ちゃんがわたしを布団ごと押し倒してきて、というか丈ちゃんの手によってわたしの頭から足先までをすっぽりと布団が覆い被さった。 #僕のものにしてみたかった