ビースト・オブ・マッポーカリプス 前編 #7

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ。ガーランド＝サン。インシネレイトです。小言言いに来たンスか？」「小言？俺はお前と同格。なぜそんな面倒をする必要がある」「じゃあ何しに来たんだよ。オヤブンに言われて、俺の邪魔しに来たのか？俺、止まらねえスよ。ソウカイヤはネオサイタマを纏めてんだ。ナメられたら、殺る！」43

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「MOVE！MOVE！」展開するエネアド援軍を、「イヤーッ！」「アバーッ！」インシネレイトはカトンで焼き殺した。当然だろ、と言う顔をガーランドに向けた。ガーランドは言った。「エネアドはネオサイタマのルールを逸脱している。以前からの企業領域をネオサイタマ内に持たぬ連中……」「でしょうが」44

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「MOVEーッ！」「イヤーッ！」「アバーッ！」突撃してきたエネアド兵の首をガーランドは得物のクナイ・ウィップで縛り殺し、インシネレイトの背中につく。「連中はネオサイタマが諸企業の分割統治だと勘違いしている。その論理に沿って、国取り感覚で動いているのだろう」「だろ？ヤッて理解させる」45

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二者は敵を倒しながら前進を開始した。「我々ソウカイヤは現在、重点ミカジメ保護地域の安全確保に人員を駆り出されている。エネアドの横紙破りに関しても、目下オヤブンは対策を検討しているぞ」「それじゃ遅いンだ。ナメラレチャラシコラ。弱腰ッつわれたら遅いンス。俺が悪名、引き受けますわ！」46

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「引き受けるだと？」「俺がイケイケで暴れりゃよォ。チバ＝オヤブンも動かざること火の如しだ。動く口実作ります。これがゴッドヤクザのやり方スよ。文句あンなら言えよガーランド＝サン。俺は不動明王だ！」襲ってきたエネアド兵の顔を掴み、持ち上げたまま、彼はガーランドに顔を近づけ睨んだ。　47

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「お前が不動明王かどうかは知らんが」ガーランドは顔を離さず真顔で答えた。「お前の行いを止めはせん。オヤブンにもその調子で弁明する気だろうが、横で聞かされる身にもなれ」「チッ……」「どのみち、この状況の打開は必要だった。ならば、お前の動きを活かす。見ろ」彼はタワーを指し示した。　48

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「俺はエネアドの裏工作を調査してきた。ネオサイタマの大規模通信障害を拡大させているのは彼奴らだ。あのWi-Fiタワーを見ろ。エネアドがこの地を占拠する最大の理由はあれだ。各地で仕掛けをして通信を遮断。諸企業を孤立させ、独自の協定を結ぼうと動いている……というのがオヤブンの結論だ」 49

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「ハ！要は俺が大正解じゃねえかよ！」インシネレイトはいきり立ち、炎と共に飛び上がった。低層建築の屋根に着地し、銃弾飛び交う中、彼は凄まじい勢いで、チョウチン・タワーをめがけ走り出した。ガーランドはかぶりを振った後、自らも後に続いた。「イヤーッ！」二者は疾走し、タワーに跳ぶ！　50

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「イヤーッ！イヤーッ！イヤーッ！」屋根上のエネアド兵をガーランドが倒してゆく一方、インシネレイトはカトンの推進力で高く跳び直し、タワーの鉄骨に掲げられたエネアド紋の装甲パネルに取り付いた。「あらためて刻んだるわ！クロスカタナをよォーッ！」叫びと共に、炎と化す！KRA-TOOOOOM！　51

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巨大なクロスカタナが空を焼き、チョウチン・タワーが歪んだ。010011……タワー鉄骨に据え付けられた無数のモニタが、IRC通信映像を受信し始めた。インシネレイトは燃えるジャケットを捨て、背中の不動明王の刺青を光らせながらガーランドを見下ろし、勝ち誇った。頷くガーランドを見て満足した。　52

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そして彼は視線を転じた。「あン？」そしてもう一度ガーランドを見、腕を振って合図した。ガーランドはインシネレイトの示す方角を見、身構えた。「AAAAARGH……！」チョウチン・ディストリクトに接する侵食森の中から、巨大なクロヤギが身をもたげた。およそ20メートルはあろうかという巨体だった。53

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「AAARGH……！」DOOM。DOOM。地震じみた地響きを伴い、非現実的巨体のクロヤギ・ニンジャがチョウチン・ディストリクトに向かってくる。「アイエエエ！」「ア、アイエエエ！？」市民ばかりか、なおガーランド達に襲いかかろうとしていたエネアド兵も、烏合の衆じみて武器を取り落とし逃走を始めた。54

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フェイスレスが進化するクロヤギは、ある者はスモトリサイズ、ある者は異様な手足の長さ、ある者は数メートルのサイズをまちまちに取る。だが、このクロヤギは実際規格外であった。「ふざけた真似を」ガーランドは呟き、眉根を寄せた。対処せねばならない。「AAARGH！」巨人は緑無き領域に侵入！　55

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ジグラット富士の作る安全地帯はフェイスレス達を忌避せしめるが、不可視の障壁は絶対のものではない。もがくように腕を動かし、クロヤギ・ニンジャは低層建築を押し潰しながら入り込んだ。「アイエエエ！」「アババーッ！」悲鳴！轟音！ガーランドは巨人をめがけ走り出す！そしてインシネレイト！　56

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「イイイイヤアアーッ！」インシネレイトはチョウチン・タワー制圧の高揚感に任せ、一切の躊躇なく、クロヤギの巨人めがけ跳躍した。クロヤギの巨人は実際、インシネレイトに向かってきていた（走りながら、ガーランドはその挙動をやや訝しんだ）。インシネレイトは跳びながら炎を纏った！　57

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「ワメッコラーッ！」炎塊と化したインシネレイトがクロヤギの巨人に迫る！クロヤギの巨人はインシネレイトに右拳を叩きつける！KRA-TOOOOM！巨人の拳が爆発し、手先が消失！「AAAAARGH！」怯み、たたらを踏むと、地響きがディストリクトを駆け抜ける！「アイエエエ！」転倒する路上逃走市民！　58

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「もう一発……」インシネレイトは空中、消失した自身の炎を再び充填すべく身を捻った。だがクロヤギの巨人の左手が早かった。「グワーッ！？」「AAAAARGH……」巨人はインシネレイトを握り締め、力を込める！「グワーッ！やめ……」握り締めた指の間から火が漏れるが、弱い！「グワーッ！」　59

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ガーランドは身を沈め、走る速度を上げた。クロヤギ・ニンジャは横向きの瞳孔を輝かせた。『カトン・ジツ。ありふれたジツだが……お前のジツにはパワーがある。……良いぞ』「ワ、ワドルナッケン……ワドルナッケングラー！」全身を軋ませ、身悶えするインシネレイト！クロヤギが巨大な顎を開く！　60

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「イ…」ガーランドは全身のバネを伸縮させ、クロヤギの巨人をめがけ、跳ぼうとした。「ヤーッ…！」泥めいて鈍化したスローモーション主観時間下、彼の視界の端、歪んだタワーの鉄骨側面を駆け上がる赤黒い影が見えた。影はガーランドよりも一瞬早く、タワー頂上から身を躍らせた。「Wasshoi！」 61

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【続く】