短文 4月分まとめ
- saipoko2021
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昔、怖い夢を見る度にじろにいの布団に潜り込んだ。大きい(と思っていた)手にとんとんとあやされるのが気持ちよくて嬉しかった。 怖いものが一つ一つなくなって、もっと怖いものが見えてきて。 背中を見るのではなく並び立つことを望んだ頃、抱き締める心地よさを知った。今度は僕が、守る番だ。
2023-04-11 06:36:54嘘ばかりつく大人達の中で、子供扱いしないでくれるあんたはやけに目について。『対等』に見てくれているのだと、なんだか無性にうれしくて。 『それ』があんたの策なのだと、気づかなかった自分はやはり子供だったのだろう。 今更、遅いけど。 この腕の中、囚われることを選んでしまった自分には。
2023-04-11 06:21:23真っ直ぐに見上げてくる瞳に、気付いたのはいつだったのか。その眼差しの奥に見え隠れする感情に気付いてしまったのはいつだったのか。 分かっている、それが間違えていることなど。物わかり良く諭して、そんな気などないと突っぱねてしまえばいいのに、俺は。 嘘をつくなど朝飯前だった筈なのにな。
2023-04-11 05:56:34力を失った手がぱたりと肩から落ちた。泣きはらした目元にまだ残る隈をそっと指でなぞってみても、お前はぴくりともしない。もう無理だとすがりつくお前を気絶するまで抱きつぶして。ようやく眠りについたお前を抱き枕に、俺もまた瞼を閉じる。 こんなものでいいのなら、いくらでもくれてやるよ。
2023-04-11 01:37:43するりと顎を撫でる貴方の指が心地良くて、ついそのまま手の平にすり寄ってしまう。まるで子供みたいだと自分で自分にあきれながら、その体温に抗えない。貴方のすべてを受け入れるこの至福を、俺は知ってしまった。 貴方は俺を拒まない。この手は、安心できると俺はもう知ってしまったから。
2023-04-11 01:22:59何故かな?この季節になると、不意に君を思い出す。花見をしたことなどなないと言う君に。葉桜の下を歩きながら、来年の春は皆で花見をしようと。弟達も連れておいでと、交わしたたわいもない約束。 私もまた、君と果たせぬ約束を抱えたオトナの一人だと、やるせない想いを抱えて君をただ見送った。
2023-04-11 01:11:37それは一瞬の出来事。庇う様に腕の中抱き込まれて、気付いたときには目の前にヒトだったものが転がっていた。 いや、まだ生きてやがるか。動きかけた手の甲を踏みつけてあんたは俺に笑いかける。『ケガはないかい?』常と変わらぬその声に俺は言いかけた文句を飲み込んだ。あんただから許してやんよ。
2023-04-11 01:04:41その日、君は珍しくしたたかに酔っていたね。医者の性でつい診察しようと伸ばした手を払われて。そんなものは要らないと押し倒された。 焦るように熱を求める君の、見上げた眼鏡の奥で潤んだ瞳を。耳元に囁かれたその一言を。酔っぱらいの戯れ言と忘れてなどあげないよ? それはたった五文字の恋文。
2023-04-11 00:55:37