白桃白

私に出来ることはこれだけだった いやもうほんと白桃白広まれよ 黒姫さんありがとうございました!!!
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黒姫かぼちゃ @aikawaryo

扉の前で不意に桃太郎にぶつかった天女。たおやかな肢体を綺麗に着飾った天女は、桃太郎にちらりを視線をやり美しい唇に嘲笑を浮かべた。「あらやだ。なんでここに人間の…しかもこんな貧相なコがいるの?」

2011-11-15 21:40:50
黒姫かぼちゃ @aikawaryo

一瞬何を言われたか解らずに固まる桃太郎に向かい天女は言葉を続ける。「いくら仕事の部下だからって、もう少し見目の良いの部下を選べばよろしいのに……白澤様には不釣り合いだわ。貴方」反駁しようとするも言葉は見つからず、桃太郎は俯いてただ唇を噛み締めた。

2011-11-15 21:46:14
黒姫かぼちゃ @aikawaryo

天女が去った後も金縛りにあったように動けずに扉の前に立ち尽くす桃太郎。「あれ?そんなとこで何してるの?桃タロー君」先刻まで天女と寝台で戯れていたらしく、白澤は肩に白衣を羽織っただけの格好で桃太郎を見やり首を傾げた。

2011-11-15 21:52:14
黒姫かぼちゃ @aikawaryo

桃太郎からの返事は無い。「どうしたの?」沈黙を訝しんだ白澤が桃太郎に歩み寄った。桃太郎の脳裏に天女の言葉と煌びやかな姿がよぎり無意識に白澤から一歩後退る。「…なんでもないです」ともすれば消えてしまいそうな声音が大丈夫ではないことを物語っていた。

2011-11-15 22:09:13
黒姫かぼちゃ @aikawaryo

白澤は先程情を交わした相手を思い浮かべて口元に苦笑を浮かべた。見目は極上だが変に矜持が高過いあの天女が言いそうなことは予想がつく。「何か言われた?」途端に桃太郎の肩がビクリと跳ねる。しかし、告げ口をするような気がして桃太郎は無言で首を左右に振った。

2011-11-15 22:18:23
黒姫かぼちゃ @aikawaryo

「そう?ならいいんだけど」白澤は桃太郎の頭にポンと手を置くとそれ以上の追求を止めた。それだけで真っ赤になった桃太郎がパタパタを走り去るのを見送る瞳の奥には不愉快そうな色がチラチラと揺れる。――そして事件は数日後に起こった。

2011-11-15 22:27:44
黒姫かぼちゃ @aikawaryo

突然押し掛けてきた天女にパシリと頬を張られて、桃太郎は痛みよりも驚きに目を丸くした。「貴方が告げ口したのね!」美しい顔に般若のような表情を浮かべて天女が怒鳴る。「…え、俺は何も…「嘘よ!」桃太郎の言葉を遮って天女は半狂乱で叫び続けた。

2011-11-15 22:38:37
黒姫かぼちゃ @aikawaryo

「そうじゃなきゃ私が白澤に振られる理由が無いじゃない!」絶叫と共に袂から短刀が現れる。しかしギラリと鈍く光る刃は桃太郎の体に到達する前に止められてしまった。「…えと…あの、剣術の心得の無いひとが刃物振り回すのは危ないッスよ」困った顔で手首を抑える桃太郎を天女が睨みつける

2011-11-15 22:46:44
黒姫かぼちゃ @aikawaryo

「離して!」ヤケになって暴れる天女から刃物をどうにか奪い取るとそのまま天女は泣き崩れてしまった。「あーあ、これじゃ僕の出番無いじゃない」振り返れば、そこには白澤が苦笑しながら立っている。「白澤様、見てたんスか」そう言った桃太郎の声は固い。

2011-11-15 22:56:08
黒姫かぼちゃ @aikawaryo

「止めに入ろうと思ったんだけどいらなかったみたいだね。桃タロー君やるじゃない」頭を撫でようとした手がパシリと払われて白澤は目を丸くした。「桃タロー君?」「…泣いてます」疑問符を浮かべる白澤を桃太郎が見上げる。「あのひと泣いてます。こうなるのわかってたんじゃないですか?白澤様?」

2011-11-15 23:02:38
黒姫かぼちゃ @aikawaryo

予想外の言葉に白澤の目が見開かる。「貴方の同情なんかいらないわよ!」涙に濡れた目で天女は桃太郎をひと睨みすると、そのまま立ち上がり走り去ってしまった。その光景に白澤は肩を竦める。「ほら、あんなこと言うやつに桃タロー君が同情する必要無いよ?」

2011-11-15 23:16:39
黒姫かぼちゃ @aikawaryo

「…白澤様なら泣かせないように離れることだって出来たんじゃないッスか?」尚も責める言葉に白澤は鼻白んだように溜め息をつく。「この前思い切り傷付いてたくせに」瞬間、桃太郎の表情が曇った。「…あれは、…俺が白澤様に相応しく無いのは事実ですから」

2011-11-15 23:23:40
黒姫かぼちゃ @aikawaryo

白澤の眉が不愉快そうにしかめられた。「それは僕があの天女の方を選んでも構わないってこと?それとも桃タロー君が僕から離れたいってこと?」「俺は……そんなつもりで言ったんじゃ…ただ泣かせるのは良くないと…」口ごもる桃太郎に白澤の中で不機嫌が募る。

2011-11-15 23:34:34
黒姫かぼちゃ @aikawaryo

ふいに白澤が皮肉を含んだ笑みをうかべる。「ああ、もしかして好みのタイプだった?まぁ、見た目は悪くないしね彼女」「ち、違います!俺はっ」そこで桃太郎は言葉を途切れさせ俯いた。「俺は……ただ…いつかは自分も白澤様の側に居られなくなるのかと思うと…あのひとを無碍にする気になれなくて」

2011-11-15 23:49:10
黒姫かぼちゃ @aikawaryo

ポロリと零してしまった本音に桃太郎は自分の唇を噛み締めた。「どういうこと?」凍えそうに冷えた声音に顔を上げようとした瞬間、些か乱暴に襟首を掴まれる。見上げた瞳は夜の沼のようで桃太郎の背筋に寒気が走った。

2011-11-15 23:57:03
黒姫かぼちゃ @aikawaryo

「君も僕から離れていくつもり?……」平坦な口調なのにひどく冷たい。桃太郎は掴まれた襟首に息苦しさを感じつつ口を開いた。「……俺は離れません。でも白澤様はいつか飽きて手放すでしょう?」

2011-11-16 00:07:04
黒姫かぼちゃ @aikawaryo

白澤が口を噤む。自分の性格をよく理解している白澤にはこの先絶対に飽きないなんて保証は出来なかった。よくわかっているはずなのに何故か酷く虚しくなり、白澤は眉尻を下げて言葉を探す。その様子に桃太郎が小さく笑った。「白澤様がろくでなしなのはわかってますからそんな顔しないで下さい」

2011-11-16 00:24:26
黒姫かぼちゃ @aikawaryo

「どうせ僕はまともな恋愛なんか出来ないよ」桃太郎の襟首を掴んでいた手をはなして拗ねたように横を向いた白澤は、ふと思い付いたように言葉を続けた。「僕が君に飽きたら殺してみる?……鬼が殺せたなら神獣(ぼく)だって殺せるよね?」

2011-11-16 00:33:19
黒姫かぼちゃ @aikawaryo

「そしたらある意味僕を独占でき…「嫌ですよ」即答されて白澤が半眼になる。「……そこは頷く流れじゃない?桃タロー君?」頬をつままれた桃太郎は眉をしかめると、仕返しのように白澤の頬を引っ張った。

2011-11-16 00:43:58
黒姫かぼちゃ @aikawaryo

「死に際まで俺に甘えないで下さい」頬を引っ張られた白澤が困惑したように呟く。「いひゃいよ、桃タロー君…大体それじゃいつも僕が甘えてるみたいな言い草じゃない」「いつも俺の目の前でも構わず女の子口説いておいて俺が離れていかないって思ってるのが甘えじゃなくなんなんッスか?」

2011-11-16 00:52:37
黒姫かぼちゃ @aikawaryo

言われた白澤の目が泳ぐ。無意識の甘えを指摘されて動揺する白澤を尻目に桃太郎が言う。「俺じゃ釣り合わないのも、白澤様がろくでなしなのもわかってますけど、好きなんだからしょうがないじゃないッスか!」言った後で桃太郎は自分の言葉に赤面しつつもごもごと続けた。

2011-11-16 01:09:31
黒姫かぼちゃ @aikawaryo

「……っ///だからその…殺すのは無理ッスけどっ…白澤様が飽きるまではここに居たいな……なんて」先刻の勢いはどこへやら、桃太郎の次第に声が小さくなる。「僕が飽きるより先に君が僕に耐えられなくなるかもよ?」

2011-11-16 01:23:30
黒姫かぼちゃ @aikawaryo

「そしたら俺を殺せばいいんじゃないッスか?」先程の言葉を返された白澤が唇の端で笑う。「嫌だよ」「そこは頷く流れなんじゃなかったでしたっけ?」揚げ足を取られた白澤が「可愛くない」と桃太郎の額を指で弾いた。

2011-11-16 01:28:58
黒姫かぼちゃ @aikawaryo

白澤が悪戯っぽく笑って桃太郎の顔を覗き込んだ。「この後何か用事は?ちなみに僕は今晩暇です」桃太郎は頬を紅潮させるも、白澤に指をつきつける。「白澤様には先にあのひとに謝りに行く用事がありますよ」

2011-11-16 01:37:57
黒姫かぼちゃ @aikawaryo

白澤は「えーそれまだ引っ張るの?」と不満げな顔をしつつも声音に不機嫌さは無い。「じゃあその用事片付けた後は?」白澤の問いに桃太郎は耳まで赤くして答えた。「……暇ッスけど」にんまりと笑った白澤がくるると戸口へ向かう。

2011-11-16 01:41:36