【再放送】マグロ・サンダーボルト #6

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そりゃそうだ」男は丸腰をアピールしながら言った。ヤクザでないトラタは、彼がクランの賞金首である事を知らなかった。300万を全て吸収されてしまったトラタだ。売る気はある。だが少し引っかかる。「計測器にかけて査定するから、少し待ってくれ」「急いでるんだが」「そんなにかからねえ」19

2022-11-11 22:27:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

しばしの沈黙。男は薄汚い柱に片足の裏を当てながら、天井モニタの卑猥なワークアウト・ビデオを見ていた。「すげえな」「……ついでに買うか?」トラタが脂ぎった汗を拭いながら計測器を操作し終えた。その時、店のドアが空き、アベがやって来た。男はわずかにどきりとし、煙草を口元へやった。 20

2022-11-11 22:30:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

男は末端構成員のアベを知らなかった。ルームランナー納品時にヤクザジャケットを脱ぎ、汗だくになっていたアベは、クランバッジもつけていない。「……何だオイ、まだ営業してんのかよ、トラタ=サン」アベはオイラン・バーガーのシェークを啜りながら、店内の椅子にどっかと腰を下ろした。 21

2022-11-11 22:33:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アベは商売には口を出さない。それに今は考えるべき事がある。クランに何かが起こっているのだ。バッグの中の万札を見ながら、アベは時計を確認した。ハシバはまだ来ていないのか。「ン……?」視線を感じ、アベは男の方を見た。両者は何事も無く、すぐに目をそらした。アベはシェークを啜った。 22

2022-11-11 22:36:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「査定終わりだ、何が欲しい」「直結型だ。AY70系を」男はカウンターに向かって歩いた。「無茶言うなよ、AY60系しか出せねえ」「……オイ、トラタ=サン、ハシバ=サンはまだ来てねえのか?」焦燥したアベが、思わず苛立ちながら割り込んだ。その名を聞き、男はまた口元に煙草を運んだ。 23

2022-11-11 22:39:00
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「いや、来てない。連絡も無い」トラタがアベに言い、また男とのビズに戻った。「この際贅沢は言わない。AY60系でいい」男は取引を急いだ。アベはIRC端末を操作しながら苛立たしげに踵を鳴らした。クランのIRC部屋ログを見るが、レッサーヤクザである彼には限定的な情報しか解らない。 24

2022-11-11 22:42:00
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(((数時間前に、ハシバ=サンは賞金首のラッキー・ジェイク始末した。その数時間後に、クラン全体が戦争みてえにどよめき出した……何か関係があンのか?)))アベは知恵を振り絞り、クランのデータベースを漁った。(((ジェイク……不法入国ガイジン、重サイバネ……))) 25

2022-11-11 22:45:00
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アベの呟きは小さな声になっていた。「身長185前後……脳内UNIXの自動翻訳により不確かな日本語……サイバネを隠すため品の無いコートとサングラス着用……」トラタはちらりと上目遣いでカウンターの前のガイジンを見た。男はまた煙草を吸った。「……緊張すると煙草を口元に運ぶ……」  26

2022-11-11 22:48:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「よし、ならAY64の認証無しがあるぜ……」トラタは脂ぎった汗を滴らせながら、今度はちらりとアベを見た。アベは眉をひそめて首を横に振った。アベは大口径銃をガイジンの背中に向けて構え、ゆっくりと立ち上がった。距離はタタミ3枚。「オイ、あんた、コナで銃買おうってのか?名前は?」 27

2022-11-11 22:51:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

男は…内蔵武器を全て使い切って丸腰のラッキー・ジェイクは、両手を上げてゆっくりと振り返った。質問には答えなかった。「ザッケンナコラテメッコラー!」アベがじりじりと距離を詰めた。室内のアトモスフィアは爆発寸前だった。ジェイクはサイバネアイで敵の全身をスキャンし、呼吸を整えた。 28

2022-11-11 22:54:00
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「てめえジェイクだろッコラー!」「イヤーッ!」アベが言い終わらぬうちに、ジェイクはブラックベルト級の速度で踏み込み、アベの腕を掴んだ!危険な賭けだ!「アッコラー!」BLAMN!銃弾が壁に命中!「イヤーッ!」「グワーッ!」ジェイクはカラテエルボーを叩き込み、銃を奪わんとする! 29

2022-11-11 22:57:00
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「イヤーッ!」さらにカラテエルボー!「グワーッ!」仰け反り銃を取り落とすアベ!だがここで、トラタがカウンターの後ろに架けられていた売り物のバットを掴み、背後からヤバレカバレで殴り掛かった!「ウオーッ!」「グワーッ!」ナイスバッティング!咄嗟に振り返ったジェイクの顔面に命中! 30

2022-11-11 23:00:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「庶子!」ふらつくジェイク!「ダッテメッコラー!」この好機を逃さず、アベの痛烈なケリ・キックがジェイクの鳩尾をえぐる!「オゴーッ!」「ウオーッ!」腕をガクガクと痺れさせながらも、トラタは再びジェイクの強化頭蓋後頭部に対しフルスイングした!SMASH!ジェイクの脳を揺さぶる! 31

2022-11-11 23:03:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アベは銃身を掴んで拾い上げ、銃底で顔面を殴りつけた。「イヤーッ!」「グワーッ!……ア……ア…」左目のサイバネアイを割られたジェイクは、鼻と口を血塗れにし、浜に打ち上げられたマグロめいて卒倒した。「オイ、売りモンの手錠あるな」アベが折れた歯を吐きながら言った。トラタが頷いた。 32

2022-11-11 23:06:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だが興奮したトラタは血塗れのバットを構えたまま、粗い息を吐いていた。アベは生け捕りが必要なことを説き、もう一度手錠を取って来るようトラタに言った。「ジェイクが生きてやがる……どういう事だチクショウ……」そしてIRC端末で抜かり無く、ハシバとクランチャット部屋に報告を行った。 33

2022-11-11 23:09:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アベは銃を向けたまま、ジェイクを見張り続けた。相手が気絶から回復する様子は無かった。「アイエエエ……アベ=サン、俺の手首、折れちまったかも……」トラタが手間取った末に手錠を持ってきて、それでジェイクを拘束した。アベはIRC端末を食い入るように見つめたが、返信は一切無かった。 34

2022-11-11 23:12:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

焦燥感だけが募る。アベは床にうずくまり、IRC端末、カネ、そしてジェイクを見た。見えない導火線がバチバチと火薬庫に近づいている予感がした。「……事務所だ。何かが起こってやがる。オイ、こいつを俺の車のトランクに載せるの手伝え」「手首が……」「スッゾコラー!」「アイエエエエ!」 35

2022-11-11 23:15:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((ハシバ=サン……今夜一体、何が起こってンだ……!サムライヘルム・オブ・デス・ヤクザクランに……!)))ギャギャギャギャギャギャ!死んだはずの賞金首をトランクに載せたアベの中古ヤクザセダンは、荒々しくドリフトしながら急発進!重金属酸性雨を切り裂き、ヤクザビルへと走った! 36

2022-11-11 23:18:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【今回の話は】 ・2030年代の「ネオサイタマ」が舞台です ・ジャンルは「サイバーパンク・ニンジャアクション小説」 ・常人にある日突然ニンジャソウルが憑依してニンジャになる世界観です ・サイバーパンクなので肉体を半機械化している奴も多い ・ニンジャのほうが強い ・治安は終わっている

2022-11-16 21:27:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

一方その頃、災禍の中心たるヤクザビル最上階では。アマクダリから派遣された冷酷なるエージェントニンジャのブラックストーンが、ウェイダをドゲザさせた上に、ニンジャスレイヤー爆殺作戦の指揮権を簒奪していた。 37

2022-11-16 21:33:00