- mocharn3rd
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目覚めた人「ブッダ」 神の子「イエス」 ふたりは世紀末を超えて、立川に、バカンスに来ていた。 そして、なんの縁か「悪魔の子」長岡龍星と出会った。
2023-05-25 18:55:45俺、長岡龍星が、彼ら聖人に気づいたのは、たまたまだった。 サイクリングをしている最中に「ガルシアの眼」が発動して、不意に「わかった」のだ。 けして、公園の木の下で、ブッダさんがすわろうとしたら、いろんな動物が集まって来たのを見たわけじゃない、ないと思う。
2023-05-25 18:55:56ビビった。そして聖人として扱わないといけない、と思ったのだ。 そんなことを、灘一族(なだいちぞく)に話をしたら、どれだけの人が信じてくれるだろう。
2023-05-25 18:56:26俺はひょんなことから灘神影流の後継者となり、武術家の道を歩み始めたのだが、義兄の心臓移植をされてからは、心臓を狙うゴロツキたちに狙われるのであった。
2023-05-25 18:56:33「龍星君」 「は、はい……」 「私がここに来たのは、もしかすると、君を助けるために来たのかもしれません」 「や、やめてください! それはスーパーの特売の協力の話じゃないと思いますよ!」 俺とブッダさんは「1人2本まで」の牛乳パックを抱えていた。
2023-05-25 18:56:41「牛乳の特売で、何か功徳がつめたりするんですか? あの、乳粥とか関係あったり……」 ブッダといえば、悟りを得る頃に、乳粥を食べたとかなんとかを聞いた気がする。 きっ、っとブッダさんがこちらを見る。
2023-05-25 18:56:57「あの時はすごくおいしかったけど、ずっと乳粥ばかり食べると舌が慣れるよ」と、真顔になる。 「えぇ……、いや、ブッダさん、元気出してください」 俺は、ブッダさんのやや後ろを歩く。
2023-05-25 18:57:04「でも、本当に助かったよ、龍星君」 ブッダさんが、言った。 「本当に、とは?」 「それはそのままの意味だよ。君のおかげで、私達が助かった」 「それなら、光栄なんですけど」 俺は頭にハテナマークを浮かべずにおれなかった。
2023-05-25 18:57:14「私達は休暇として下界にやってきたけど、それでも、一生懸命になってる人たちを見ると、こちらも頑張らないとって思うんだ」 「そんなっ」 俺は自分の顔が赤くなるのを感じた。 「俺みたいな奴にそんなことを言わないでください……!!」
2023-05-25 18:57:22俺はかつて、自分の力の未熟さを恥じて、力なしに何を語るのも無意味、力なき自分を嫌い、どんな手段を用いても強くなろうと、悪魔に心を売った。その先にあったのは、かつて師と仰いだ者を文字通り闇の中で討つことだった。
2023-05-25 18:57:31もう成人に近いというのに厨二病みたいな感覚になって、恩人を倒すだなんて……。 「しかし、あなたの師はあなたを許したのでしょう」 この世の誰からも聞いたようなことのない声だった。すぐ近くにいるのに、遠くから響いてくるような、俺を貫通してどこまでも通っていくような。
2023-05-25 18:57:40まるで、俺がこの数秒で思った、走馬灯のような速さの感情と思考を読み取ったような。 「は……はい」 気が付くと、俺は固まっていた。いや違う。俺はずっと固まっていたのを、ブッダさんの声によってほどかれたのだ。
2023-05-25 18:57:49「……わかりましたよ。なら、せめて、あなたたちにいい思いをさせてださい」 「……君はすごく真面目だね。私の弟子を思い出しますよ」 「えっ ブッダさんが想われる弟子ってすごくたくさん」 「わああそういうところが!」
2023-05-25 18:58:09(タンパク質のこととかビタミンを考えるなら、卵を買う必要があったけど、ブッダさんの前でそれはなあ) 俺はテクテクと歩く。
2023-05-25 18:58:19ブッダさんとイエスさんが住んでいるアパートに着いた。 「おかえり、ブッダ、龍星君」 ロンゲの聖人、イエスさんが、声をかけてくる。 「イエスさん」
2023-05-25 18:58:31いつも思うのだが、その茨の冠は痛くないんだろうか? 聖人ともなると、そのあたりは気にならないのだろうか。それとも苦行なのか。 「? どうしたんだい龍星君?」 「あの、イエスさんの頭につけてるやつって」
2023-05-25 18:58:44この人達に隠し事をしていても意味がない。正直に言った。 「ああ。これはマジックテープで固定してあるだけだから」 イエスさんは茨をつけ外しした。 「!?!?」 それでいいんですかと言いそうになるのをこらえる。
2023-05-25 18:58:55「天界からのGPS機能もあるんだよね」 「あ、そっちは納得です」 VIPを超えたVIP、どころじゃない方には当然の仕様だろう。 「マジックテープには驚いてGPSに驚かない龍星君に、逆に驚きそうだよ私」 あわわ、といった感じでイエスさんが俺を見てきた。
2023-05-25 18:59:04俺は、スーパーで買った野菜を切り刻んでいく。ブッダさんが極力、肉などを食べない主義というのは知っていた。一部例外はあるというのも知っているが、使わない方が無難だろう。 イエスさんはそれで肉とか魚は足りるのだろうか? と思うことはあるが、彼らなりのルールがあるのだろう。
2023-05-25 19:00:09豆腐を切り、味噌汁に入れる。 「次はどれ作ろうかな……」 冷蔵庫を見る。豆腐や納豆が多かった。 「ナルホドね……」 タンパク質は、豆からとっているようだった。
2023-05-25 19:00:28豆腐を切ったそばに、ネギを切ったものと、梅干しを種を抜きながら切ったものを置く。ナッツがあったので細かく切り刻んで、味噌とあえる。冷ややっこの合いの手だ。 それから、玉ねぎやジャガイモを一口大よりも小さめに切り、味噌汁に投入する。
2023-05-25 19:00:38食事になった。 ぱああ、とイエスさんは笑顔を表した。 「冷ややっこって、こんなにいろんな味が出るんだね!」 「その、たんぱく質寄りの食事は、僕も研究してたので……」 頭をかいてしまう。
2023-05-25 19:00:49「自分は精進料理のさきがけのようにいながら、おいしさをおざなりにしたのは、手抜かりとしか言えません……」 「きみはそこまで責任を持たなくていいよ!」 イエスさんがつっこんだ。 聖人の話には「ガルシアの眼」でもついていけない!
2023-05-25 19:01:12俺は言った。 「おいしさを求めるのとかは、むしろあなたがたのNGじゃないんですか?」 ブッダさんはいった。 「龍星君。君が仏教徒ならばそれでいいでしょう。しかし」
2023-05-25 19:01:31