ノーベル生理学・医学賞2022受賞者の論文を探して読んでみよう

2022年のノーベル生理学・医学賞を受賞したスヴァンテ・ペーボ氏は「ネアンデルタール人の研究」という感じで報道されているが、実際にどんな研究だったのか。彼が心血を注いだ研究の論文を実際に読んで理解してみる。論文へのたどり着き方や読み方の手順もご一緒に。
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もりふじ @疫学トーク @morifuji_eki

私も初めての試みなのですが、 今後学問の発信に携わろうとしてることもあり、 ノーベル賞受賞者がどのような研究をしたのか原典に触れて見ようと思います。 そのやり方を一連のツイートで実演します。 ただし、皆にもできるようにベッドの上で寝ながらという縛りプレイでいきます。 #ノーベル賞

2022-10-03 21:45:07
もりふじ @疫学トーク @morifuji_eki

まず、誰がノーベル賞を受賞したのか知りたいので 「ノーベル賞」で検索。 かんたんに日本語のニュースにたどり着く。 スバンテ・ペーボ氏、だそうだ。

2022-10-03 21:46:53
もりふじ @疫学トーク @morifuji_eki

しかし実はカタカナを拾っても原典には辿り着きにくい。 アルファベットを得なければいけない。 スバンテ・ペーボ氏はドイツ人。 我々にとってはあまり馴染みのある名前ではなさそう。 そこで2手目「スバンテ・ペーボ」で検索。

2022-10-03 21:51:35
もりふじ @疫学トーク @morifuji_eki

Wikipediaが出てきた。 ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9… 受賞のことがもう書いている。更新早すぎる。 記事が面白いので寄り道しつつ、アルファベットを得る。 Svante Pääbo 氏。 aの上の点は読み方出し方分からんので以下コピペし続ける。

2022-10-03 21:54:28
もりふじ @疫学トーク @morifuji_eki

4手目は、Google Scholarだ。学術系の文書を検索するならここ。 クリップボードに虎の子のäを2つ握りしめ、いざ検索! scholar.google.co.jp/scholar?hl=ja&…

2022-10-03 21:57:42
もりふじ @疫学トーク @morifuji_eki

5手目。 ここからは若干論文の作法の知識が必要。 といってもレベル1の知識だから今覚えてください。 知識1「論文は著者名の一番最初に出てくる人がほぼ書いている」 知識2「一番最初に出てくる人をFirst Authorという」 ということで、この人がFirst Authorの論文で最も人気のやつを探す。人気って?

2022-10-03 22:02:49
もりふじ @疫学トーク @morifuji_eki

5手目続き。 論文の人気は、いったん引用元の数で考えてみる。 今日時点で1511回も引用された論文を発見。 そのタイトルは… Genetic analyses from ancient DNA 英語がわからなければ翻訳機能を使う!長タップして翻訳すると 「古代のDNAからの遺伝子解析」 論文はこちら。 academia.edu/download/46104…

2022-10-03 22:07:14
もりふじ @疫学トーク @morifuji_eki

ちなみに、僕はこのタイトルをみて 「超絶に短くてカッコよすぎるタイトル!」って思ってます。 短ければ短いほど多くの概念を含んでいる。気がする。 だって単語は使えば使うほど具体的になるから。 論文タイトルの単語数とその守備範囲は負の相関! 守備範囲定量化ムズいので #曖昧でーす

2022-10-03 22:12:38
もりふじ @疫学トーク @morifuji_eki

6手目。論文読みます。 読み方。 最初の方にAbstract と太字で書かれているセクションがあるので、そこに書いている英語をコピーして、deeplに貼り付けます。 結果はこちら。

2022-10-03 22:15:15
もりふじ @疫学トーク @morifuji_eki

7手目。deeplの日本語をしっかり読み込む。 これコピペするのは何かの権利に触れるかもなので、自分でやってくれよな。Abstractは要旨という意味だが、その要旨をさらに要旨にするとこんなところ。 「昔のDNAの分析の確らしさを確認する方法について論じます」 あれネアンデルタール人わ?

2022-10-03 22:21:16
もりふじ @疫学トーク @morifuji_eki

8手目。 ここで2つの選択肢がある。 1. たぶん、この業績でノーベル賞とったわけじゃないな、ということで別な検索をする 2. でもこの研究のことをもっと知りたいからもうちょっと読む > 2 よし。あなたは大学の試験を落とすタイプ。 好奇心の赴くままに勉強するのは社会人の特権です。

2022-10-03 22:27:39
もりふじ @疫学トーク @morifuji_eki

ここで告白します。実は僕、deepl課金ユーザーなんです。 たしか年間9,000円払うと、PDFとかも翻訳できるんですね。 まあ普通に考えて激安です(個人差あり) ということで、PDFをダウンロードしてdeeplにアップロードして、日本語版PDFを得ます。無課金の方は適宜気になるところをdeeplにコピペで。

2022-10-03 22:35:45
もりふじ @疫学トーク @morifuji_eki

10手目。deeplで得られたPDFを読んでいきます。 …あともう一つ告白するけどベッドだけどiPadでやってます。 やっぱり大きいと読みやすいのでね。 結局ツールやん、と思われたら本意ではないけど、ツールは一回揃えるといろいろ遊べるのでdeepl とiPadはオススメよ。

2022-10-03 22:39:35
もりふじ @疫学トーク @morifuji_eki

まず書かれていたのは コロナ禍になってみんなが知るようになったあの #PCR のおかげで、劇的に古代のDNAが読みやすくなったということ。 生体のDNAは常に修復され続けているが、死後のDNAは分解されたり 酸化したり微生物にやられたりするらしい。その補正にPCRが使えると。

2022-10-03 22:59:36
もりふじ @疫学トーク @morifuji_eki

抽象して話すと、DNAの分子的側面(化学反応で修飾を受けて、正しく読めなくなったり増幅できなくなったり切れたりする)をうまく扱って、DNAの情報的な側面のノイズを減らす作法について緻密に記載されていた。 通信技術での誤り訂正の仕組みのような感じか。

2022-10-03 23:08:57
もりふじ @疫学トーク @morifuji_eki

そして、コンタミ(別な試料が混ざってしまうこと)についても書かれていた。 24のネアンデルタール人を調査したが、ネアンデルタール人のDNAを含んでいたのはなんと4つだけ。 他は現代人のDNAのコンタミだ、と。それを防ぐために、対象のDNAが入っていない試料を対照のために用意することが望ましい。

2022-10-03 23:19:14
もりふじ @疫学トーク @morifuji_eki

つまり我々はただ遺跡を歩くだけで、現代人のDNAで古代の試料を汚染することができる。 そんなノイズだらけの中、ペーボ氏はネアンデルタール人に真に現代人のDNAが入っていたことを示した。 いかに困難で緻密な研究であったかと気付かされた。 「とりま古代人のDNA分析してみましたー」じゃなかった。

2022-10-03 23:26:41
もりふじ @疫学トーク @morifuji_eki

この論文は2004年に公開されたもので、この時点ではまだネアンデルタール人と現代人のDNAの関係について、「取り組み始めた」と書かれている。つまりこの後の発表がノーベル賞となるようだ。 だがもう僕はベッドで調査して2時間以上経過してしまったのでここでいったん終える。次ツイートにまとめを。

2022-10-03 23:33:15
もりふじ @疫学トーク @morifuji_eki

壊れていてコンタミも多い、ノイズだらけの古代DNA。ペーボ氏はこのノイズを丁寧に除去してDNAを解読していく方法を確立した。この基礎技術こそが、ネアンデルタール人と現代人の共通配列を確かなものにしたに違いない。 #ノーベル生理学・医学賞

2022-10-03 23:37:35
もりふじ @疫学トーク @morifuji_eki

以上でした! 皆さんもこうやって気軽に論文読んでみてください!そして読んだらぜひ教えてください。

2022-10-03 23:42:33