「次世代の戦艦」シンファクシ級

1991年9月2日、その存在が明らかとなったユークトバニアの新鋭潜水艦「シンファクシ」は世界を震撼させた。「次世代の戦艦」、「ドラゴネット級の贋作」、そして「ラーズグリーズの悪魔」とも呼ばれたこの潜水艦はいかにして生まれ、そして消えて行ったのか。
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Benjamin Bortkiewicz @shedsstar_Mk2

1991年9月2日、当時のユークトバニア首相サマノフは首都シーニグラードで開かれた党大会においてアーセナルシップ構想の実証艦建造成功を発表した。潜水空母「シンファクシ」が初めて公にされた瞬間である。 pic.twitter.com/yQmwLD3Wkz

2019-09-02 22:53:21
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かねてから対立状態にあったオーシア・ユークトバニア両国は80年代初頭より冷戦に突入、二国間の軍事力は均衡を保つべく確証破壊戦略から相殺戦略、そして戦略防衛構想(SDI)へと発展していった。そして90年代に入ると両国の戦略兵器開発は恐竜的な進化を遂げる。

2019-09-02 22:54:09
Benjamin Bortkiewicz @shedsstar_Mk2

ICBMの長射程化、また両陣営内でのミサイルの分散配備が進む過程でミサイル迎撃技術は非常に高レベルなものとなっていた。つまり従来の防空システムの強化に加え、衛星搭載のレーザーや運動エネルギー兵器が宇宙に配備されたのである。

2019-09-02 22:54:50
Benjamin Bortkiewicz @shedsstar_Mk2

またこれらをかわすようにミサイル側も多弾頭化や軌道変更の柔軟性獲得、早期警戒衛星による探知の回避へと進化を遂げた。シンファクシ級潜水空母の開発も、こうしたミサイルのステルス性向上の一環であったと言える。

2019-09-02 22:55:36
Benjamin Bortkiewicz @shedsstar_Mk2

シンファクシ級潜水空母を生み出したアーセナルシップ(弾薬庫戦艦)構想は、80年代にユークトバニア海軍のレオノフ提督がオーシアのSDI構想に対抗する形で提唱したものだった。

2019-09-02 22:55:57
Benjamin Bortkiewicz @shedsstar_Mk2

この構想ではステルス性に優れた潜水艦が発射点の特定を困難にした状態でSLBMを発射、最も脆弱であるブーストフェイズでの迎撃を困難にすることが目的とされた。

2019-09-02 22:56:25
Benjamin Bortkiewicz @shedsstar_Mk2

加えてこの300メートル超の潜水艦は射程や用途の異なる多種多様な戦略・戦域・戦術ミサイルをこの一隻に集約して搭載し、随伴艦や衛星を経由した発射管制を行うことで多面的な攻撃を可能としたほか、近接戦闘時に威力を発揮する「新型弾頭」のミサイルやVTOL艦載機も搭載することとなった。

2019-09-02 22:57:13
Benjamin Bortkiewicz @shedsstar_Mk2

かくしてオクチャブルスク近郊の秘密都市で建造されたシンファクシは1991年のこの日に世界に公表され、国内外から大きな注目を集めた。

2019-09-02 22:57:30
Benjamin Bortkiewicz @shedsstar_Mk2

ユークトバニアの中央党機関紙ポエスエディテはこの潜水艦を「潜水艦の隠密性と空母の機動性、そして巡洋艦の制圧力を凌駕する『次世代の戦艦』」として高く評価した。 pic.twitter.com/GqgBQKMQjs

2019-09-02 22:58:01
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Benjamin Bortkiewicz @shedsstar_Mk2

一方、オーシアのハワーズ外務大臣は「大山鳴動の極みであり、評価に値しない」とし、またFCUが保有するドラゴネット級潜水艦の贋造であると牽制した。 pic.twitter.com/6Rn1K2a66Y

2019-09-02 22:58:55
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しかし実際のところ、シンファクシ級が持つ能力はオーシア側の迎撃能力を上回る可能性が指摘されており、当時のオーシア国防総省高等研究計画局は新たなカテゴリーである「大気機動宇宙機」を考案、これによってあらゆる発射フェイズでのミサイル迎撃を可能にすることを計画した。

2019-09-02 23:00:02
Benjamin Bortkiewicz @shedsstar_Mk2

余談ではあるが、冷戦の象徴であったこの大気機動宇宙機が紆余曲折を経て後の「アークバード」へ繋がることとなる。 pic.twitter.com/u2PEOPmk03

2019-09-02 23:01:33
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またこの日の党大会では2番艦以降の建造計画が始動していることも明らかにされた。その結果生まれたのが2番艦「リムファクシ」である。リムファクシはシンファクシとほぼ同等の性能を有していながら高度に無人化されており、同等の大きさの船体を僅か40人で運用することが可能であった。 pic.twitter.com/QjvA7K1hfM

2019-09-02 23:03:55
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また艦載機も無人化されており、専らVLSから発射される無人戦闘機によって航空作戦を行う。またこれに伴って後部のフライトデッキならびにヘリパッドは撤去されている。 pic.twitter.com/hARgxkZVqH

2019-09-02 23:05:03
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かくして登場した2隻のシンファクシ級潜水空母であったが、冷戦の果て、世界の終わりにその威力を発揮することはなかった。代わりに冷戦を生き残った2隻はその後、環太平洋戦争で初の実戦を迎える。

2019-09-02 23:08:42
Benjamin Bortkiewicz @shedsstar_Mk2

いずれもその特性を生かし、オーシア軍、特に海軍戦力に多大なダメージを与えることに成功したがシンファクシは2010年10月4日のヴァンガード作戦で、リムファクシも同年11月14日のロングハープーン作戦で戦没している。こうして、ユークトバニアが誇った「次世代の戦艦」はこの世から姿を消した。

2019-09-02 23:13:03