【再放送】マグロ・サンダーボルト #7

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「スッゾコラーッ!」腹の底から沸き上がったヤクザスラングを叫び、アベはチャカガンを前方に突き出した!そして困惑した!死体まみれの室内にではない!銃弾で半ば破壊された遮蔽ヤクザデスクを挟み、タタミ5枚の距離で膠着状態に入っていた二人を見たからだ!片方はハシバ!片方はウェイダ! 20

2022-11-23 22:30:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

銃口を両者の間に向けたまま、アベは視線を右へ左へと動かす!どちらを撃つか、一瞬で判断せねばならぬ!その迷いを見てハシバが叫ぶ!「アベ!そのジジイを殺れッ!殺れーッ!」「ハシバを殺れ!裏切りおったわーッ!」ウェイダも顔面を覆うシリコン皮膚を半ば破壊された状態で、必死に叫んだ! 21

2022-11-23 22:33:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……ダッテメッコラー!」BLAMBLAMBLAM!アベは撃った!ハシバを!「グワーッ!」銃弾はハシバの利き腕を破壊!BRATATATATA!ハシバはアベに向かって闇雲に銃撃!銃弾が身体をかすめる!「ウワーッ!」アベは遮蔽を取るため、ウェイダの横へと無我夢中で飛び込んだ! 22

2022-11-23 22:36:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ハシバは後方に弾丸をバラまきながら、フスマを抜けて逃走した。まだ追っ手の気配は無い。ヤクザはあらかた死に絶え、アベはウェイダを助けようと抱え起こしていたからだ。「ハァーッ!ハァーッ!ハァーッ!」ハシバは必死で駆け、そして廊下に転がるイルカを見て、止まった。 23

2022-11-23 22:39:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……何者だテメッコラー!どこから出て来やがったコラー!」ハシバは激しい動揺を見せ、屈み込んでイルカの襟首を掴んだ。その横でシンダはすでに力尽き、死体へと変わっていた。「た、頼む、助けてくれ……。ここから逃がしてくれ……」血塗れのイルカがわらにも縋るような声で言った。 24

2022-11-23 22:42:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

一方その頃、数百メートル上空のヘリコプター機内、輸送スペースでは!激しいカラテ攻防の末に、ニンジャスレイヤーがブラックストーンのマウントを奪っていた! 25

2022-11-23 22:45:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ブラックストーンの震える右手には制御デバイス。(((これを後少し、窓から投げ落とし破壊……!)))「イヤーッ!」「グワーッ!」だが鉈めいたチョップが、その足掻きを断ち切る!切断した腕からデバイスを奪うと、ネオサイタマの死神はそれを自らの装置の背ロック部分に迷い無く挿入した。 26

2022-11-23 22:48:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガゴンプシュー!「シマッタ!」ブラックストーンは目を見開く!装置が完全停止し、ニンジャスレイヤーの胸から装置がはがれ落ちる!「イヤーッ!」「グワーッ!」間髪入れず、死神は怒りに満ちたマウントパンチを叩き落とした!「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」 27

2022-11-23 22:51:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ブラックストーンは己のカラテと戦意が粉々に打ち砕かれゆくのを感じ取った。ニンジャスレイヤーは「忍」「殺」メンポから蒸気めいた息を吐き出し、インタビューした。「……新たなニンジャ組織が現れたかと思えば、結局はアマクダリか。よく考えたものだ。正体を名乗らず卑劣な手段を用いて私を」28

2022-11-23 22:54:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……待て!人違いだったのだ、ニンジャスレイヤーサン!ヤクザクランが、貴様をガイジンの賞金首アウトローと間違え、偶然にも装置を…」「イヤーッ!」「グワーッ!」「ブラックストーン=サン、斬新な命乞いだな。どうやら長く苦しみたいと見える」死神は拳を握り、インタビューを続行した。 29

2022-11-23 22:57:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

一方地上では、重金属酸性雨の中をヤクザカマロが、車線を左右に大きくブレながら走行していた。「ハァーッ……ハァーッ……ハァーッ……」運転席には手負いのハシバ。酷い発熱だ。その隣の助手席には、手錠をハシバの銃で破壊してもらったイルカが、頭を垂れて、押し黙ったまま座っていた。 30

2022-11-23 23:00:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼らは逃げ続けた。サムライヘルムのベンツ2台が、ハイエナめいて交互に追い回してきた。ハシバは窓からの銃撃と驚異的な運転で、どうにかここまで逃げた。「……息が苦しくて死にそうだ」盲目の不安を募らせたイルカが、そう呟いた。ハシバが問う。「何が欲しい」「ドスダガーか何かを……」 31

2022-11-23 23:03:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「使ってくれ」ハシバは前方とナビ情報に目を注ぎながら、ダッシュボードから無造作にドスダガーを取り出し、手渡した。「……ウッ!……ウッ!」イルカはそれを受け取ると、胸元のあたりを手探りし、ごわごわした布部分に穴を開けた。そして両手を突っ込み、びりびりと引き裂いた。 32

2022-11-23 23:06:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フゥーッ……」ヒレ状の手でイルカ頭部をフードめいて後ろに倒し、ジェイクが顔を出した。そして隣にいる命の恩人を見た。ハシバだった。ハシバもまた横を見た。イルカはジェイクに変わっていた。だが、それがイルカかジェイクかは、今のハシバにとって、もはやさほど大きな差異ではなかった。 33

2022-11-23 23:09:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ハシバは何かを納得したかのように頷き、また殺風景なアスファルト道路を見た。ジェイクも前を向いた。長い長い沈黙があった。「……なんで俺を助けた?」やがてジェイクが問うた。「……俺は啓示を受けたんだ。自分の愚かさに気づいた」ハシバがイルカに対して言い、その顔を苦痛にしかめた。 34

2022-11-23 23:12:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

次第にブレが増し、速度が落ち始めた。「どうした、まだパンキチ・ディストリクトだぞ」ジェイクが問うた。このままではヤクザベンツに追いつかれ、捕えられる。「ハァーッ……ハァーッ……ちくしょう……アクセルが踏みこめねえ……脚が折れちまったか……?」ハシバが言った。足元は血の海だ。 35

2022-11-23 23:15:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……俺が運転する。道を教えてくれ」ジェイクが言った。「わかった」ハシバは頷き、路肩に停止した。ジェイクがドアを開けて外に出た。重金属酸性雨。人気の無い長い長い道路。後方に不吉なヘッドライト。「ハァーッ……ハァーッ……」呻き声をあげながら、ハシバが助手席に這い映った。 36

2022-11-23 23:18:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……庶子!」ジェイクは一瞬躊躇した後、ヤクザカマロの運転席側に走り、ドアを開けて乗り込んだ。そしてハシバを助手席に乗せたまま、アクセルを踏み込んだ。足元で、びちゃびちゃと血の音が鳴った。「次を右……それから左……スラム街へ……」ハシバが息も絶え絶えに言った。 37

2022-11-23 23:21:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ここで……停めてくれ……」電脳麻薬製造工場の前で、ハシバが言った。そしてドアを開けて、よろめきながら降りた。「オイ、待てよ、何だここは。追いつかれちまうぞ」イルカが聞いた。「大丈夫だ、お前はイルカで、俺の中の幻覚だ。電子ノイズが生み出したヴィジョンだ。メッセンジャーだ」 38

2022-11-23 23:24:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ジェイクは背筋が凍えるような思いを味わった。ハシバは、精神を宇宙の彼方へ飛ばしてしまったようだった。「待て、俺はラッキー・ジェイクだぜ」イルカが言った。「ラッキー・ジェイク、あのクソ野郎め」ハシバは雨の中、電脳麻薬製造工場に向かいながら笑った。「あいつもイルカだったんだ」 39

2022-11-23 23:27:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「待てよ!俺が運転しただろ!オイ!」ジェイクは叫ぶが、ハシバには聞こえなかった。後方にヘッドライト光が見えた。ジェイクはニューロンがちりちりと焼けるような感覚を味わって、焦り、舌打ちし、ヤクザカマロを工場の駐車場に乗り捨て、スラム街に逃げた。そしてネオサイタマの闇に消えた。 40

2022-11-23 23:30:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ハシバは工場で働くハッカーを射殺しながら進み、電脳麻薬抽出イルカ水槽の前にやって来た。彼の耳はもう何も聞こえなかった。ただ内なる声と、イルカの発する超音波だけが、彼のニューロンを震わせていた。そして何かうわごとをいいながら、銃口を水槽内のイルカの頭に向かって突きつけた。 41

2022-11-23 23:33:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハシバ=サン!銃を下ろしてくれ!頼む!」すぐ近くにアベがいた。クローンヤクザとともに追跡してきたのだ。だがその声はハシバに聞こえなかった。ハシバがトリガを引く寸前……BLAMBLAMBLAM!アベたちの弾丸がハシバを撃った。ハシバの銃弾は水槽ではなく天井に突き刺さった。 42

2022-11-23 23:36:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ハシバは銃を取り落とし、全身から血を流し、浜に打ち上げられたマグロめいて口をぱくぱくと動かした。「キューンキューン!キューンキューンキューン!」イルカがインガオホーを告げるかのように鳴いた。「俺を哀れむのか」ハシバが開いた瞳孔でイルカを見ながら独りごちた。そして事切れた。 43

2022-11-23 23:39:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

大の字で天井を見つめるハシバを、アベたちが銃を構えながらぐるりと取り囲んだ。そして生命活動停止を確認すると、ウェイダにIRC通信を行った。「……サヨナラ……!」同じ頃、上空ではブラックストーンが爆発四散を遂げていた。その断末魔は、死の狂想曲の終わりを告げるかのようだった。 44

2022-11-23 23:42:00