すいこばなし【北方謙三水滸伝・楊令伝小噺集】2023年度まとめ

すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

店員「トッピングお願いします」 穆凌「全部普通でお願いします」 班光「野菜多め脂少なめニンニク抜きで」 史進「…」 班「史進殿は？」 史「野菜抜き脂塊味濃すぎニンニク泰山で頼む」 班「なんですかそれは!?」 史「小僧どもと格の違いを見せてやる」 店「お待たせしました」 穆「!?」 班「臭い！」

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穆「もう当分行きたくない…」 班「私は金輪際行きません」 史「小僧どもめ」 穆「!?」 班「ありえない臭気です、史進殿！」 史「食らえ！」 穆「」 班「…穆凌？」 史「この程度で失神するとは」 班「鼻息まで臭い！」 史「覚悟しろ、班光」 班「戦の前に死にたくない！」 ？「そこまでにしろ、史進」

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史「!?」 公孫勝「…なんという臭いだ」 班「公孫勝殿！」 史「何しに来やがった！」 公「あまりの臭気が気になってな」 史「暇な野郎だ」 公「そうかな」 楊令「公孫勝！臭いの源は？」 史「楊令殿!?」 公「ここだ」 楊「良かった。疫病で死んだ民の腐乱死体が散乱した地獄を想像していた」 史「！」

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史進…真顔で楊令に諭されさすがに落ち込んだ。 班光…穆凌の意識が戻らなくて… 穆凌…死線を彷徨ったが、呼延賛に叩き返され無事生還。 公孫勝…童貫なら三十里離れても分かる。 楊令…俺たちが童貫軍なら遊撃隊は壊滅だったからな。 店員…異次元の麺を提供する麺屋。初見で一人はお勧めしない。

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安道全「雪だな」 白勝「思い出すな、安道全」 安「なにを？」 白「脱獄した時のことさ」 安「…そんなこともあったな」 白「今だから聞けるけどよ」 安「…」 白「俺の腸ってどうなってた？」 安「脱獄前に死んでて何ひとつおかしくなかった」 白「そうだったのか」 安「白日鼠の腸は出来が良かった」

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白「なるほど。腸の出来が良すぎた分、頭が悪くなっちまったってな」 安「そういうつもりで言ったのでは…」 白「冗談さ、安先生」 安「…私なんかに先生をつけないでくれないか、白勝」 白「俺の医術の師匠なら、先生とかつけて呼ばねえとおかしいはずなんだが」 安「私はお前にそう呼ばれたくない」

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白「…つくづく不思議な縁だよな、俺たち」 安「全くだ」 白「一生の友達が、師弟になったが」 安「私からすれば、お前が弟子だろうと一生の友達だからな」 白「ありがとよ」 安「…」 白「で、もう一人いなかったか？」 安「あれはただのバカだ。話にならん」 林冲「なんの話をしている、お前たち？」

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安道全…お前でもしもやけになると痒くなるのか、林冲。 白勝…バカでも痒くなるんだな。 林冲…貴様ら俺をバカにしすぎではないか？

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張藍「林冲様のファッションセンスを向上させるのに力を貸してください、侯健殿」 侯健「…私はあなたの因縁ありまくる開封府に来てまで、そのような依頼をされに私の所へ来られた事に心から驚いています」 張「そういえば、見たことのある高俅の部下の顔を三、四個見ました」 侯「洒落にならねえ…」

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張「林冲様。侯健殿の所であなたのファッションセンスを向上させるハウツーを学んで参りました」 林冲「…侯健は開封府にいるのではないか？」 張「そんなことはどうでもいい」 林「」 張「まず百銭ショップでも売ってないような着物を全て処分してから始めますよ」 林「なんだと！」 張「断捨離です」

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林「お前は旦那が大切にしている趣味のプラモデルやモデルガンをしこたま捨てるような酷い妻の真似ができるというのか、張藍！」 張「彼女らはまだしも、私はあなたのファッションセンスで実害を被っておりますので」 林「勘弁してくれ！」 張「私なら十着百銭でも買わない代物ばっかり」 林「酷い！」

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張藍…こんな着物なんてデザインしただけで斬首される代物なのに、こんな着物を買うものの顔が見たいです。 林冲…俺の顔を忘れたというのか、張藍！ 侯健…高俅の採寸中に、張藍を見たという噂が飛び交ってて冷や汗が止まらなかった。

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林冲「ペアルックの着物を買ってきたぞ、張藍！」 張藍「嫌です」 林「まだ柄も見ていないではないか！」 張「どうせろくなものではないのでしょう？」 林「何を言うか！二人で着れば見事な柄が完成され、永遠の愛を司ることができる着物だというのに！」 張「早く見せなさい」 林「ちょろいな、張藍」

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張(デザインこそクソダサでも、林冲様と永遠の愛を司ることができるなら…) 林「待たせた、張藍」 張「」 林「これで我らの永遠の愛が」 張「林冲」 林「…なぜ怒っているのだ、張藍」 張「私と並んで立ちなさい」 林「それは？」 張「林冲の質問を禁じます」 林「」 張「速やかに」 林「！」 張「…」

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張「私と並んで立ってお気づきになられたことは？」 林「ハートが完成しないではないか！」 張「お店の人に言われませんでした？」 林「…そんな気がする」 張「私はどうしたら…」 林「閃いたぞ！張藍！」 張「…どうぞ」 林「俺が背中を向けばハートが完成する！」 張「記念撮影の時は？」 林「!？」

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張藍…腕力で着物を引き裂く日が来るなんて… 林冲…しょんぼ林冲極まった日になったという。

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史進「俺の肉体は、あらゆる打撃や損傷を弾き返すほどの強さがある」 班光「…」 史「俺の着物は、世の中の羞恥や偏見から身を守ることが出来るほどの効力がある」 班「史進殿」 史「なんだ」 班「それだけ誇りに思うご自身の肉体をお持ちならば、着物を纏って世間の目を気にする必要はないのでは？」

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史進…これが矛盾脱衣だ。 班光…なんでこんな寸劇やらされてるんだろう…

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宋江「このカードはすごいぞ、盧俊義！」 盧俊義「これは？」 宋「マイナンバーカードだ！」 盧「…？」 宋「発行するだけで二貫ポイントも振り込まれるしな」 盧「…」 宋「今年の確定申告もあっという間に終わったのだ！」 盧「宋江殿」 宋「お前も早くカードを」 盧「我らはどこに納税するのだ？」

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宋「どこへとは？」 盧「…」 燕青「もしやそのカードは宋国の民が発行する代物ではありますまいな」 宋「あ…」 盧「大至急呉用に知らせろ、燕青」 燕「はい」 宋「…」 盧「宋国の民が納税する先はどこかな？」 宋「…宋国だ」 盧「では宋国の叛徒である我らは一体どこに納税できるのだ？」 宋「…」

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燕「呉用殿に報告したら卒倒されたのでまず養生所へ連れて行きました」 盧「やむなしか…」 宋「…」 燕「蔡兄弟に宋国総務省サーバーをパンクさせるよう連絡しておきました」 盧「とにかく時間を稼げ！」 李富「？」 聞煥章「どうした？」 李「梁山泊の宋江という者から確定申告書？」 聞「バカな」

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宋江…梁山泊への納税ではなく罰金を課されてしょんぼり。 盧俊義…迂闊に宋江殿と相談もできんな。 燕青…リテラシー以前の問題ですよ。 李富…梁山泊が我らに納税を？ 聞煥章…くだらん悪戯だ。相手にするな。

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林冲「呉用殿、いいか？」 呉用「どうした、林冲」 林「名札を増やしてほしい者がいる」 呉「…まだお前の騎馬隊にこれといった将校はいないはずだが」 林「ああ。将校ではない」 呉「…ではどのような者だ？」 林「旗手だ」 呉「旗手…」 林「郁保四という」 呉「…お前が認めるほどの者なのだな？」

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林「悔しいが、郁保四以外の者に、俺の騎馬隊の旗手を勤めさせるつもりはない」 呉「死んでもか？」 林「奴は死んでも旗を手離すことはないだろうな」 呉「…」 林「…」 呉「分かった。蕭譲と金大堅に頼んでおくよ」 林「礼を言う、呉用殿」 呉「…すまんな、林冲」 林「なにが？」 呉「大変だろう」

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林「よく分からん」 呉「騎馬隊の将校がいないままではないか」 林「俺の騎馬隊だ。適当な輩を置かれるようではかえって困る」 呉「どのような者がほしい？」 林「…そうだな」 呉「…」 林「俺の様ながさつな男の手助けをしてくれる者」 呉「…」 林「俺が助けたくなる者、兵を癒す何かがある者だな」