エンタメ映画「RRR」に差し込まれた政治主張、そこに見える「異教徒と手をつなぎ歌による革命」の文脈

そういう見方でも楽しめるのか。
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まとめ 映画「RRR」の暴力エンタメ要素はいいぞ。景気づけに多種多様な死に様を披露するし噂のナートゥもダンスバトル 「RRR」のナートゥ推しは「ミッドサマー」のような騙し討ち文化ではなかった、よな。 20956 pv 31 2 users 21
三崎律日 @i_kaseki

Alt+F4の名前で「世界の奇書をゆっくり解説」等のゆっくり解説動画を作っています。アイコンは畠山モグ先生。書籍化した上に続編がでました→「奇書の世界史2」 amazon.co.jp/dp/404605168X

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三崎律日 @i_kaseki

RRRについて、もういい加減ネタバレアリで語るけど、あの映画、エンドロールまでエンタメ一杯と思いきや、急に差し挟まれる現実の政治的主張にギョッとする人も多かったと思います。(主役二人がそもそも実在の人物がモデルではあるんだけど。)

2023-04-18 18:57:24

主人公の2人のモデル

リンク Wikipedia アッルーリ・シータラーマ・ラージュ アッルーリ・シータラーマ・ラージュ(英語:Alluri Sitarama Raju、テルグ語:అల్లూరి సీతారామరాజు、1897年または1898年7月4日 - 1924年5月7日)は、インドの革命家。アッルーリ・シータラーム・ラージュとも表記される。 現在のアーンドラ・プラデーシュ州に生まれたラージュは、イギリスによる植民地支配に対抗して、アディヴァシ(先住民)らを率い、あるいは各地で味方につけながら、ゲリラ的な武装蜂起を展開した。イギリス側は反乱鎮圧のために多額の費用を費やし、特殊部隊を投 1 user
リンク Wikipedia コムラム・ビーム コムラム・ビーム(Komaram Bheem または Kumram Bheem、1900年または1901年 – 1940年)は、イギリス領インドのハイデラバード藩王国(ニザーム藩王国)におけるゴンド族の革命指導者。1930年代にハイデラバード藩王国東部において、他のゴンド族の指導者と協力しながら封建的な藩王国に対する断続的な小規模反乱を率いた。 彼は1940年に武装警官に殺害されたが、死後反乱の象徴として讃えられ、アディヴァシ(先住民)やテルグの伝承の中で賛美されるようになった。ビームはゴンド文化の「ペン 1 user

ガンディーやネルーは今や教科書から消えつつある

三崎律日 @i_kaseki

エンドロールで讃えられる対英闘争の偉人たちの中に、我々日本人の多くが知るガンディーやネルーといったビッグネームが居なかったことにお気づきでしょうか。実は現在のインドにおいてこの二人は一部の歴史の教科書から消されるほど追いやられています。 asahi.com/sp/articles/AS…

2023-04-18 18:57:24
リンク 朝日新聞デジタル ガンジーもタージマハルも… インドで進む歴史書き換え:朝日新聞デジタル インドのモディ首相が就任して4年。この間、自国の歴史の書き換えが進んでいる。ヒンドゥー教徒以外はインド人ではないとの考えに傾き、神話と史実を混同する。イスラム教徒など少数者に対する排外意識を強めかね… 27
三崎律日 @i_kaseki

現在のインド首相モディ氏を始めとするヒンズー教至上主義を唱える人々にとって、対英闘争において「イスラームとの融和」を唱えたガンディーやネルーはインドの誇りを傷つけた者であり、インド独立を勝ち取ったのは彼らの唱える「非暴力不服従」などという弱腰な方策ではなく、

2023-04-18 18:57:25
三崎律日 @i_kaseki

民族義勇団のような血と暴力による闘争であったというのです。(なお民族義勇団はモディ氏の支持母体の一つ) こうした歴史的経緯を踏まえると本作の結末は「現在の主流派の主張に沿った国威発揚映画」という捉え方をされるかもしれません。

2023-04-18 18:57:25
三崎律日 @i_kaseki

とびきり上質なエンタメに乗った政治的主張は、水のような日本酒のように危険な酔い方をするため、本能的に警戒する人がいるのも無理はありません。 ただ私はもう少し穿った見方で本作から監督の真意を読み取ってみたいと思います。

2023-04-18 18:57:26

監督は「手と手を取り合う映画」を目指した説

三崎律日 @i_kaseki

本作はラーマとビームという、実在の対英闘争の英雄を主役に彼らの(存在しなかった)友情と闘いをえがきますが、実は本作、ビームの出身部族から非常に強い抗議を受けています bollywoodlife.com/south-gossip/r…

2023-04-18 18:57:26
リンク Bollywood Life RRR: Controversy erupts over Jr. NTR wearing a Muslim skullcap; tribal community threatens to 'dig SS Rajamouli's grave' | Bolly Jr. NTR's character, Komaram Bheem, is regarded as a hero to the Adilabad tribals, and they believe that his depiction is an 'insult' to their hero who led an uprising against the last Nizam. Subsequently, they've threated to file a case under the SC/ST A 231
三崎律日 @i_kaseki

ビームはデリーの街に潜伏するためにイスラーム教徒の家族に匿われ、自身もイスラーム教徒の服装を身にまといますが、これがヒンズー教徒であった史実のビームへの侮辱であるというのです。 これは、単純にヒンズー教至上主義に阿った映画としては奇妙です。

2023-04-18 18:57:27
三崎律日 @i_kaseki

監督は「潜伏のために最も意外な格好をする必要があった」と答えていますが、他にも結構なご都合主義を通している本作が、ここだけ批判を承知でこの設定を取り入れているのは何故でしょうか。 ここからはあくまでも想像ですが、監督は「橋の下で手を繋ぐシーン」を意識したのではないでしょうか。

2023-04-18 18:57:28
三崎律日 @i_kaseki

監督はバーブバリ以降、いわゆる「汎インド映画」つまりインドの誰にでも届くよう5つの言語に翻訳して公開しており、また部族間の壁を跨いでエンタメを届けることに意欲を燃やしていると語ります。 banger.jp/movie/85137/

2023-04-18 18:57:28
リンク BANGER!!!(バンガー) 映画愛、爆発!!! 『RRR』ラージャマウリ監督が“現代インド映画&テルグ語映画”をガチ語り!「巧みな物語は言語の壁を超えます」【後編】 | BANGER!!!(バンガー) 映画愛、爆発!!! 『バーフバリ』シリーズ等で知られるS.S.ラージャマウリ監督が、最新作『RRR』を携えてBANGER!!!に登場。主演のNTR Jr.&ラー… 6 users 6
三崎律日 @i_kaseki

そのような視点を経て「橋のシーン」をもう一度眺めると、イスラム教徒の格好をした主人公が、インド国旗(のデザイン元の一つ)に守られて炎を凌ぎ、ヒンズー教徒と手を繋ぐという描写に、一つの意図を感じ取ってしまいます。

2023-04-18 18:57:29
三崎律日 @i_kaseki

前述の通り、現代のインド映画を取り巻く状況は政治的な文脈と不可避ですが、そんな中で「異教徒と手を繋ぎ」「歌による革命」を差し挟めたというのは、ラージャマウリ監督の一つの意地だったのではないでしょうか。

2023-04-18 18:57:30
三崎律日 @i_kaseki

これは卑怯な見解で、「面白かったものを気持ちよく楽しんでいたい」という偏見の結果かもしれません。ただ、強いエンタメの力に二の足を踏みそうな方に、一つの視点をご提供できれば幸いです。

2023-04-18 18:57:30