連載Twitter小説 「キメラ（合成生物）に変身した夫」２

ひらばるまなぶ（平原学）＠もの書き @chocolatesity

#twnovel 「皆さま、お越し戴きありがとうございます！」燕尾服の男性が舞台に現れた。団長かしら。「ホラ、最初はパパの出番の筈よ」子ども達に言うと、「まず最初は、口から火を吹く宇宙ヒーローの登場です！」「あら違ったみたい。帰りましょう」「…まぁま」袖を引っ張る次女。 #変身夫

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#twnovel サーカスの舞台に立ったキメラの私。「彼が炎を吐く瞬間をご覧あれ！」と団長が指差し。てか、もう出てるし。止めどなくじゃんじゃん出ててるし。自分でも熱いし。…あ、今テント引火したし。急に燃え盛ってるし。悲鳴上がったし。団員皆慌ててるし。どうしたらいいの私。 #変身夫

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#twnovel キメラの私が吐いた炎がテントに燃え移り、大混乱のサーカス場。「皆さん落ち着いて！」そう言われても次々と狭い出口に押し寄せる人々。必死に整列させようとする団員らを、私も加勢しようとするが。「ギャーッ！火種がこっちに来る！」しまった、まだ止まってなかった！ #変身夫

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#twnovel 炎に巻かれるサーカス場から、何とか客全員を逃がす事に成功。私もようやく口から出続けていた火が止まり、妻との再会を果たす。「ワンギョ（皆無事か！？）」「ええ、子ども達も無事よ」おぉ良かった…長女も次女も、猫も…って、あれ…また長男が猫と入れ替わってる！！ #変身夫

ひらばるまなぶ（平原学）＠もの書き @chocolatesity

#twnovel 炎に巻かれるサーカス場で、取り残された長男を探す私。崩れかけた足場、もうもうと立ち上る煙と熱気。キメラの体でなくとも進むのは困難を極めた筈。が、諦めるものか。私は口を開き、声を大に――と、重大な問題に気づく。何を叫べばいい…長男、まだ名付けてないのに！ #変身夫

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#twnovel 火事の中。長男を探すも、名前が無いので呼ぶことも出来ない私。無力さに思わず涙が零れる。「ワンギョ…！」はは、泣き声までキメラの泣き声になってしまったか……って、待てよ。別に呼ぶのが名前である必要なんてなくね？それにどうせ私、「ワンギョ」しか喋れなくね？ #変身夫

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#twnovel 火事の中で長男を探す私。「ワンギョッ、ギョーッ（パパだ！長男、返事してくれ！！）」ありったけの声で叫ぶ。きっと気づいてくれる筈…！「だぁー！」と、赤ん坊の声。間違いない、長男だ！すぐさま声のした方向を向き――凍り付く私。長男、なぜ大砲の中にいるの……？ #変身夫

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#twnovel 大砲の中に入り込んでしまった長男を救い出そうとするキメラの私。必死に手を伸ばすが、如何せんTレックスの手。短くて届かない。思いっきり身を乗り出してみると…スポッ！あ、や、やば…抜けな――と、また妙な音が。ジジジジジ……こ、これは……導火線が燃える音！？ #変身夫

ひらばるまなぶ（平原学）＠もの書き @chocolatesity

#twnovel 火事の中、長男を探しに行った夫が戻らない。私の胸が不安でざわめく。と、突然テントの中で爆発音。な、何！？「おい、何か飛び出してきた！」「砲弾？いや違う。あれは…！」不意に溢れ出る涙。間違い無い。長男を抱えて空を飛ぶ夫の姿は、宇宙ヒーローそのものだった。 #変身夫

ひらばるまなぶ（平原学）＠もの書き @chocolatesity

#twnovel 火事で焼け落ちたサーカス場。怪我人は出なかったが、折角のチャリティイベントの筈が…しょげ返るサーカス団一同。と、我々の前に立つお客さん達。罵声を浴びせられると思ったら、次々とお金を差し出される。「チャリティイベント、だからね」「いいもの見せて貰ったよ」 #変身夫

ひらばるまなぶ（平原学）＠もの書き @chocolatesity

#twnovel 大事なサーカス場を火事で失った我ら一団。来てくれたお客さん達に好意でいくらか援助して貰ったが、流石に充分とは言えない。「ワンギョ（なら私がバイトで…）」「やめろって！前もやったけど全部失敗だったろ！」と、ピエロ。うむ、確かに…って、え？何故知ってるの？ #変身夫

ひらばるまなぶ（平原学）＠もの書き @chocolatesity

#twnovel サーカス場の火事から数日後。どうもこのところ誰かに監視されているような気がしてならない。「ストーカー？」その言葉に頷くと、妻は急に笑い出す。「ありえない！一体何処の怪獣マニアがあなたみたいな出来損ないのキメラを狙うの」最近、妻の言葉に刺があるような…。 #変身夫

ひらばるまなぶ（平原学）＠もの書き @chocolatesity

#twnovel 最近、誰かの視線を感じる。今朝の出社中もまた背後に気配が。「ワンギョ（そこかっ！）」すかさず、猫の顔から髭を矢のように放つ。が、電柱に刺さったとき既に気配は無い。逃げられたか！――間一髪、矢から逃れた追跡者は思った。あいつ…また何か変な風に進化してる！ #変身夫

ひらばるまなぶ（平原学）＠もの書き @chocolatesity

#twnovel 「尾行は出来たか？」「抜かりありません」「で、どんな様子だ」「はっ。口から炎を吐く技に加え、髭を矢のように放つ特技を得た模様」「何！？…他には？」「缶コーヒーを缶ごと飲み込んでました」「それは凄い…！」「因みに微糖が好みのようで」「それはどうでもいい」 #変身夫

ひらばるまなぶ（平原学）＠もの書き @chocolatesity

#twnovel 「浮かない顔でどうした？」サーカス団のピエロ。…私を尾行する謎の存在、疑うとしらコイツか。「ワンギョ（最近不眠症で…夜中に散歩するんだ）」「何処へ？」あからさまに食らいついた。「ギョ（三丁目のコンビニ）」「成る程」と、メモを始め…って、あからさま過ぎ！ #変身夫

ひらばるまなぶ（平原学）＠もの書き @chocolatesity

#twnovel 「ヤツに関する新しい情報です」「報告しろ」「はっ。最近不眠症らしく、夜中によく三丁目のコンビニまで出歩くそうです」「成る程。三丁目で見張れば、ヤツを捕えられるな」「それと、もう一つ」「何だ？」「コンビニのバイトの娘、私のタイプです」「その報告はいらん」 #変身夫

ひらばるまなぶ（平原学）＠もの書き @chocolatesity

#twnovel 三丁目のコンビニ。今夜ここに私を狙うストーカーが現れる筈！…にしても、外は寒いな。「どうぞ」と、目の前に缶コーヒーが。こりゃどうも。「あんたも見張りを？」「ワンギョ（そうです）」「奇遇ですね。私も見張ってる所で…丁度あんたみたいなキメラが来るのを」え。 #変身夫

ひらばるまなぶ（平原学）＠もの書き @chocolatesity

#twnovel まんまと捕まり、檻に入れられた私。「ワンギョ（貴様、あのピエロか！？）」「ああ。それ以外にアルバイターに扮していたこともあったな」成る程、それで私がヘマした事実も知って…「ギョエ（なら言葉が通じるのは…）」「ずっと監視してたお陰さ」それは納得いかない。 #変身夫

ひらばるまなぶ（平原学）＠もの書き @chocolatesity

#twnovel 「ぱぁぱ」旦那がいないのに気付き、急に起き出す長女「パパは夜のお散歩。悪い人よね…ホラ、パパみたいに悪い人になりたくなかったら、さっさと寝るの」「ぱぁぱー！」「どうして怒るの…あ、そうか、パパは人じゃなくてキメラだったわ」「…まぁま」次女も起き出した。 #変身夫

ひらばるまなぶ（平原学）＠もの書き @chocolatesity

#twnovel 幾らあやしても「ぱぁぱー！」と騒ぐ長女。「しょうがないわね…じゃあ、一緒にパパ迎えに行こうかしら？」ようやく笑顔の花が咲く。「まぁま」と、次女も私の袖を引っ張る。はいはい、次女も一緒にね。「おっぱい」――急に目覚めた長男は、家の柱にくくりつけて、っと。 #変身夫