ビースト・オブ・マッポーカリプス 後編 #3

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ！？」血飛沫！飛び出した影は地面を滑りながら、振り抜いたカタナを擦りつけ、火花と共に方向転換した。「ア、カカ、カッ……？」ディヴィナーはガクガクと膝を震わせ、首筋を押さえた。溢れる血潮を留めるすべはない。「カカッ……バカ……な……この私が……」「キリステ、ゴーメン」　18

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美少年がカタナにこびりついた血脂を美しく払うや、ディヴィナーの命の糸は切れた。「サヨナラ！」爆発四散！ナムアミダブツ！「クセモノ！」「ムーブムーブ！」エネアド兵が銃を構える！「ならぬ。重火器はわきまえよ」ティアマトが制した。「ここはさながら火薬庫じゃ。そして何より……」 19

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ティアマトは舌なめずりし、腿に携えた二本のタント・ダガーを引き抜き、逆手に構えた。「捨て置け。構わず、作業を継続するがよい。そなたらでは相手にならぬ。見事な太刀筋じゃ」「……ドーモ。ティアマト＝サン」美少年はアイサツした。「……リバティです」ティアマトの顔をメンポが覆った。　20

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「リバティ……」ティアマトの瞼がひくついた。彼女はその名を訝しみ、ソウルの形を見通そうとする。何かに阻まれる。拒絶するようにリバティのメンポが変形し、目元をも覆うフルメンポと化す。「まあよい」ティアマトは鼻を鳴らした。「ドーモ。リバティ＝サン。ティアマトです。何用じゃ」　21

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「ゆえあって参戦する」リバティは言った。「邪悪なるニンジャよ。我がカタナの錆と化すがよい」「ほほほ！言いも言うたり。ニンジャ六騎士たる我、全知全能のドラゴンに真っ向挑むとな？」「竜退治は最高の誉れ。のぞむところだ……」リバティは言い放ち、カラテを漲らせた。ティアマトは笑った。　22

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「イヤーッ！」「イヤーッ！」二者は跳んだ！エネアド兵たちは息を呑み、光と影が結び合うさまをかろうじてそのタクティカル・ゴーグルの視界に捉えた。ともに二刀流。火花と鋼鉄が闇を裂き、着地、そして叫びが重なった。「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」 23

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ギャギャギャギャ！斬撃の応酬がマイクロ竜巻じみて横に滑り、通り道となったエネアド兵が四肢断裂して吹き飛んだ。「アバババーッ！」ギャリイン！二者は互いのバックラッシュで飛び離れ、別々のサーバー上に着地した。「イヤーッ！」戯れじみて、ティアマトはクナイを投じた。リバティは跳んだ！　24

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「スウウーッ……！」空中で弧を描くリバティを見上げ、ティアマトは瞬時に周囲が真空と化す程の空気を肺に吸い込んだ。目の錯覚じみて彼女の上体が二倍に膨れ上がったのち、迎撃の呼気がリバティを捉えた。「フウッ！」ドラゴンブレス・イブキ！KA-BOOOM！炎の花が舞い上がった！　25

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ナムサン！瞬時に肺の空気全てをカラテと共に噴き、破裂させる恐るべきチャドー技！「ア、アイエエエ！」「アイエエエ！」エネアド兵達は悲鳴を上げて右往左往！しかしティアマトは爆発範囲を的確にコントロールしている。さらに！「イヤーッ！」斜め後方からリバティの反撃をも事前察知していた！　26

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「イヤーッ！」爆発を逃れて着地し、地を蹴って斜め後方からの刺突を試みたリバティの剣を、ティアマトは流麗に下から掬い上げるようなバック・キックで跳ね上げた。何たる柔軟性か！リバティのカタナの防御が外れ、胸元がさらけ出る。ティアマトは掌でダガーをクルクルと回し弄び、心臓を貫いた。 27

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「アバッ」ダガーを引き抜く。リバティの胸から青く光る血が噴出した。超自然のガソリンじみて。ティアマトは訝しみ、リバティの足元を見た。リバティの影の伸びる先には青銅のランタンが設置されている。彼女は眉根を寄せた。ランタン・オブ・ソーマト！？「イヤーッ！」彼女の背後に迫るカラテ！　28

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「イヤーッ！」ティアマトは咄嗟のブリッジで奇襲斬撃を回避！ランタンの明かりが作り出したホロ幻影が綻び消えてゆくなか、真のリバティはティアマトの回避行動に追撃を繰り出す！「イヤーッ！イヤーッ！イヤーッ！」「イヤーッ！イヤーッ！イヤーッ！」ティアマトは連続バック転！　29

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「イヤーッ！イヤーッ！イヤーッ！」絶え間ない二刀流斬撃を逃れ、ティアマトは石トリイの両柱をトライアングル・リープして上へ逃れた。「イヤーッ！」リバティは同様にトライアングル・リープで追って来た。二者はトリイ上で対峙した。「ランタン・オブ・ソーマトとは懐かしや。遺失した品じゃ」　30

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ティアマトは両手のダガーをクルクルと回転させた。「その出処、興味がそそられる。ますます面白い。そなたのメンポの下のかわいらしい顔、是非にも今一度さやかに見せてもらわねば……」「……」リバティは二刀を構えた。吹き上がる風が上衣をはためかせた。「イヤーッ！」「イヤーッ！」　31

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ティアマトは激しくダガーを振り回した。すると、ナムサン！？ダガー斬撃のなかからダガーが飛び出し、リバティに襲いかかったのだ。「イヤーッ！」リバティはダガーを切り払う。ティアマトはさらにダガーを投じる！それもまた神話の武器、タント・オブ・インフィニティ。自己増殖の刃である！　32

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「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」無数のダガーを飛翔させながら、ティアマトはトリイ上を走り、リバティのワン・インチに迫った。「他の手品は無いのかえ？」「望み通りに」リバティは眼前で刃をカタナで受け、押し込まれながら呟いた。もう一方のカタナが宙に浮いていた。33

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ティアマトの時間間隔が凝縮し、宙に浮いたカタナの表面の脂のぬめりにニンジャ洞察力が集中した。カタナの表面に塗られているのは、オーナメント・オブ・ダンシング。塗ったカタナにかりそめの命を与え、自律した暗殺者に仕立て上げる、いにしえの品だ。カタナが頭上を越え、後ろから襲う！　34

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「イヤーッ！」ティアマトは左手で背後からのカタナを防いだ。リバティはもう一方のカタナを両手で持ち、力でティアマトの右手のダガーを弾き逸らすと、鎖骨から胸にかけて力任せに斬りおろした。「イヤーッ！」「グワーッ！」「……！」リバティは微かに呻いた。然り、刃は心臓まで届いておらぬ！　35

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「ンンン……」ティアマトはメンポを開いた。艶やかな唇の端から血を垂らしながら、彼女は深く息を吸った。「スウウーッ……」「……！」リバティはカタナを動かそうとした。だがティアマトのニンジャ筋力がカタナを逆に捉え込み、制している。「ハアアーッ……」ティアマトはチャドーを深める。　36

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フルメンポの下で、リバティは驚愕した。ティアマトのチャドーを畏怖したのだ。「イヤーッ！」リバティは即座にカタナを捨て、ティアマトの胸を蹴り、バック転で飛び離れた。その判断は正解だ。ティアマトは舌なめずりした。だが、この後どうする？彼女は背後から襲う自律のカタナを容易く掴んだ。　37

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「スウーッ……ハアーッ……」ティアマトはチャドー呼吸を繰り返した。手の内の自律のカタナはティアマトの直接のカラテ支配にたちまち屈服し、力を失った。呼吸しながら、ティアマトはもう一方のカタナを胸からゆっくり引き抜いた。「スウーッ。ハアーッ」トリイの端にリバティを追い詰める。　38

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ティアマトはリバティに近づいた。チャドーの力に心地よく酔いながら。勝負あり。だが、一太刀に葬り、爆発四散させてしまえば、この者の正体は……この者の後ろで糸引く者の委細は明らかとならない。制圧し、メンポを剥がす。「終わりじゃ。飛び降りるか？よいぞ。それで逃れられると思うならば」　39

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「仕方ない」リバティは低く呟いた。そして彼は……懐から、茶器を取り出した。ヒラグモを。ティアマトは息を呑んだ。彼女は反射的に足下、オベリスク前を見やった。……無い。ヒラグモが。「然り。もっとも重要なレリックは我が手にある。返してやる！」リバティはトリイから茶器を放り捨てた！　40

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「……！」全身を駆け巡るチャドーの力に白く染まった視界で、ティアマトの主観時間が鈍化した。仰向けにトリイ端から落下するリバティ！そして別方向へ放物線を描くヒラグモ！ティアマトは当然の選択をした。せざるをえなかった。「イヤーッ！」彼女はヒラグモをめがけ跳躍！抱きかかえた！　41

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泥めいたスローモーションで落下しながら、ティアマトの心には疑念が瞬時に育ってゆく。チャドー呼吸と再生にもっていかれた判断力。妙だ。なにかが妙。リバティがオベリスク前のヒラグモに接近する猶予はなかった。そもそも今ヒラグモを動かせば、エテルの流れが断裂し、深刻な爆発が巻き起こる筈。42