君の見る景色を全部 #2

ラストです💘
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うめ @imasugum

お祭りが終わってからのサークルは週に1回あるかないかの活動に戻って、わたしはほとんど行かなくなっていた。それをまとくんもリチャもすえも、なんにも言ってこなくて、けど会ったら変わらずに声をかけてくれて、それが嬉しくて、それと同時に申し訳なかった。#君の見る景色を全部

2020-03-11 23:42:07
うめ @imasugum

「なあ今日飲みにいこ!末澤が奢ってくれるって!」「ちょまとくん!俺そんなん言うてへんし!けど飲みにいこ!」「飲みに行くんかい」3人の掛け合いにいつも助けられる。「仲ええなあ」って笑ったら「お前もやろ」って肩組んでくるまとくんは、たま〜に丈のことを話してくれる。#君の見る景色を全部

2020-03-11 23:42:21
うめ @imasugum

お祭りが終わってからしばらくも「大丈夫か?」っていちばん気にかけてくれて。大丈夫やでって返すけど、そんなん全然大丈夫じゃないことくらいきっとまとくんにはバレてる。でも「そうか」って背中さすってくれるだけで、それだけで本当に助かった。#君の見る景色を全部

2020-03-11 23:42:38
うめ @imasugum

「ありがとーまとくん」「ん?なにが?」「いろいろ」「お返しは身体でええよ♡」「……」#君の見る景色を全部

2020-03-11 23:42:50
うめ @imasugum

そうしてこうして、時は流れて年末です。お祭りの件以来、丈とはほぼ会わなくなった。自分から断ち切ったのに、ラウンジや食堂の人混みの中に丈の姿を見つけてしまっている自分に気付いてないフリを何回してきたんだろう?#君の見る景色を全部

2020-03-11 23:43:09
うめ @imasugum

そんなある日、まとくんたちからサークルの忘年会に誘われた「だいたいみんな集まるから一応。すぐ帰っても大丈夫やから」相変わらずまとくんの言葉は優しい。「リチャの隣おって唐揚げ食べとけばええねん」「俺もリチャの隣おる!」「末澤はいらん」「いらんてなに!?」#君の見る景色を全部

2020-03-11 23:43:26
うめ @imasugum

忘年会はほぼみんな集まるし、さすがに行かんとなあ……ということで、忘年会です。当日はまとくんに言われた通りリチャの隣で唐揚げを食べていた。丈はおらんかった。いちばん気になったくせに、それを聞くことも出来なかった。そんな自分にいい加減疲れて、また唐揚げを食べた。#君の見る景色を全部

2020-03-11 23:43:50
うめ @imasugum

最初座ってた席もぐちゃぐちゃで、ガヤガヤとうるさい店内で、隣のリチャがいつものトーンより少し低めの声で「お前さ、もうええの?」と聞いてきた。リチャが何を聞いてきたのかさすがに分かったけど、「…なにが?」「わかってるやろ」「……」#君の見る景色を全部

2020-03-11 23:55:30
うめ @imasugum

最初座ってた席なんてグチャグチャで、店内のBGMも聞こえないくらいの盛り上がり具合の中、リチャは「今のこの状態やったらお前ひとりおらんなっても誰も気付かへん、やから、」「ちょ、まって、」その先に続く言葉を考えて動揺してしまった。#君の見る景色を全部

2020-03-11 23:55:39
うめ @imasugum

「だって丈は、」「だってちゃうねん、ほんまお前も丈も意地張りすぎ」「はー!?意地なんて張ってへん!」「それ丈も言うとったわ」「な、」「お前はどうしたいん?」リチャのその一言で、ずっと心の奥で重くのしかかっていたものが、少し動いた。「………丈に会いたい」#君の見る景色を全部

2020-03-11 23:56:38
うめ @imasugum

そうだ、わたしは丈に会いたかったんだ。「ん、よし」「……よし?」少し頷いたリチャと、「お待たせ!」と、いつの間にかわたしのコートと鞄を持ってきたすえ。靴を脱ぐタイプのお店だったので靴箱のところへ向かって靴を履いた。ほんとに全然気付かれなくて少し寂しいくらいで #君の見る景色を全部

2020-03-11 23:57:25
うめ @imasugum

席を立つときにリチャが「まとくんには言うとくしこっちのことは気にせんくてええから」と言ってくれた。心の中でリチャにお礼を言ってお店を出ようとしたとき、「まって!」と、すえの甲高い声が聞こえて振り返れば、首にフワッとした感触。「あ、マフラー!忘れとった」#君の見る景色を全部

2020-03-11 23:58:39
うめ @imasugum

「寒いから気ぃつけてな」「ありがとう、すえ」「がんばれ、絶対大丈夫やから」すえのチャラモテスマイル(勝手に命名)が嬉しかった。「すえも彼女にバレん程度にな」「なにがやねん、俺は一途や!」お店を出た途端、冷えた空気が肌に刺さった。吐く息も当たり前のように白い #君の見る景色を全部

2020-03-12 00:03:57
うめ @imasugum

足が軽くて、白い息を吐きながら、気付いたら走っていた。とにかく、はやく丈に会いたかった。……てか丈ってなんで忘年会おらんだん?え?丈ってどこにおんの?まってわたしどこに行ったらええの!?いちばん大事なことを何も聞かないまま店を飛び出したことにやっと気付きました #君の見る景色を全部

2020-03-12 00:10:34
うめ @imasugum

〜 一方その頃 〜 リチャ「やばいアイツに丈はバイトしてからこっち来るって言うの忘れとった」すえ「え?じゃあアイツどこ向かったん?」リチャ「わからん」すえ「」まとくん「どう?アイツらいけそう?」#君の見る景色を全部

2020-03-12 00:10:41
うめ @imasugum

とりあえず駅に辿り着いて上りのエスカレーターに飛び乗った。iPhoneをとりだして丈に電話をかけようとした瞬間、丈からの着信を示す画面が表示されて。「も、もしもし!?」「お前今どこ?」予想外の着信と突拍子もない第一声に頭が真っ白になった「え、エスカレーター」#君の見る景色を全部

2020-03-12 00:21:55
うめ @imasugum

「どこの?」「駅の」お前は日本語覚えたての外国人か、なんて細かくてもはやよく分からないツッコミが耳にあてていたiPhoneと左隣にある下りエスカレーターから聞こえたことに気付いて、左側を見たら「…え」「え」耳にiPhoneをあてている丈と目があって。「え!?丈!?」#君の見る景色を全部

2020-03-12 00:22:25
うめ @imasugum

焦る気持ちと裏腹にエスカレーターが止まるわけもなくて、他にも人はいたからそこまで大声も出せなくて。通話中のままになっているiPhoneからは「降りたとこで待っとけよ」とだけ、聞こえた。丈だ、丈に、会えた。声が聞けた。それだけで本当にうれしかった。#君の見る景色を全部

2020-03-12 00:22:56
うめ @imasugum

だけど、今から何を言われるのだろうか。待っとけって、丈もわたしに話すことがあるのかな………もしかしてほんとのほんとに今度こそ振られるんじゃ………!?ネガティブ思考がとどまることを知らず、そうこうしているうちにエスカレーターを駆け上がってきた丈の姿が見えた。#君の見る景色を全部

2020-03-12 00:28:25
うめ @imasugum

そこそこの高さがあるエスカレーターを走ってあがってきたのか少し息を切らした丈を見て、なんだか懐かしい気持ちになった。待ち合わせに遅れてきた丈はこうやって息を切らしてエスカレーターを駆け上がってきていたし、コンビニのアイスかマックのポテトを奢ってくれたな、とか #君の見る景色を全部

2020-03-12 00:28:44
うめ @imasugum

ああ、丈だ。そんなことを思い出して、ふ、と笑ってしまった。そんなわたしを見て丈が「…なにわろてんねん」「や、別に」「……あのさあ、」丈が何かを話しだそうとした瞬間さっきまでのネガティブ思考が蘇り、とっさに両手で両耳を塞いでしまった。我ながら古典的な防御方法やな #君の見る景色を全部

2020-03-12 00:35:51
うめ @imasugum

ハッしまった、と思うものの時すでに遅し、「…お前いい度胸しとるやんけ」と、わたしの両手は丈の手によっていとも簡単に耳から離された。「や、おもわず手が…」「おもわず手が耳塞ぐんかお前は」「だって心の準備が」「準備てなんやねん」「だって丈、」「…あーもう、好きや」#君の見る景色を全部

2020-03-12 00:43:28
うめ @imasugum

「………へ」「遅なってごめん、俺は、でっかい声で丈って呼んでくるお前がええねん」さっき耳から離された延長で繋がれたままの手が熱い。丈の言葉に何も返せなくて、その変わり涙が溢れて止まらない。「………遅いとかのレベルちゃうよ、もう、」「……ん」#君の見る景色を全部

2020-03-12 00:58:01
うめ @imasugum

「……もう絶交レベルの遅刻」「……なんでも買ったろ」「……なんもいらんから、ずっと隣におってほしい」コンビニのアイスもマックのポテトもいらん、いらんから、それだけでいい。丈がおってくれたらいい。そのとき、繋がれた手を引っ張られて、体ごと丈に包まれて。#君の見る景色を全部

2020-03-12 00:59:07
うめ @imasugum

もちろん涙でぐちゃぐちゃの顔も丈の胸に勢いよくあたったので、丈の服はわたしの汗が涙か鼻水がよくわからん何か(汚)で濡れていくけど、こんな泣かしてくる丈が悪いんだと、ぐりぐりと丈の胸元に顔をぶつけてやった。「…泣きすぎやろ」「誰のせいやと思ってるん、!?」#君の見る景色を全部

2020-03-12 01:02:21