- KoharunagiManak
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「ひが〜あしぃ〜」と、呼び出しが声を張り上げる国技館の「東」。でも実際の方角は、なんと北。そんな相撲コラムを書いている新聞記者。元大相撲三賞選考委員。元ベストナイン&ゴールデングラブ賞選考委員。玉成会研究室の落ちこぼれ。朝日新聞で「角界余話」「広重が描いた江戸」連載中。趣味は芝刈り。ベストスコア79。「いいね」は付箋
北勝富士●ー○貴景勝について やはり一言、言いたい。 普通は 勝ち関取○ー●負け関取 の順に書くのだろう。だが、 ファンには申し訳ないが、貴景勝に綱は、ない。 絶対に、ない。 金輪際、ない。 ない。 綱というのは、ああいうケチ臭いヤツの腰に巻くものでは、ない。 残念だ。貴景勝。
2022-09-22 20:28:27貴景勝の注文相撲について。 食うヤツが悪いーーと、親方衆は誰もが言う。必ず、そう言う。 なので、ちょいと相撲に通じたファンなら、記者なら、立ち合いの変化は 「食う方が悪い」 「勝った方が冷静だった」 と言っておけば、無難だ。 しかし、実は親方衆の本音は違う。 注文相撲には三つある。
2022-09-23 11:14:13貴景勝の注文相撲について。 食うヤツが悪いーーと、親方衆は誰もが言う。必ず、そう言う。 なので、ちょいと相撲に通じたファンなら、記者なら、立ち合いの変化は 「食う方が悪い」 「勝った方が冷静だった」 と言っておけば、無難だ。 しかし、実は親方衆の本音は違う。 注文相撲には三つある。
2022-09-23 11:14:13三つある、注文相撲。 一つは、絶対にやるべき注文相撲だ。 大相撲は、興行という見せ物である。 しかし、生身の力士たちは、その「見せ物」である前に、自分の人生を背負った人間である。一枚でも上の番付にはい上がらなければならない。 勝つために、やらなければならない注文相撲がある。
2022-09-23 11:17:06隆の山を、覚えているだろうか。 横綱隆の里の鳴戸親方の弟子。稀勢の里の兄弟子だ。チェコ出身の力士で、幕内まで昇進した。 こちらのウィキの写真を見れば、碧眼痩躯の力士を思い出す人がいるのではないか。 pic.twitter.com/j3WDboFyIU
2022-09-23 11:21:30隆の山の師匠は、元横綱隆の里の鳴戸親方だ。 土俵に対して非常に厳しい親方だった。その鳴戸親方は、隆の山に、こう教えていた。 《ひと場所に2、3番、必ず変化しろ》 その話を鳴戸親方から聞いた時、僕は心の底から驚いた。 あの隆の里が、弟子に注文相撲を求めるとはーー 親方は私にこう続けた。
2022-09-23 11:25:52「この話、新聞に書いていいぞ。いや、むしろ書いてくれ」 どういう意味なのか。 隆の山は、二字口でチリを切ると、肋骨が浮いた。最も重い時で101キロしかなかった。土俵人生のほぼ全ての場所を80キロ台で闘った。
2022-09-23 11:31:26鳴戸親方は、隆の山に関脇、大関、横綱はない、と踏んでいた。ただ、小結はあると信じていた。 関脇に出世するとは、どういう地位なのか。極めて稀な例外もあるが、関脇とは、役力士に総当たりした上で勝ち越すことである。 一方、関脇の一枚下の小結は、幕内上位での勝ち越しで昇進することがある。
2022-09-23 11:34:11「生き物」と言われる番付。 時にあっと驚く昇進がある。 思い出すのが、臥牙丸だ。 臥牙丸は、西前頭10枚目だった2012年初場所で12勝3敗の星を上げ、翌春場所で東小結に昇進した。 それと、千代大龍。 千代大龍は東前頭8枚目だった2014年名古屋場所で10勝5敗とし、翌秋場所場所で西小結に昇進した。
2022-09-23 11:39:53幕内中位で大勝ちすれば、番付運によっては、小結がある。 だが、いくら番付運があっても、関脇にはなれない。 鳴戸親方は、隆の山が関脇にはなれなくても、小結昇進は十分にありうるーーと踏んでいた。 しかし、あの痩躯だ。 鳴戸親方が考えた隆の山の指導方針が、 《変化しろ》 だった。
2022-09-23 11:46:08100キロ足らずの力士が、時に200キロを超える力士に勝負を挑む。 鳴戸親方は、こう例えていた。 《やせガエルが牛に飛びついていく》 1匹のやせガエルが、関取という猛牛たちに勝つための作戦が、注文相撲だった。 《ひと場所で2、3番、必ず変化しろ。そうすれば、対戦相手全員の出足が止まる》
2022-09-23 11:49:15「隆の山には、立ち合いの変化がある」 そう思わせることができれば、相手が見て立つようになる。80キロ、90キロしかない隆の山が、強烈にぶちかまされて一発で持っていかれることがなくなる。 関脇より上にはなれない弟子を、どうすれば小結に出世させられるか。鳴戸親方の前略が、注文相撲だった。
2022-09-23 11:52:22升ノ山を覚えている方も多いだろう。千賀ノ浦部屋の元幕内力士だ。母の郷里のフィリピン・イロイロ市で生まれ、千葉で育った。両親の離婚で、再びフィリピンへ。 日本の常識では考えられない貧しい暮らしだった。母に楽をさせたい一心で、角界に飛び込んだ。 しかし、升ノ山には重大な問題があった。
2022-09-23 12:19:23升ノ山は、ほんの10秒、20秒戦っただけで、見ていられないほど息が上がってしまう症状があった。 心臓に穴が空いているのではないか、と診断されたこともある。 心臓は四つの部屋に分かれている。
2022-09-23 12:25:55全身の血液は、大静脈で右心房に戻ってくる。そして、右心房から右心房へ。右心室から肺動脈で肺に送られる。 肺で酸素供給を受けた血液は、肺静脈を通って左心房に戻ってくる。 左心房から左心室へ。 そして、左心室から大動脈で全身に送られていく。 升ノ山は、この左右の心房の問題が疑われた。
2022-09-23 12:30:58左右の心房の壁に、穴が空いている「心房中隔欠損」ではないかと疑われた。 全身で酸素が消費された血液が集まる右心房と、肺で酸素をたっぷりと受け取った血液が集まる左心房。 升ノ山は、その心臓の壁に穴が空いているため、全身に必要な酸素が送られていないのではないか、という診断だった。
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