松井ドンキーノ氏( @researcher001 )による回転寿司考

松井ドンキーノ氏( @researcher001 )が回転寿司屋に入店しどう振る舞うべきか、寿司ネタについて、そして最後の一皿はどう選ぶのかまで、深く鋭く考察されていましたのでトゥギャりました。
3
松井ドンキーノ @researcher001

【回転寿司1】 回転寿司の話をする。六本木のビルの4階にある異様におしゃべりな大将が営む寿司屋でもなく、上野にある狭い小さな回転寿司でもなく、郊外のヨーカドーの裏手にあって家族連れが集まるような回転寿司の話である。

2011-10-17 21:54:39
松井ドンキーノ @researcher001

【回転寿司2】 外食店における回転寿司の位置は独自のものである。チェーンのハンバーガーショップが持つ諦めや、個人経営の焼肉屋が持つようなスペシャル感があるわけではない。もうこれは『回転寿司』としか言いようが無いひとつの古典なのである。

2011-10-17 21:57:07
松井ドンキーノ @researcher001

【回転寿司3】 さあ回転寿司屋の暖簾をくぐろう。『もっといい寿司が食べたい』と思ったあなたはここから先を読んでも有用な情報を見つけることは無いだろう。私が話すことは寿司ではなく、回転寿司なのである。これは全く異なるジャンルなのだ。絵画と音楽を同時に計る尺度が存在するだろうか。

2011-10-17 21:58:13
松井ドンキーノ @researcher001

【回転寿司4】 暖簾と自動ドアを潜って席に着こう。備え付けのお茶を自動で汲むことが出来る機械で濃いお茶を入れよう。もう食事は始まっている。席に座った直後に寿司をつまむことが出来ることもまた回転寿司の大きな魅力の一つである。

2011-10-17 22:00:14
松井ドンキーノ @researcher001

【回転寿司5】 しかし、待ってくれ、落ち着いて欲しい。寿司屋で最初に頼むのは玉子が良いらしいがここは回転寿司だ。圧倒的な選択肢の中から選ぶことが出来るフリースタイルレストラン、飯の博覧会場なのである。焦ってはいけない。物事にはルールがあるのだ。

2011-10-17 22:02:02
松井ドンキーノ @researcher001

【回転寿司6】 まずはアラの味噌汁と茶碗蒸しを頼んで欲しい。アラの味噌汁は安価で非常に旨い。茶碗蒸しは回転寿司屋には何故かあってこれもスベリ知らずで端休めとしても一流である。この二つを最初に選ぶことで”リズム”を作り出すのだ。回転寿司屋の持つ独自のスピード感に飲まれてはならない。

2011-10-17 22:04:14
松井ドンキーノ @researcher001

【回転寿司7】 回転寿司屋は安価な大衆食堂でもあるが同時に古典の一つなのだ。覚悟がないとその雰囲気に呑まれるのである。なんとなく流れてきたものを取り、上滑りするように皿を重ね、自らを出し切ることなく満腹になり終わってしまう。これ以上に悲しい回転寿司があるだろうか?いや、ない。

2011-10-17 22:07:24
松井ドンキーノ @researcher001

【回転寿司8】 回転寿司は客に回転寿司的であることを求める。回転寿司はあなたに完璧な回転寿司であることを求めているのである。的は絞れているか?皿を重ねる覚悟は?終わりまでの道筋は見えているか?オーケー、やっと始められる。さあまず、一皿目だ。

2011-10-17 22:11:31
松井ドンキーノ @researcher001

【回転寿司9】 まず一皿目だ。ここから先にどのように皿を重ねることになるのか(回転寿司では寿司が皿に乗っているので多数食べることを『皿を重ねる』と表現する)を占う試金石となる一皿目である。それには納豆巻きかアボガドシュリンプのどちらからか選びたい。

2011-10-17 22:13:36
松井ドンキーノ @researcher001

【回転寿司10】 納豆巻きは完成された料理の一つなのであらゆる店においてほとんど差は出ない。なにより極めて『回転寿司的』なのである。もちろん軍艦の納豆巻きでもいい。ウズラの卵が乗っていたら完璧と言える。

2011-10-17 22:14:44
松井ドンキーノ @researcher001

【回転寿司11】 アボガドシュリンプも創意工夫に富んでいる素晴らしい一品である。安価な回転寿司屋のネタは残念ながら質が高くない。料理の評価は8割素材で決まるということは有名な話しであるが、このアボガドシュリンプはそこから真っ直ぐノーと答えた一品なのである。

2011-10-17 22:17:09
松井ドンキーノ @researcher001

【回転寿司12】 一皿目は言うならば回転寿司と拮抗するための一皿である。二皿目以降は自らの色を出して食べるべきだ。修学旅行における自由時間のようなものである。上級者であれば自らのルートがすでに存在し、それを守るのも逸脱するのも自由に楽しめは良い。しかし初心者は?

2011-10-17 22:19:30
松井ドンキーノ @researcher001

【回転寿司13】 あなたが押し引き自在の蓮っ葉な不良の大人のような回転寿司上級者であれば問題はないが、初心者はそうはいかない。初心者はまずゆっくり、転ばないように、一歩一歩踏みしめるように皿を重ねるべきなのである。つまり、焼きサーモンである。

2011-10-17 22:21:14
松井ドンキーノ @researcher001

【回転寿司14】 焼きサーモンは科学技術の寿司だと言える。そもそもサーモンが回転寿司に登場したのは15年以内のことだと記憶する。たしかサーモンにはアニサキスという危険な寄生虫がいるので生食は不可能だったのだ。それが15年の間に食べれるようになった。そして安価で抜群に旨いのである。

2011-10-17 22:23:44
松井ドンキーノ @researcher001

【回転寿司15】 ほかに外せないネタとして『エンガワ』が存在する。エンガワとはヒラメの側面のビラビラ部分で脂が乗っていてかつしっかりとした食感を持つ高級品であり、まあこれがべらぼうに高い。しかし回転寿司では105円というありえないほどの安価で供されることが多い。どういうことか。

2011-10-17 22:26:39
松井ドンキーノ @researcher001

【回転寿司16】 嘘か本当かは定かではないのだが、回転寿司のエンガワはヒラメのそれではなく『オヒョウ』のエンガワなのである。オヒョウとは近海で取れる魚でなんと体長2.5メートルを越えることもある化け物みたいな魚である。メニューはエンガワと記されているだけなので何も間違えていない。

2011-10-17 22:33:13
松井ドンキーノ @researcher001

【回転寿司17】 念のため『赤身』と『イカ』の話もしよう。スーパーのパック寿司に高確率で詰め込まれている彼らは長年連れ添った夫婦でありながら個性を失わないというか、中学時代の同級生というかとにかく安定感がある仲間たちである。

2011-10-17 22:34:23
松井ドンキーノ @researcher001

【回転寿司18】 回転寿司には物語が存在しない。賢い大学に通うカップルの別れ話が回転寿司で行われるかどうか想像してみればわかる。絶対にないだろう。インテリカップルはお菓子は美味いが人が多くてやかましいカフェで落ち着いて別れ話しをして泣きも喧嘩もせずに静かに別れるのである。

2011-10-17 22:36:26
松井ドンキーノ @researcher001

【回転寿司19】 回転寿司屋にはたしかに物語は存在しない。だが思い出が入り込む余地はある。父が幼い私を外食に連れ出すときは必ず回転寿司だった。私は主に納豆巻きを、父は赤身とイカだけを食べた。赤身とイカについては思い出も一緒に味わっている。

2011-10-17 22:39:30
松井ドンキーノ @researcher001

【回転寿司20】 さて腹は膨れて来ただろうか。ある人は思い通りに食べ、不慣れなある人は頼んでみたものの食えないほどマズいものに当たったりしたかもしれない。その判断は間違っていたか。否、それらは全て正しいのである。判断の本質は間違いであり、どのような道をたどろうと今ここにいるのだ。

2011-10-17 22:41:46
松井ドンキーノ @researcher001

【回転寿司21】 あなたは思考し、自らの舌と対話し、その二つの間を抜ける細い道を通ろうと努力し、皿を重ねてきた。あなたの重ねた皿が間違いのわけがない。あなたはどのような判断をしようと今のこの重ねた皿の先にいるのだ。胸を張って欲しい。俺は間違っていないと胸を張って欲しい。

2011-10-17 22:43:11
松井ドンキーノ @researcher001

【回転寿司22】 しかしそうは言っても人間である、最後の一皿、回転寿司という非日常を終え日常に戻るその最後の一皿は…決して間違いたくないものだ。これについてはいくつかのヒントを与えるに留める。どれを選ぶかは各自考えて欲しい。怖がることはない。自分の回転寿司を見つめるだけでいい。

2011-10-17 22:44:22
松井ドンキーノ @researcher001

【回転寿司23】 まずは『オーバーチュア方式』である。つまり最初の一皿と同じものを頼むのである。最初の一皿は回転寿司に拮抗するための一皿であった。それをあえて終わりに持ってくるというのも後を引く、しんみりとした良い幕引きではないか。また来たいと思わせる美しい終わり方である。

2011-10-17 22:48:07
松井ドンキーノ @researcher001

【回転寿司24】 次に『ジャンキー式』を挙げよう。これは言葉は悪いが麻薬中毒者の動きを模したものである。麻薬中毒者は同じ味でもっとキくやつを求める。つまり、今まで重ねた皿を思い起こし、最も優れていたものを頼むのである。派手な回転寿司を好む方にオススメの終わり方と言えよう。

2011-10-17 22:49:33
松井ドンキーノ @researcher001

【回転寿司25】 最後に『プリン』である。もう我々は正直になるときが来たのだ。寿司にプリン。寿司目線で考えると狂気の沙汰である。では回転寿司目線で考えるとどうか?これはもう寿司との決別という意思表示なのである。私は寿司ではない、私は回転寿司であるという強い意思表示なのである。

2011-10-17 22:51:20