ビースト・オブ・マッポーカリプス 前編 #4

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【このアカウントは】 ・サイバーパンク・ニンジャアクション小説「ニンジャスレイヤー」の最新話が連載されているぞ！ ・現在はニンジャスレイヤーAoMのシーズン４の最終章が連載中だ！

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【主な登場人物】 マスラダ・カイ：現在のニンジャレイヤー コトブキ：自我を持ったオイランドロイド タキ：情報屋・ピザ屋。夢やぶれたハッカー pic.twitter.com/LCFkWsmKG2

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【現在の状況】 ・現在のネオサイタマは緑に侵食されている ・ニンジャスレイヤーの敵、アヴァリスのせいだ ・アヴァリスはマルノウチ・スゴイタカイビルに君臨している ・決戦の時間は近い ・あとは過去ログとかまとめとかを今すぐ読んで！ pic.twitter.com/sz2B6tbd5L

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【ビースト・オブ・マッポーカリプス 前編】#4 pic.twitter.com/u5ID5GMZR3

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急カーブだ。タキはハンドルを切った。装甲ピザワゴンは吸い付くようなグリップ走行で、ガードレールすれすれに曲がっていく。「これで満足だろ」タキは横目でユンコを見た。助手席のユンコは物理キーボードをタイプし、遠くを見ながら、かすかに頷く。タキは感心した。（実際、大したもんだ）　1

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ユンコ・スズキ。ナンシー・リンの弟子、あるいは義理の娘。その肉体はオイランドロイドそのものだが、コトブキのように自我を得たオイランドロイドとは違う。あくまで元・人間。要は極端な話、身体やニューロンを全てサイバネ化した人間という事なのだ。タイピング速度も機械化の恩恵が大きい。 2

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ピザタキが難儀していた最中に、いきなりこの女が現れた当初は仰天したが、実際ユンコはナイスだった。余裕があり、感じがよく、フェイスレスを一気に片付けてくれた。なにしろユンコはいかついマシンガンを抱えて現れた上に、その身体の中にも武器を仕込んであったのだ。　3

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ニンジャスレイヤーもコトブキも居ない今、タキやザックの身を直接に守れる存在として、ナンシーが機転を利かせてくれた（タキはダッシュボードのモーターツクモを見た。所詮、ツクモは口が達者なだけのインテリア・ドロイド野郎なのだ）。『タキ＝サン、私に何かご不満が』「いや、何でもねえよ」　4

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ニンジャスレイヤーがメイヘムを打ち破り、ユンコがピザタキにやってきて以来、タキはこの装甲ピザワゴンでネオサイタマを走り回っている。これから行う「仕掛け」に際しては、一箇所に留まれば、リスクが無限に増大する。セトは神話時代のリアルニンジャであると同時に、極めて強大なハッカーだ。　 5

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インターネットは古事記の時代から存在していた。高慢な文明人が後から再発見しただけ……そういう話だ。神話時代からそれに慣れ親しむセトは、はしゃいだ猿を嗜めるように、ハッカーのIPを即座に辿り、息の根を止めてしまう。セトとその隠れ蓑たるエネアド社の過去の動きを探るだけで、背筋が凍る。 6

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（なんでこういう事になっちまったかな）タキは自問する。ハンドルを握る己の手。その指先は黒い。バイオイセエビの殻を剥いて育ち、ハッカーをやってドン詰まり、死ぬような目に遭った挙げ句、ニンジャスレイヤーに助けられた。そうこうするうち、今度の相手は都市を緑に沈めた半神めいた存在だ。　7

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ニンジャスレイヤーは古代ニンジャと抗争を始めた。ピザタキのカウンターでエッチ・ピンナップ片手に応援しているだけで済めばよかったが、そうは問屋が卸さないらしい。割り当てられた仕事がある。端的に言えば、セトのエネアド社にケンカを売れというワケだ。『タキ＝サン、不安が？』「そうだよ」 8

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現在のネオサイタマを覆うネットワーク障害は、その実、エネアド社の策謀なのだという。ネオサイタマは無数の暗黒メガコーポやヤクザ組織の、相互に喰らい合うパワーバランスの上に成り立っている。それを横紙破りするような乱暴な真似を、エネアドはしている。セトには文明人の都合など無意味だ。　9

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ニンジャスレイヤーはネオサイタマ中をフィルギアと共に走り回り、アヴァリスの分身とやらを狩っている。待っていればいずれアヴァリスとの決闘の火蓋は切られるが、黙ってぼんやり待っているわけにもいかないようだ。コトブキは……スゴイタカイビルに潜り込み、消息を断った。非常にまずい。　10

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ナンシーの話では、「楽観視は出来ないが、絶望するには早い」……要は、このクソッタレ通信妨害をどうにかしなければ、何の安心も出来ないのだ。ニンジャスレイヤーとの通信が確立するタイミングも、こうも限られては、連携に支障が出る。ユンコで対処できない状況に陥った時にSOSもできない。　 11

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「平気か？ユンコ＝センセイ」タキはユンコに語りかけた。ユンコは半ばトランス状態にある。ツクモが『平気よ』のホロを照射した。ツクモを通して、ネットワークに没入しているユンコが答えた。『だけど、そろそろ攻勢に転じなくちゃ。あとどのくらいで到着する？』「任せろ。もうすぐだ」　12

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タキはアクセルを踏み込み、立体交差点を走り抜けた。奇妙な黒漆塗りの建物が視界に入る。「オイ、見えたぜ！」侵食する植物の姿が、このエリアにはない。ここはジグラット富士が作り出した安全地帯の範囲外だ。しかし植物がない。かわりに、黄金立方体の光がいやに強い。タキは目眩と戦う。　13

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黒漆塗の建造物は、エネアド・ネオサイタマ支部のメインビルディングだ。そこから大通りを挟んだ反対側に、廃墟じみた多層コンクリート建築がある。立体駐車場だ。ナビゲーション地図にユンコがマーカーを打ったのは、その立体駐車場敷地内である。「なあ、マジであそこでやるのか？絶対ヤバいぞ」　14

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『ヤバいけど仕方ない』ユンコはトランス状態でタイピングしながら答えた。『エネアド社のWi-Fiを拾うなら、最低限あそこ。さすがに黒いビルの中に突っ込んで作業する勇気は、私にはない。タキ＝サンにはあるのかもしれないけど』「あるわけねえだろ！チクショウ、もう知らねえ」ハンドルを切る。　15

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「ユンコ＝センセイ、アンタ、ネオサイタマに詳しくないんだろうけどよ」タキは立体駐車場に車を進めながら、身を縮めた。「こういう明らかに管理されてねえ立体駐車場ってのが幾つもあってよォ。そこは十中八九、ケモノパンクスの過激派やサイコパスどもの巣になってんだ。まして今はこんな状況！」16

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『わかってる。機転を利かせるしかないね』「アー……まあそうだ。たとえばアンタのマシンガンとか」上層へ上がるルートには廃車や廃UNIXが山積みにされており、バリケードじみている。さっそくの洗礼だった。『地下に入って』「ホントにフェイスレスは居ねえンだな？」『ナンシー＝サンの話ではね』17

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「まあ、いいさ」タキは鼻を擦った。ナンシー＝サンはタキを信頼して、このミッションを任せた。ナンシー＝サンの信頼には応えねば。……ワゴンはゆっくりと坂を下り、地下スペースに入る。闇が揺らめいていた。なぜなら……おお、ナムサン。ドラム缶焚き火がそこかしこにあるからだ。暑く無秩序！　18

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不気味に揺らめくドラム缶焚き火の明かりが、壁に描かれた危険なグラフィティ「バカ」「スゴイ」「ちょっとやめないか」を不規則に照らし出す。「ホーッ！」「ホーッホーッ！」そして車内にも届いてくるのは、住人たちの嬌声！燃やしたクルマの周りで踊る、サイバネ・ヨタモノ達だ！「ホラ居たァ！」19

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タキはユンコの肩を揺さぶった。「センセイ！いったんジャックアウトしろって。マシンガン頼むって！」ユンコがガクガクと揺れた。『いけません』ダッシュボードのツクモが叱った。『ユンコ＝サンは重点作業中です』『タキ＝サン！ヤバイよ』後部スペースのザックが通信を入れた。『どうすんだよ！』20