はやぶさ2の持ち帰った小惑星リュウグウのサンプルの初期分析。 実はJ-PARCも分析に加わってたんです。 今日は、その話をしてみようと思う。 …ちょっと長いです
2022-09-23 17:22:27J-PARCではどういう分析をしてたかってーと、素粒子の「ミュオン」を使って、リュウグウのサンプルがどういう元素からできてるのかってのを調べたのね。
2022-09-23 17:23:32「ミュオン」ってのはこれ。 素粒子の一種。 「ミュー粒子」とも言うし、「ミューオン」って伸ばして呼ぶ人達もいる(←多分こっちが多数派)。 でも「うちは伸ばしません」ってエライ人が言ったので、うちでは「ミュオン」って呼びます。 pic.twitter.com/I8MbUB81mC
2022-09-23 17:25:11で、「ミュオン」ってのはあまり聞きなれない名前の素粒子だけど、僕たちが気づいてないだけで意外と身近な素粒子なんよ。 例えばね、手のひらを上に向けたとき、大体1秒に1個ぐらいのミュオンが宇宙から手のひらの上に降り注いでる。全く感じんけど。
2022-09-23 17:25:54「今日は日差しが強いからミュオンがきつい!」ってなことにはならんしょ? そこにいるのに気付かれない、そんな素粒子。 存在感、薄いんよ…
2022-09-23 17:26:29この透過力を使えば、まるでレントゲンの様に物質の内部を透かして見ることができる。なんて便利! んにゃ、X線だとほぼ表面しか見れんので、ミュオンだと、よりもっと深くまで見れる。 それがこのミュオンの持つ特殊能力。 X線なんかじゃ見れん物まで見えるんよ。
2022-09-23 17:28:18もう何年か前に、ミュオンを使ってピラミッドの中に大きな空洞を発見したというニュースがあったでしょ?あれもミュオンの透過力であればこそできた研究。X線じゃこうはいかない。 jst.go.jp/pr/announce/20… jst.go.jp/pr/announce/20…
2022-09-23 17:28:42でな、このミュオンをリュウグウのサンプルの分析に使おうってのが、今回のJ-PARCの行った分析ってわけ。 ミュオンの高い透過性を利用すれば、貴重なリュウグウのサンプルを破壊することなく分析できるんよ。 なんてナイスな分析法!
2022-09-23 17:29:27でだ。ミュオンにはね、プラスの電荷を持つ「正のミュオン」とマイナスの電荷を持つ「負のミュオン」があるのね。 今回使ったのはこのうち「負のミュオン」の方。 負の力を使うので、厨ニ心がくすぐられます。
2022-09-23 17:30:35「負のミュオン」は結構電子と似た性質を持っててな。重さは200倍ほど重いんだけどな。 で、電子と似た性質を持ってるから、とある原子に打ち込んでやると、そこの電子の代わりに「負のミュオン」が原子核の周りを回りだすのな。 これがミュオン原子!
2022-09-23 17:31:52で、ミュオン原子は元素ごとに異なる固有の「特性X線」ってのを出すんよ。 だもんで、リュウグウのサンプルにミュオンを打ち込むことで、リュウグウがどんな元素でできてるのかが、そりゃもう詳細に分かるのだ。
2022-09-23 17:33:03ミュオン特性X線の話は、ひっぐすたんの解説がものすごく分かりやすい。 さすがだ、ひっぐすたん @yukiRPM higgstan.com/news-muon/
2022-09-23 17:34:05さて一方で、リュウグウのサンプルな。 あれ、宇宙空間から直接持ってくるから、地球の空気に汚染っされてないってのが最大の売りなのん。 だもんで相模原の宇宙研でサンプルを分配するときにも地球の空気で汚染されないように、特殊なキュレーション施設で行ってるのね。
2022-09-23 17:34:48で、分析する側も地球の空気で汚染されないように、ヘリウムガス中で分析できる特殊な専用チャンバーを作って正座待機してたんよ。 それが今回のKEKのプレスリリースにドーンと載ってるこの写真な。 pic.twitter.com/TS2VaIFPbx
2022-09-23 17:35:20ちな、チャンバーの話は水戸経済新聞さんも記事にしてはる。 mito.keizai.biz/headline/1752/
2022-09-23 17:36:16さてここで、ちょびっとだけ隕石の話。 隕石には、いろいろな種類があるわけだけど、そのうち炭素質コンドライトっていう種類があるのね。 これは炭素原子を含む隕石のことで、太陽系ができたときの特徴を持ってるって言われてるのね。
2022-09-23 17:37:28で、この炭素質コンドライトにもCI、CM、CV、CK等々の種類があって、その中でもCIってのが最も始原的、つまり古い性質を持ってるって言われてて。 だもんで、今回一緒に分析してみたのね。
2022-09-23 17:37:38で、結果がこれ。 リュウグウのサンプルとCIコンドライト(オルゲイユ隕石)の元素組成は、ものすごくよく似てる。 つまり、リュウグウのサンプルは太陽系の始原的なサンプルってことが言えるのね。 pic.twitter.com/7UCEfItQry
2022-09-23 17:38:21一方で、酸素の含有量がCIコンドライト隕石に比べて低い。数値で言うと約25%。 これはすなわちリュウグウのサンプルが地球の酸素の汚染を受けていない。逆を言うと地球の隕石サンプルは、地球の酸素の汚染を受けてる可能性を示してるのね。 pic.twitter.com/1jyhLQCocM
2022-09-23 17:40:14ということで、今後はリュウグウサンプルが太陽系を代表する新たな標準試料になる「かも」? ってのが、今回のJ-PARCでのミュオンを使った分析で示されたんよって話。
2022-09-23 17:41:54