ニーアオートマタ二次創作『転進』

深海さかな @dzurablk_kai

ニーアオートマタ二次創作 『転進』 ＃オトマタ突発SS ※警告：一部独自設定が含まれます

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『電磁カタパルト、各コンデンサー電圧正常。斥力デフレクター作動を確認。12Cコントロールよりグリムリーパーズ各機へ、発進どうぞ』 オペレーターからの指令が耳に届くのとほぼ同時に、前方のライトがグリーンに変わる。 ＃オトマタ突発SS

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視界の端で発艦担当士官のレジスタンスが片膝を突いて前方を指差したのを確認すると、4Bは飛行ユニットのアフターバーナーに火を入れた。 エンジンに連動して飛行ユニット尾部の斥力リングが輝きを増す。射出は一瞬だった。 ＃オトマタ突発SS

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「4Bより12Cコントロール、世話になったな」 『こちらコントロール、高度制限を解除。旅路の安全を祈ります』 「いい戦果を期待しててくれ」 『異国のお土産も忘れないでくださいね。それでは』 北部12C本部の管制エリアを出たことを確認すると4Bはデルタ隊形への移行を指示する。 ＃オトマタ突発SS

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先頭は副隊長のスキャナーモデルだ。 フライトプランでは北米大陸西海岸を立った編隊はこれから、太平洋を遊弋する人類軍の二隻の空母と真珠湾基地を経由してユーラシア東部の列島へと向かうことになっている。 ＃オトマタ突発SS

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この数世紀、太平洋地域は機械生命体と人類軍との激戦区となっていた。夜の国と異なり竜騎兵の運用ができず、人類軍は絶えず劣勢を強いられていることに加え、数百年前には超巨大機械生命体や水上都市アトランティスといった機械生命体側の重要目標も姿を現しており、 ＃オトマタ突発SS

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今回の作戦もそれらに対する哨戒活動も兼ねた長距離フライトだった。 加えて近年ではユーラシア東部が機械生命体の手に落ちつつあり、その対処も含めた戦略的な配属転換だと4Bは聞かされていた。 ＃オトマタ突発SS

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もしかするとこれから向かう東部太平洋地域の旧東京エリアが、人類遺産復興重要指定地区に制定されていることも影響しているのかもしれない。 南米大陸に降着したエイリアンと人類との戦争は今や洋の東西を問わず、太平洋の海溝と同じくらい底の知れない深みだ。 ＃オトマタ突発SS

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これから向かう地域での展開期間も聞かされていないが、今度北部12C防衛本部に戻れるのはいつになるのだろう。そんなことを考えていた4Bの耳に、聞きなれたヨルハ少年モデルの声が届いた。 『異国のお土産かぁ。どんなものがいいですかね』 ＃オトマタ突発SS

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副隊長の能天気そうな声は隊のムードメーカーとして常々、士気の高揚に役だってくれるため、彼のキャラクターには4Bも度々助けられていた。もしかすると北部12C防衛本部から発信されている戦意高揚放送にスキャナーモデルが起用されているのも同様の理由なのかもしれない。 ＃オトマタ突発SS

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『そういえば少し前に会ったレジスタンスの行商人が面白いことを言ってましたね。なんでもこれから行く地域では魚料理が美味しいんだとか』 「魚料理？　海に泳ぐあの脊椎動物のことか？」 ＃オトマタ突発SS

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『ええ、東ユーラシアに住んでた人類は乾燥させた魚を食べるだけでなく、煮汁を煮だしたり生で食べたり、色々なことに活用してたらしいです』 副隊長の好奇心に対する感嘆もさることながら、4Bの脳裏にはそのアンドロイドたちに会った時の奇怪な印象も強く記憶に残っていた。 ＃オトマタ突発SS

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その三人組は世界各地を転々としながら機械生命体の部品を取引しているらしく、開口一番に「この辺りでお宝がある場所を教えてくれ」などと迫ってきたのにはおおらかな性格の4Bも流石に閉口したものだ。 ＃オトマタ突発SS

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隊長と呼ばれていた三人組のリーダーは金にがめつい性格で、もう一人は機械生命体を改造したいなどとよくわからないことばかりを口走っており、比較的常識人に見えた残りの一人も隙あらば取引相手を探す隙の無さをあわせもった、なんとも奇妙な一団だった。 ＃オトマタ突発SS

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太平洋を渡ってきたなどと言っていた彼らの言葉にどれほどの信ぴょう性があるのかは甚だ不安だが、少なくとも副隊長は彼らの言っていたことを信じ切っている様子だった。 「そもそも我々アンドロイドに食事など必要ないだろう」 ＃オトマタ突発SS

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『でも人類の食事なんてジャガイモ料理しか知らなかったし、やっぱり気になるじゃないですか。どんな味なんだろうとか、一日に何回くらい魚を生で食べていたんだろうとか』 少なくとも人類の食欲という奴は、スキャナーモデルの知的好奇心ほどは貪欲ではなかったのではなかろうか。 ＃オトマタ突発SS

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『お土産に持って帰るならやっぱり保存が効く方がいいですよね。アジの開きってやつがその魚を使った保存食として有名らしいですよ』 そんなことまで三人組から聞き出していたとは、副隊長もなかなか抜け目ない。4Ｂは思わず笑みを零してしまった。 ＃オトマタ突発SS

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「ははっ、そんなことを言って、変な物を食って腹を壊すなよ」 『まるで拾い食いでもしそうな言い方しないでくださいよ！　僕はイヌ型機械生命体じゃないんですから！』 その言葉には他の隊員たちも笑わずにはいられなかった。 ＃オトマタ突発SS

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隊の士気は副隊長の献身的な（？）働きもあって十二分、それを除いても北部12Ｃ防衛本部という激戦区をホームベースとする猟兵部隊の戦力は装備も人材も、質・量ともに十分だ。部下たちへの信頼を新たにした4Ｂは覇気のある声で改めて命令を下した。 ＃オトマタ突発SS

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「各機、これより巡航高度に上昇、のちラムエアシフト。各員、戦意は十分か？」 『『『Aye ma’am!!』』』 「よろしい！　猟兵部隊の名をユーラシアにも響かせてやれ！」 ユーラシアか…そこにはどんなアンドロイドたちがいて、どんな料理を食べているのだろう。 ＃オトマタ突発SS

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ついついそんなことを考えてしまった思考に、4Bは自分でも苦笑した。副隊長の好奇心がいつの間にか伝染してしまったのだろうか。 『前方に機影確認、IFF応答なし、エンゲージ！』 ＃オトマタ突発SS

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その平和な思考も、先ほどまでとは打って変わって真面目な声音に変わった副隊長からの無線ですぐさま掻き消された。思考を戦闘に切り替える。 「ラインアブレスト隊形へ移行する！　行きがけの駄賃程度に墜とされるなよ！」 ＃オトマタ突発SS

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そう言って闘志のたぎった笑みを浮かべる4Bの顔に吹き付ける潮風は、どこまでも続く雲一つない太平洋の空に負けず劣らず晴れやかだった。 ＃オトマタ突発SS