バトル・オブ・セイクリッド・ホウチョウ 第2夜

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
0
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

苦しむオンゾ!(これ以上は!)アキジは腰を浮かせ、ナース・コールのボタンを押した。ショウジ戸が開き、ナースが部屋に走ってきて、すぐさま処置を行う。ナースはアキジに目で合図し、出ていくよう指示した。アキジは黙って頭を下げ、退出した。……それが、オンゾとの最後の面会となった。 10

2022-12-14 23:09:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……オンゾ=サンは、貴方を最後まで気にかけてらっしゃいました」アキジの精神は過去から戻った。極限の状況下へ。「魔包丁に心囚われた貴方が、人の道を踏み外すのではないかと」アキジはブラックウインドの目をまっすぐに見据え、言った。「……踏み外しちまったんでやすか、ゾンゴ=サン」11

2022-12-14 23:16:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「踏み外すだと?ああ、そうだ」ブラックウインドは店内を見渡す。黒塗りのスシ・バー。カウンターには六人の客が座っている。……座っているのではない。座らされている。彼らは椅子にベルトで固定されている。出来る動作は、口を動かしスシを食べる事だけだ!「アイエエエ!」「だれか、助けて!」12

2022-12-14 23:20:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハハハハッ!哀れなクズどもだ!」ブラックウインドはせせら笑った。「そして、奴らがこんな事になっているのも、全て貴様のカルマだ。アキジ=サン!貴様が全ての発端なのだ!どうすれば貴様を真の意味で殺すことができるか、俺は考え続けた。そして答えに辿り着いた……!」彼は客たちを示した。13

2022-12-14 23:24:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「助けて!」「何でもしますから!」客達はもがいた。頭を動かす事もできない。動かせるのは口だけだ。「そうだ!何でもしてもらうぞ、貴様らには!」ブラックウインドは叫び返した。そしてアキジを睨み、じっとりと言った。「……こいつらは、大事な審査員だ。これから行われるスシ勝負のな……」 14

2022-12-14 23:27:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「勝負の、審査員」「そうだ。こいつらは、そこらをただ歩いていた無辜の市民に過ぎない。舌も肥えていない、本能で生きる、数時間前には自分がこんな目に遭うと想像すらしていなかった俗物どもだ!」「アイエエエ!」「助けて!俗物です!」椅子の六人は騒ぎ、もがいた。だが、びくともしない。 15

2022-12-14 23:31:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ククク……こいつらには大事な仕事を任せる。俺のスシが貴様のスシより美味いと審査する事だ。俺を勝たせない奴は、その場で殺す」ヒュヒュン!彼は包丁じみた鋭利なチョップで風を切った。「殺さないで!」「助けて!」「絶対に貴方のスシが美味しい!」「事前に約束します!」悲鳴を上げる客! 16

2022-12-14 23:34:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……とまあ、見ての通り審査結果は100%わかりきったものになる。……そして!」ブラックウインドは店内を歩き回る。「貴様が負けた場合は、そのたびに」彼は奥のザシキを示した。闇の中に、キモノ姿の女が正座していた。俯き、意識がない。「そのたびに、この女を切り刻む」「……ユミメ=サン」 17

2022-12-14 23:40:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アキジは低く、女の名を呼んだ。ブラックウインドは声を低めた。「そうだ。貴様の愛する女だ。どう転んでもジゴク。そういう艱難辛苦(かんなんしんく)にからめて貴様を殺し、父の弔いとする」「……わかりやした」アキジは頷いた。「だが、勝負の決まり、守って頂きやす」 18

2022-12-14 23:46:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何!?」思いがけぬアキジの潔さに、ブラックウインドは怯んだ。「理解していないのか?」「委細承知しやした」アキジはワ・シ契約書にハンコを押した。「自分、不器用です。ですから、今回のスシ勝負で貴方を負かし……貴方がこれ以上、人の道を踏み外さぬように、致しやす」「き……貴様……」 19

2022-12-14 23:50:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ユミメ=サンは自分と関係ありやせん。実際、自分は彼女には到底釣り合わないんです。自分、つまらん男です。そしてこの大層な包丁にも」アキジは布を解き、ドラゴンの包丁をあらわにする。リイイイン……。ドラゴン聖獣包丁がクィリンの神獣包丁に共鳴している!? 20

2022-12-14 23:53:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アキジは不思議そうにドラゴン包丁の刃に触れた。「やはり自分には過ぎた宝だ。だけど今、わかりやした。貴方を止める為に、自分、この宝を授かったんだと、思います」「この期に及んでこの俺に……勝つ気か!」ブラックウインドは目を血走らせ、拘束審査員六名を見やった。アキジは頷いた。「はい」21

2022-12-14 23:58:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ブラックウインドは全身から凶悪なキリングオーラを放った。だが彼もまたハンコを押した。血に塗れた呪われしニンジャにも、最後の一線と言うべき礼儀作法、契約遵守の精神が残っていたのである。彼らはそれぞれの厨房エリアに入り、包丁を構えた。ここに、凄絶なるスシ勝負が幕を開けた……! 22

2022-12-15 00:01:32